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第4話 アスラの力


感想、評価、ブクマ感謝!!

第4話 アスラの力




「……戻ってきた」


 RDWからログアウトした俺は、VRゲーム機の端末のスイッチを切って頭から外してベッドから起き上がる。


「問題はなさそう」


 立ち上がって身体を少し動かしてみるが、特に身体が固くなってたり疲労感があったりはしない。

 流石は高いVR用のベッドといったところだ。


 とりあえず、何か飲むか。

 そう思った俺は寝室を出てキッチンに行き冷蔵庫からペットボトルの紅茶を取り出す。

 リビングに行ってソファーに座り、持ってきたペットボトルの紅茶を開けて一口飲んだ。


「ふぅ……」


 一息ついて落ち着く。


 落ち着いたところで、さっきまでのことを思い返す。

 まるで、現実のような世界や五感。

 それなのに魔法やモンスターが当たり前。

 でも、それが自然のように思える。

 感動した。

 だけど、何よりの感動したのはアスラのことだ。

 まさか生きている内にあんなに迫力のあるリアルなドラゴンをこの目で見ることが出来るなんて。


「すごかったな」


 つい呟く。

 何時間も粘って頑張った甲斐があった。

 生きてて良かったとも思える。


 本当なら今すぐにでもRDWにログインしてゲームをしたいが、現実では俺も生きている人間なので準備が必要だ。

 壁に掛かっている時計を見る。

 16時。

 RDWは4時、まだ早すぎる。

 時間はあるように思えるが、ゲーム内では4倍の速度で時間が進んでいるので、17時くらいにはログインしたい。

 とっとと準備を済ませよう。

 とりあえず夕食を食べて、シャワーを浴びてトイレを済ませればいいな。


「よし」


 そうと決まれば、まずは夕食だ。

 俺は立ち上がって壁の内線でコンシェルジュさんに連絡する。


『御用でしょうか?』


 すぐに俺のフロア担当のコンシェルジュさん――大城さんが呼び出しに出る。


「軽い夕食を30分後に持って来てもらっていいですか?」

『かしこまりました』

「お願いします」


 大城さんに夕食を頼んで内線を切った後、タオルと着替えのパンツを持って脱衣所に行き、服を脱いでカゴに入れてからシャワーを浴びる。

 シャワーを浴びた後は身体をタオルで吹き、新しいパンツを履いてドライヤーで髪を乾かす。

 その後にキッチンに行って冷たいお茶を飲んで涼んでいるとインターホンが鳴る。


「やべっ」


 慌ててシャツとズボンを履いて玄関に行き扉を開ける。


「お待たせしました」


 扉の外には、相変わらず黒髪の綺麗な大城さんが食事の乗ったトレーを持って立っていた。


「ありがとうございます」

「中へお持ちします」

「あ、はい」


 そう言って大城さんは部屋に入ってリビングのテーブルの上にトレーを置く。


「何時もより早いですね」

「え? あぁちょっとゲームを」

「そうですか。 シャワーを浴びられたようなので洗濯物を持っていきます」


 なんで分かったんだ。


「では失礼しました」


 そう言って大城さんは俺のパンツとかが入ったカゴを持って部屋から出て行った。


「大城さんは相変わらず仕事人って感じだな」


 ここに引っ越して来てそれなりに慣れたつもりだけど、まだ自分の洗濯物を大城さんのような綺麗な女性に洗ってもらうのは慣れない。

 何でもやってくれるしな。


「金持ちって凄いわ……あ、俺も金持ちか」


 そんなことを言いながら俺は大城さんが持って来てくれた食事を食べて、トイレを済ませた。


