【最終話】
最終話です。
名残惜しいですが・・・はりきってどうぞ♪
何だこの部屋は?
壁一面真っ白じゃん?
汚れ一つないし…
気付くと白色に囲まれてるな~俺は…
真ん中にあるのはベッドか?
ベッドまで白いじゃないか?
あっそうか?シーツが白いのは当然か…
ん?で…ベッドを挟んで座ってる人が二人…
いったいここは・・・
「アスリートとしては優秀なんだけど、経営者としては…な?」
あれ?
誰かと思ったら風間じゃないか…
「そうですよね?今の形態のまま営業し続けたら…きっと近い将来、ジムは畳むことになりますよね?」
お~っ広瀬もいる?
何してるんだ?
あいつらこんな所で、神妙な顔して…
「第一人者のプライドは分かるんだけどさ…四足走行なんて流行らないよな?進んでやる人間なんて、誰もいないっての!?」
「そうですよね?そもそも少しでもシェイプアップして『綺麗に…格好良く…見られたい。モテたい』って思って、みんなジムに来るわけですから…。四足走行してるところを、好きな人に見られてしまったら?って考えただけでゾッとしちゃう!? 私マジ無理」
「まぁ相手がどんなに容姿端麗でも、100年の恋も冷めるわな」
あいつら~
そんなこと思ってたのかよ?
やっぱ流石っすねチャンプなんて言ってたのに…
「なんか警察の話じゃ、普通に歩いてて起きた事故じゃないみたいですよ?ダンプカーの運転手が、人影なんて見えなかったって供述してるらしいですから…」
「確か事故現場は居酒屋出てすぐの幹線道路だよな?ひょっとしたらチャンプ、四足走行してたんじゃないか?酔っ払うと四足で走り出す癖あるからさ~。もしもそうなら、ダンプカーの高い運転席からは見えづらいだろうしな?夜中だし。そもそもどんな酒癖だよ?って話だけどさ」
どういうことだよ?
風間と広瀬
ベッド挟んで会話してるけど…
そもそもどこだよここは?
ベッドサイドにゴツい機器…身体に管を沢山通され…包帯でぐるぐる巻きの顔面を晒し…ベッドに横たわる人
病室だな・・・
「で、主治医の先生は何て仰ってるんですか?」
「う~~ん…脳の損傷が酷くて…『おそらく意識が戻る可能性は低いでしょう!? 残念ですが…』だってさ」
えっ?
まさか、ベッドで寝てるあいつは俺?
あいつが俺で俺があいつ?
マジか!?
……ってことはダンプカーにはねられたのか?
俺は…
覚えてない
事故った記憶が一切ない…
「でも広瀬……お前、チャンプがこうなること予期してただろ?ある程度。飲みに行く度に、へべれけになるまでチャンプに酒飲ませて…」
「風間さんだって…。毎回、居酒屋にべろべろのチャンプ残して、とっとと先に帰っちゃうじゃないですか?あれわざとでしょ?『先に帰りますよ?』とは言ってましたけど、あれチャンプの耳に全然届いてないですからね?風間さんも同罪ですよ同罪」
どういうことだ?
仮にベッドで寝ている、顔面包帯ぐるぐる人間が俺なら、それを見ている俺は誰なんだ?
そうか俺自身か…
トップアスリートとしての自覚はあったけど、どれだけ客観視出来ているんだか?この状況で俺は…
しかしショックだな・・・
仕向けられたに過ぎないけれど、死んでほしいと思われていたなんて…慕われていると思っていた人間二人に…
これは立派な不作為殺人だよな?
あ、ここは病院か?
なら俺はまだ生きているから…
不作為殺人未遂ってことになるのか?
