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プロローグ

研究とか言ってますが、ぶっちゃけ研究しません。ギャグあり、シリアスありです。


魔法を使い、戦っていくのが本筋ではありますが、遅々として進まないかもしれません。設定とシナリオは色々考えていますが、どこまで書こうかは検討中……。


※後々のエピソードでは、人が死んだりします。ご了承ください。

「ねぇねぇ。もしかしてお姉ちゃんって有名な人?」


 ここは私たちが知っている地球とは少し異なった世界、パラレルワールド――のとある国、とある町。高度に発達した文化を象徴するように、高層建築物が次々とそびえ立ち、ひしめき合い、乱立している。

 その連なった魔天楼の間は隙間風が通ることも出来ず、余程の強風でも吹かない限り、この町で風を感じることは無いだろう。

 その町の名は<カームシティ>と言う。そう、誰が付けたのか、凪のように穏やかな町だ。まるで一つの国のような、大きな町。そこに混在する飲食店や宿泊施設、娯楽施設、企業のビルや警察署……それこそ筆舌に尽くし難い、ありとあらゆるもののレベルは西暦二千年以降の現代情勢と比較しても何ら遜色ない、いや、それ以上であると思われた。

 人の作り出す音しか聞こえない、木々の一本ですらも植栽されていないこの町は、科学の発展に伴いハイテク化していった、云わば世界の小さな縮図とも言える。その一方で、町に舞い降りる鳥やひっそりと暮らす虫達の鳴き声、そういったものは徐々に淘汰され、この町では聞けなくなった。ただし、この世界に動物や植物と言った生物群が一切存在しないのではない。この町から離れればそれらは見かける事が出来た。それだけ、人類の生活圏内での発展が異様なものであったのだ。


「ねぇ。もしかしてお姉ちゃんって有名な人?」


 その眼下に広がる一角、商店街では様々な人達が往来し、一日中賑わいを見せていた。夕暮れ時の今も、主婦や会社員、学生など様々な人々で充溢している。町に一つだけある学校からは授業を終えた学生たちが下校し始めており、その中の帰宅する学生に混じって生意気そうな男の子が、二十代ぐらいの青髪の女に向かって尋ねた。その女は研究職なのか、白衣を着た物静かな印象の女性で、整った顔立ちをしている。――成人しているが、どこか垢抜けない感じと眠そうな目つきが、見る者に実年齢よりも幼い印象を与えた。どうやら少年は青髪の女が背負っているギターケースのことが気になったらしい。もしかしたら有名なミュージシャンかもしれない、であれば友達に自慢しようと、そういう事なのだろう。無邪気そうな少年がニコっと笑ってみせると、歯並びの悪い歯列が露わになった。ちなみに言うと「八重歯が可愛いよね」なんてレベルではない。ファラオだ。まるでピンポイントで口を銃撃されたかのごとく、炸裂している。

 その精錬されたフォルム(歯並び)に青髪の女は思考を一瞬持って行かれた。が、すぐに合わせかけた視線をそむけ、少年自体を見なかったことにした。無視したのはただ単に対応が面倒だったからだ。


「ねえってば。バンドマン?」


「え、あ……いや、私?」


 ギターケースを背負っている女の名前は音無オトナシ。青い髪と、おっとりとした柔和な目が(自称)特徴的だ。話しかけてきたこの男の子はきっと、どこぞのバンドのメンバーだと思って軽い気持ちで尋ねてきたのだろう。その目は爛々と輝いていた。音無の進行方向にすいっと回り込まれてしまい、無視できなくなった。


「ああ、コレ。ギターは弾かないし、第一にギターなんか入ってないよ? 友達に自慢できなくて残念だったね。ごめんね」


 音無というその女はあたかも毎回そう尋ねられるかのように慣れた口調で、そして少年の魂胆を見透かしたように、しれっと言い放った。すると回答が気に入らなかったのか少年がムッと膨れる。表情に影が差したかと思うと、目を見開いて声を荒げる。


「なにこのババァ~!! 話し方テラむかつくんですけどォ!? 別に聞いただけだしッ! サインとか自慢しねえしッ! なんだし意味分かんねえし!」


「!?」


 年はまだ中学生くらいなのに言動が腐っている。まったく可哀想な子だ……。これも科学の発展によって生み出された副産物なのだろうか?


「子供は国の宝って言うじゃん? 国宝に向かって失礼じゃね? アンタ」


 国の宝? 百歩譲ってもこいつは粗品が限界だろう。最近のガキんちょは口が悪いな、と嘆息しながら、音無は無視してその場を立ち去ろうとする。しかしこの生意気な少年に呼び止められてしまう。


「つーか」


「?」


 少年は暫し間を置いたあと、下顎を指でさすりながら、訝しげに音無へと尋ねる。


「じゃあその中身、何入ってんの?」


「えっ……」


 音無は、困ったような顔をして黙り込んでしまった。その様子を見るや否や、少年が「なんだ? エッチなもんでも入ってんのかぁ? その大きさからして……拘束具だな? ババァ」とでも言うかのように邪悪な笑みを浮かべていた。確かにギターケースを背負っているのにギターを入れていないとなると、ヘンな話ではある。


「何でも無いから……」


 もはや相手をする必要も無いと感じたのか、何か焦慮に駆られたのか、音無は横に半歩ずれると、早足で歩き始めるのだった。


「あ! ちょ、待てよ! 拘束具が入ってんだろ? 三角の木の奴か? 三角の木の奴なのかって聞いてんだろ!?」


 構わず歩みを進めていく。―――そもそも三角の木の奴ってなんだ。


「……刀だよ」


 去り際、音無は小さな声でそう呟いたのだった。

よろしくお願いします。

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