 時刻は17時。

 ちょうどいい時間だ。

 早速RDWにログインしよう。


 俺は寝室に行ってベッドに寝転がり、VRゲーム機の端末を装着。

 スイッチを入れる。


「よーし、行くぞー。 待ってろよ、アスラ! RDW ログイン開始!」


 意識が薄れていく――



「お?」


 気が付くと俺は何処かに立っていた。

 チュートリアルAIの言っていた通りなら、ここがシュツル王国の首都バリエの筈だ。

 辺りを見てみる。

 どうやらここは広場らしい。

 人が沢山居る。

 8割くらいが青いマーカーでプレイヤー、残りが白いマーカーのNPCだ。

 そこで背中に何かが当たる感触。


「ん? なんだ?」


 振り返ると――


「グルゥ」


 そこにはアスラが居た。

 鼻先で俺を突いたみたいだ。


「おお! アスラ!」


 俺は即座に両手でアスラの頭を撫でる。


「待たせて悪かったなーほれほれ」

「グルゥー」


 全力で撫でてやるとアスラは気持ち良さそうに鳴く。

 どうやらアスラは嬉しいらしい。

 俺も会えて嬉しいぞ!


 そうやってしばらく触れ合っていると、周囲から注目されているのに気が付いた。

 プレイヤーたちがこっちを見て驚いたり、ひそひそと話しをしている。

 ふふふ……良いだろう良いだろう。

 俺のアスラは超カッコイイからな。

 注目を集めるのも当然だ。

 そうやって優越感に浸っていると、アスラに鼻先で押される。


「グルゥ」


 多分、早く行けって言ってるんだと思う。


「よし、じゃあまずは冒険者ギルドに行こう」


 冒険者ギルドに行ってまずは情報を集める。

 場所は既に調べている。


「出発!」

「グルゥ!」


 俺とアスラは冒険者ギルドを目指して歩き出した。


 30秒で着いた。

 だってここが広場だし。

 冒険者ギルドは木造三階建ての周囲よりも大きな建物だ。

 しかし、いくら大きいといってもアスラを中に入れていいのか?

 まぁ入るから良いか。


「ここだ、入るぞ」

「グルゥ」


 俺はアスラと共に開きっぱなしの冒険者ギルドに入る。

 すると、すぐに沢山の注目を浴びる。

 とりあえず気にせず中を観察。

 冒険者ギルドの中は入って目の前にカウンターがあって何人かの女性のNPCが立っている。

 カウンターの奥には大きな掲示板と奥へ続く通路……これは職員用の通路かな。

 カウンター以外には幾つものテーブルと椅子が置かれていて、沢山のプレイヤーとNPCが席に着いてこちらを見ている。

 みんな静かだ。

 俺はとりあえずカウンターに歩いて近付き、1番近い受付嬢だと思われるNPCに話し掛ける。


「おはようございます」


 ……。

 反応がない。

 受付嬢は目を見開いて固まっている。


「あのーおはようございます!」

「え、あ、はい! おはようございます!」


 さっきより大きな声で挨拶すると、やっと受付嬢は反応した。


「ここら辺のフィールドの情報教えて貰えますか?」

「は、はい」


 フィールドというのは主にモンスターが出現したり、資源が手に入ったりする場所のことで森や平原といった様々な場所がある。

 フィールドにはそれぞれフィールドボスが存在していることがあって、倒すと貴重なアイテムが手に入ったり、塞がれていた道が解放されて、その先の新たなフィールドや新たな街に行けたりする。

 ただ、フィールドボスは一度倒したプレイヤーの前には現れないが、まだ倒していないプレイヤーの前には現れるので新しいフィールドや街に行くには必ず倒さなくてはならない。