いずれにせよ風間と広瀬、お前ら二人は逮捕だ
逮捕だ~~
そもそも風間と広瀬には自覚が足りない
二人が力を合わせれば、意図せずとも、知らず知らずに物凄い力を発揮してしまうことを…一人の人間を死に至らしめるなんて朝飯前だってことを…肝に命じてもらいたい
あぁ~~そうか!? 俺は意図的に誘導されたんだよな…こうなるように…あの二人によって…
いずれにせよ猛省させねば
「でも、これからのジムの運営はどうなるんですか?このまま寝たきりの可能性高いんですよね?チャンプ」
「銀行が融資してくれればという条件付きだけど…実は新たにホットヨガとボルダリング施設の建設を考えてて。まだ何とも言えないけどな!?」
「へぇ~良いじゃないですか~?ホットヨガ?私もやりた~い!? あと2020年には東京オリンピックも開催されますし、ボルダリングの競技人口はきっと増えますよ!?」
のんきかよ?広瀬~
何だよ?風間~
言えよ~~?いいアイデアがあるなら…言え言え
進言 提言
水くせえな風間
頭ごなしに反対されると思ったか?
しないよ?しねえ?
あ~~なんか有り得ない
とりあえず逮捕
もう無理、絶対許さない
もう逮捕
「あれ?今、こっちの手…左手動いた気がしたんですけど?」
うるさい広瀬
女だからって容赦しねぇぞ~
お前も同罪 逮捕
「あっ…ほらっまた動いた」
「ていうか広瀬?こっちの手さ…右手の中指だけ立ってるんだけど?さっきまでは普通にグーだったのに…」
「えっ?ホントだ!? これって海外では絶対にやっちゃいけない、例のジェスチャーじゃないですか?」
「だ・・だよな?」
「えっ?ひょっとして意識あるんじゃないですか?チャンプ。で…怒ってるんじゃないですか?」
怒ってるよ
当たり前だろ
プンプンだよ
「私、ちょっと先生呼んできます」
「チャンプ?チャンプ?分かりますか?風間です。チャンプ~?」
チャンプチャンプうるせえな~
何が『チャンプ~?』だよ?今更・・・
風間、お前達二人は悪役に徹しきれないね~?
中途半端で、詰めが甘いんだよ!?
俺は世界チャンピオンだぞ~
おじさんさ…
風間と広瀬…どうしてくれようか?
逮捕されたら、直接罰を与えられないし…
罰として、一週間四足生活させようって思い付いたんだけど…
…これなかなかの妙案だと思わない?
あとおじさん…
紙幣の肖像画の話はさて置きさ、より一層競技に精進しなくちゃいけないのは当然なんだけど…間接的とはいえ、信頼していたスタッフに殺されかけるっていうエピソード
なかなかパンチ効いてる逸話だと思わない?
野口英世もビックリだよ
ギャップ萌え萌えだよ
萌え萌えキュンだわ
「チャンプ~? チャンプ~?」
うるせえな~
風間がうるさいから、静かなところで、あの居酒屋で、また酒でも酌み交わそうよ?
あ~そういえば禁酒中だったね?
そもそもおじさん飲んでないし?
じゃあ改めてビールで乾杯しよう!?
あとベッドサイドに置いてある、こげ茶色の花瓶ありがとう
おじさんの仕業でしょ?
空だったからすぐ分かったよ
でも大は小を兼ねるって言ってもデカ過ぎ…
あれならヒマワリだって生けれちゃうよ
もしも、風間達二人が菊でも生けようものなら逮捕の前に…マジ解雇だけどね!?
でもさ…改めて…心遣い本当にありがとう
前回は俺が話をしたから、次はおじさんの番ね?
身の上話でも聞かせてよ?
聞きたいこと山ほどあるんだわ・・・
ただ…
おじさんがこちら側に来てくれると助かるよ
少し足を踏み入れちゃったみたいだけど、まだ俺は…おじさんがいる白い世界に行くわけにはいかないからさ…おじさんのお陰でこっちに戻って来れたしね!?
じゃあそろそろこの辺で…野口さんによろしく
また会おうぜ福沢さん
「チャンプ~~? チャンプ~~?」
「うるせえぇ~~風間あ~~ぁ!? お前マジうるさい!? ドタマかち割って脳みそチャプルーにしたろか?」
おしまい
買い物などの会計時。。
財布の中から、彼らがひょっこり顔を覗かせ、視線が合うことがあるかも知れません。
もしもその時、彼らが発する何らかの訴えをキャッチしてしまったら、次はあなたが彼らのアナザーストーリーを考えてみるのも面白いでしょう。
では・・・Ciao♪