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【第7話】


第7話です。ラッキー7です。

クレイジー・キャンディデイトですよ♪


 再度、従業員である彼女に謝り、俺はテーブル席に戻る。しかし男の姿は消えていた。

 テーブルには野口英世が印刷された数枚の千円札と空のビールジョッキが置かれている。

「も~う待っててって言ったのに!? おねえさん?ここに座ってた和服のおじさん、どこに行っちゃったかな?知らない?」

 本来の仕事に戻り、隣のテーブルを片付けている女性従業員に俺は訊ねる。

「えっ?和服のお客さんですか?いえ今日は和服を着た方はご来店されてないですね?」

「ここに……」座席を指差して俺は話す。「ここに座ってたじゃん?」

「お客さんのお連れの方々は、先にお帰りになられました。二時間くらい前ですかね!? 男性と女性のお二方(ふたかた)ですよね?確か…」

「そう、たぶんあいつらが帰った(あと)!? 俺の真向かいの席に和服を着たおじさんが座ってたはずなんだよね?『相席よろしいか?』とかなんとか言いながら、このテーブルに来たんだけどさ…知らない?」

「見覚えないですね!? お仲間が帰られた後、(しばら)くの間、お客さんはテーブルに顔をつけて熟睡されてました」

「ごめんね~!? 最近癖になっててさ…営業妨害だよね?本当ごめん」何度目だろう?俺は彼女に謝り続けている。

「いえいえ。常連さんですから…。水曜日ということもあって、私達とても忙しくて。で…店内が落ち着いた時に、このテーブルに誰も座っていないことに気が付いて、それで確認のためにトイレに行ったんです!?」

「えっ?本当?」

 酔っ払っているのか?それとも寝ぼけているのか?従業員の彼女と話している今現在が夢じゃないのか?と思えるくらい、俺は何が現実の出来事か分からなくなっていた。

 

 従業員の彼女と話をしている最中(さなか)、店内ではテーブルの上に次々と椅子が乗せられ、他のスタッフが床に掃除機をかけ始めた。

 閉店時間はとうに過ぎているようで、俺はテーブルの上にある、野口が写る数枚の千円札を右手で掴み、女性従業員と共に会計のためにレジへ向かう。

「今日は迷惑かけたね?」そう会計中に話す俺に、従業員の彼女は二度三度首を横に振り「またお待ちしております」と言い、つり銭を手渡した。

「じゃあね八木ちゃん…また来週の水曜日に…」

 彼女の左胸にはネームプレートが付けられている。

「あ・・はい・・」突然名前を呼ばれて少し驚きながらも「水曜日は混雑してるので、水曜日以外もお待ちしております」と彼女は話し、ネームプレートに手を当て微笑んだ。


「さようか?」


「……さよう?」


 彼女は、ポカンとした顔で俺を見ている。

 どうやら、会話中に話し相手をフリーズさせる才能が俺にはあるようだ。

「まぁ気にしないで?耳にタコ。言われ過ぎたんで…逆にちょっと言ってみたくなってね!?」

 はぁぁ?と腑に落ちない顔を覗かせつつも、飲み過ぎの俺を気遣い「気を付けてお帰り下さい!?」と発し、彼女は接客業の従業員らしく頭を下げた。

 彼女の配慮に応えて、ごちそうさまの言葉を残し、俺は居酒屋を後にした。



「何だったんだろうな~?」



 家に帰る道すがら、こげ茶色の和服男と共にした居酒屋での一時(ひととき)を思い出していた。

 単に酔っ払っていただけに過ぎないかも知れない?しかし現実の出来事ではなかったとしても、男と共有した時間は心地良いものとして俺の中に残っている。

 夢心地とはまさに、このことかも知れない。


 おじさんは面白かったし……

 八木ちゃんはいい()だし……


 誰もいない歩道を歩きながら「おじさんも人なり、八木ちゃんも人なりか~!?」と俺は声に出す。

 気分の良さも手伝って「じゃあ…ひとっ走りして帰るか~?」そう自分自身に呼びかけ、俺は家に向かって走り出す。


 俺も人なり……


 そう自分に語りかける。


 次回、最終話予定ですわーー

 お誘い合わせの上~♪

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