 この首都には東西南北にそれぞれ門があり、その先にモンスターがいるフィールドが遠く広がっている。

 そしてフィールドによってモンスターの強さが違う。

 南はモンスターが1番弱くてレベルは1から5くらい、奥に行けば最大で15くらいまで上がる。。

 ゲームを始めたばかりのプレイヤーは南へ行く。

 南のフィールドの先にはヤートという街があるらしい。


 東と西は20から40レベルくらいのモンスターが出現するが、それぞれ出現するモンスターは違う。

 βテストではトッププレイヤーが東と西のフィールドボスを倒して、その先にあった街に行ったとか。


 そして北のフィールドは最低でも出現するモンスターのレベルが50と高く、βテストでは進めなかったようだ。

 NPCに話を聞いたプレイヤーによると、北のフィールドの先にも街があるらしい。


「なるほど」


 受付嬢に聞いた話は俺が調べたβテストの情報とあまり変わらない。

 どうやら正式サービスになってもここら辺に大きな違いはないみたいだ。

 あと何か聞いておきたいことはあるかな?

 うーん……そうだ。

 ドラゴンの情報とかどうだろう。

 いつかは新しいドラゴンをテイムしなきゃいけないし、なにより俺が会いたい。

 聞いてみるか。


「ここら辺でドラゴンの情報はありますか?」

「ど、ドラゴンですか!? そう言われましても……」


 受付嬢はアスラを見る。


「いや、そっちじゃなくて」

「あ、すみません。 ……そういえば北の方でドラゴンを見たと聞いたことがあったような」

「北か……」


 流石に北にいきなり行くのは厳しいよなぁ。


「ありがとうございました」

「はい」


 とりあえず聞きたいことは聞けたので冒険者ギルドを出ることにする。


「アスラ行くぞ」

「グルゥ」


 未だに視線を感じつつも俺はアスラと冒険者ギルドを出た。


「さて、どうしようか」

「グルゥ?」


 アスラが俺を見て首を傾げる。

 意外と可愛いな。

 アスラも一緒に行くんだし話してみるか。


「北にドラゴンが居るかもしれないから本当は北に行きたいんだけど、いきなりは厳しいと思うんだ。 だから、まずは初心者として南に行こうと思うんだけど、どう?」

「グルゥー」


 アスラは首を縦に振って俺に鼻先を押し付ける。

 どうやら俺の好きにしていいと言っているようだ……多分。


「じゃあまずは南に行くか!」

「グルゥ」


 南に行くことに決めて移動しようとすると、1つ思い出す。


「あ、そうだ。 アスラちょっと待っててくれ」

「グルゥ?」

「先にやることがあったんだよ」


 俺はメニューを開いて、ある項目を触れる。

 それは【オオプ商店】。

 オオプ商店は現実のお金でアイテムが買える所謂課金アイテムショップだ。

 公式サイトに買える物が載っていたのを見て俺は買おうと決めていたんだが、うっかり忘れるところだった。


 開いたオオプ商店の項目から加護を選ぶ。

 すると、幾つかの加護が表示される。

 なんとオオプ商店では加護を買うことが出来るのだ。

 といっても買える加護にはそれぞれ有効期限が存在するが。

 それでも強力だ。


 俺の目当ては2つ。

 1つは【プレイヤー成長の加護】。

 これはなんとプレイヤーのレベルアップする速度が上がるという加護。

 しかも、この加護にはグレードがあり、4,000円で1.2倍、8,000円で1.4倍、12,000円で1.6倍、16,000円で1.8倍、20,000円で2倍、30,000円で3倍、40,000円で4倍となっている。

 有効期限は現実時間で1ヶ月。


 2つ目は【モンスター成長の加護】。

 これはさっきの加護の使役モンスター版だ。

 グレードも有効期限も同じ。


 本来、テイマーなどのモンスター使役系職業は貰える経験値がプレイヤーとモンスターで割られるので成長が遅い。

 しかし、この加護があればその問題は無くなるのだ。

 もちろん俺は両方とも最高グレードの40,000円の4倍を買った。


「よし、これで完璧」


 メニューを閉じる。


「改めて、行くぞアスラ!」

「グルゥ!」


 俺たちは南に向かって歩き出した。



「これは……多すぎる」


 常に街で注目されていたが、特に問題なく南門を抜けて南の草原のフィールドにやって来たのだが……。

 フィールドでは数多くのプレイヤーたちが出現するモンスター相手に戦っていた。

 俺たちが戦う場所が無い。

 よく考えてみれば、まだRDWが始まって1日も経っていないのだ。

 そう考えれば、この光景は当然だろう。


「困ったなぁ」


 ここでレベル上げが出来ないとなると他の場所に行くしかないが……でもなぁ。

 ん?

 困っているとアスラが鼻先で突いてくる。


「どうしたアスラ?」


 アスラは南門の方に少し戻ると、振り返り俺を見て首を南門の方にクイっと動かす。

 その姿は、まるで「俺に付いて来い」や「あっちに行こう」と言っているように見えた。

 もしかして……。

 俺は足早にアスラに近付く。


「アスラ……もしかしてお前、北に行こうって言ってるのか?」

「グルゥ」


 アスラは首を縦に振り、肯定の気持ちが僅かに伝わってくる。


「でも北は敵のレベルが「グルゥ」」


 首を横に振ったアスラは俺を見つめる。

 俺にはアスラが問題無い、任せろと言っているように思えた。


「アスラ……」


 俺にはアスラが今まで以上に頼もしく見える。

 アスラの目を見ていると大丈夫な気がしてくる。


「そうだな……俺はまだお前の力を一度も見ていないんだ。 それなのにお前が勝てないなんて思うのは勝手だよな。 ……行こうかアスラ。 俺にお前の力を見せてくれ!」

「グルゥ!」


 アスラの嬉しいといった感情が少し伝わってくる。

 俺の仲間を信じよう。

 きっとアスラなら大丈夫だ!


 俺はアスラと共に北を目指して歩き出した。



 北門を抜けて北のフィールドに出ると、そこは南のフィールドと違い誰も居なかった。


「やっぱり誰も居ないな」

「グルゥ」


 フィールドは殆ど草原だが、遠くに森が見える。

 そしてチラホラ見えるモンスターたち。


「行くか、アスラ」


 気合いを入れて、俺はマジックバッグから杖を取り出す。


「グルゥ!」


 アスラも気合い十分だ。


「まずは1番近いあの1匹の緑色の狼から行こう」


 俺は1番近くに居る大型犬くらいの大きさの緑色の狼を指差す。

 マーカーは黄色、つまり中立モンスターだ。

 レベルは52……やはり高い。

 受付嬢の情報通りなら、あのモンスターは【グリーンウルフ】。

 見た目通りの名前で、注意点としては風魔法を使ってくるところだろう。

 俺とアスラはグリーンウルフにある程度近付く。


「よし、アスラ。 まずは土魔法でアイツを攻撃だ」

「ガァ!」


 アスラが軽く吼えると拳大の先の尖った土の塊が出現する。

 そして、それが高速でグリーンウルフに飛んでいき――突き刺さる!


「キャンッ!」


 土の塊がグリーンウルフに突き刺さりHPが4割程削れる。


「おお!」


 50レベル以上も離れている相手にこんなにダメージを与えるなんて!

 やはりアスラは強い!


 しかし、グリーンウルフもやられているだけではない。


「ワン!」


 グリーンウルフが吼えるとアスラに向かって半透明な緑色の塊が飛んで来る。

 風魔法だ!


「スペースウォール!」


 俺はアスラを守ろうとアスラの前の空間に壁を作る……が。


「くそッ!」


 俺の作った壁は容易く突き抜けられる。

 やはり俺ではレベルが違いすぎるようだ。

 グリーンウルフが放った風魔法はアスラに直撃した!


「アスラ!」


 慌ててアスラを見る。


「グルゥ」


 しかし、アスラは何ともないように答える。

 アスラのHPを確認してみる。

 320/350


「え?」


 今のでたった30ダメージ?

 マジ?

 どう見ても、もっと強力な攻撃だったぞ。

 俺は驚いた。


「ちょ!」


 しかし、もっと驚く。

 なぜならアスラのHPがみるみる回復していっているからだ。

 これが母なる大地の効果か?

 強すぎるだろ!


 そうやって驚いていると、いつの間にかグリーンウルフがアスラに近付き、噛み付いた!


「アスラ!」


 今度こそヤバイと思ったのだが……HPは330。

 えぇ?


「グルゥ!」


 アスラを噛み付いているグリーンウルフに右足を振り下ろす。


「キャン!」


 グリーンウルフは倒れて消滅。

 ドロップアイテムだと思われる牙が落ちていた。


「これマジ?」


 いや、強いとは思っていたけどさ。

 え、本当に?


「グルゥ?」


 そうやって信じられない出来事に驚いているとアスラがドロップアイテムを咥えて持って来てくれていた。


「あ、ありがとう」


 俺はそれを受け取りマジックバッグにしまう。


「アスラってこんなに強かったんだな」

「グルゥ!」


 アスラは当然だと言うように答える。

 まさか52レベル相手をこんなに楽に倒せるなんて……いいのかなぁ。


「そういえば」


 今の戦闘でレベルが上がってるかもしれない。

 いや、流石に上がってる筈だ。

 俺はステータスを開く。


=================================


名前:ドラゴン

種族:ドラゴニュートLv14

職業:ドラゴンテイマーLv8、時空間魔法使いLv5

スキル:龍化Lv1、テイムLv6、時空間魔法Lv2

モンスター1/1:アスラ

称号:ドラゴン狂い

HP:223/223

MP:291/291


=================================


名前:アスラ

種族:アースドラゴン(ユニーク)Lv10

主:ドラゴン

スキル:アースブレスLv1、土魔法Lv8、母なる大地

HP:427/427

MP:269/269


=================================


「えぇぇぇ!!」


 ステータス上がりすぎぃ!

 いくら成長の加護があるからって、モンスター一体でこれかよ!

 もしここでモンスターを倒し続けたら……どうなっちゃうんだ?

 気になる。

 もしかしたら、すぐにモンスターを連れ歩ける数も増えるかもしれない。

 それに北に居るかもしれないドラゴンにも会えるかも……。


「アスラ……アレいける?」


 俺は三体で固まっているグリーンウルフを指差す。

 アスラは頷く。

 まじか。


「じゃあ今度はアースブレスで」

「グルゥ」


 アスラは三体のグリーンウルフに近付いていき――


「ガァァァァァ!」


 口から茶色の粒子のようなブレスを放つ。

 アスラが放ったアースブレスは瞬く間に三体のグリーンウルフを飲み込み――後にはドロップアイテムだけが残った。


「もう驚くのに疲れたよ」


 でも、ここまで来ると気持ちが良い。

 ステータスが目に見えて上がっていくし、何より俺の好きなドラゴンがカッコ良く無双してるのは俺的には最高だ。

 こうなったら行ける所まで行きたい。


「よし! どんどん行くぞ!」

「グルゥ!」


 俺のテンションは最高潮だった。


 その後、平原のグリーンウルフを倒しまくり、それでは飽き足らずに森に入ってモンスターを倒し続けた。

 殆どのモンスターはアスラが一撃で倒していくのだが、時たま俺のスキル上げの為に時空間魔法の練習をモンスターでした。

 そうして森の中を進み続けていると半透明な壁のようなものを見付ける。


「これは……もしかしてフィールドボスか?」

「グルゥ?」


 情報だとフィールドの中に半透明な壁があって、その中に入るとフィールドボスとの戦闘が始まるらしい。

 所謂ボスエリア。

 ただし、フィールドボスと戦っている者が中に居ると入れない。


「えっと、この中に強いモンスターが居るってこと」

「グルゥ」


 フィールドボスか。

 ここまで順調にやって来たけど、流石にフィールドボスは厳しいんじゃないかなぁ。

 βテストではパーティーで戦うのが当たり前だったらしいし、ソロで倒したなんて情報は無い。


「どうしたもんか」

「グルゥ」


 俺がフィールドボスに挑もうか悩んでいると、アスラが俺の初期装備の布の服を咥えて引っ張る。

 どうやらアスラはフィールドボスを倒しに行きたいようだ。


「でもなぁ」

「グルゥ」

「うーん、まぁ負けたら負けたでその時か」

「グルゥ!」

「行こう!」


 考えてみれば、俺たちはソロじゃないもんな。

 ……まぁ今のところアスラが無双してるだけだけど。

 そんなことを思いながら俺とアスラはボスエリアに入る。

 壁は抵抗無く抜けられた。

 誰も戦っていなかったようだ……そりゃそうか。


「グルゥ」


 ボスエリアの中央にはアスラと同じ大きさくらいの白い狼が立っていた。

 名前は……ウインドウルフ。

 初めて遭遇したモンスター。

 レベルは80。

 今までのモンスターの中で最高レベルだ。


「ガルルルルル」


 ウインドウルフは唸りながらこちらを睨み付けている。

 完全にこっちをヤル気だ。


「グルゥゥ!」


 だが、やる気ならアスラも負けてない。


「ワオォォン!」


 先に動いたのはウインドウルフだ。

 ウインドウルフが吼えるとグリーンウルフよりも大きな風魔法の塊が3つも出現する。


「来るぞ、気をつけろ!」

「グルゥ!」


 ウインドウルフの風魔法が俺に1つ、アスラに2つ飛んで来る!


「くっ!」


 飛んで来た風魔法を俺は横に飛んで何とか避ける。


「いてっ……アスラは?」


 アスラの方を見ると、いつの間にかウインドウルフがアスラに飛びかかっていた。


「アスラ!?」


 ウインドウルフはアスラに噛み付くが、アスラはその攻撃に怯まずに逆に前足で攻撃する。

 アスラはウインドウルフを前足で押さえつけ、ウインドウルフはアスラに噛み付いていて両方動かない。


「今だ!」


 俺は立ち上がって杖を左手に持ち直してウインドウルフに向かって走る。

 ここはチャンスだ!

 俺のとっておきを叩き込んでやる!


「龍化!」


 俺の右手が龍化していく。

 MPが無くなる前に!


「うおおおおお!」


 ウインドウルフの胴体に龍化した右手を叩き込んだ!


 ドカッ!


 HPが全体の1割程削れる。

 俺でも攻撃が通る……ならッ!


「アスラ! そいつをしっかり押さえておけよ!」

「グルゥ!」


 俺は連続して右手で攻撃する!


「ギャン!?」

「オラオラオラ!」


 5回追加で攻撃したが、とうとうMPが無くなったのか、右手が元に戻る。

 しかし、ウインドウルフはアスラから口を離していた。


「よし、アスラ! そいつにトドメだ!」

「グルゥゥゥゥゥ、ガァァァァァ!!」


 アスラはウインドウルフを強引に吹き飛ばしてからアースブレスを放つ!


「キャウゥゥ……」


 ウインドウルフはアスラのアースブレスに飲み込まれ、悲鳴と共に消えていった。

 そしてアースブレスが消えると地面には毛皮と牙や緑色の石などが転がっていた。


「お? おおおおお! よっしゃあああ!! やったぞ、アスラ!」


 あまりの喜びに俺はアスラに全身で抱きついた。


「グルゥ!」


 アスラも嬉しそうだ。

 喜びが伝わってくる。


《タイバの森のフィールドボスが倒されました。 これによりウスルの街と転移陣が解放されます。 ただし、転移陣は一度行った街でしか使用できません》


「ん?」


 アスラと喜んでいると、アナウンスが流れた。


 これはワールドアナウンス。

 RDWにログインしている全プレイヤーに聞こえるものだ。

 つまり――バレた。


「あ、やべ」

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