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第34話 神託

第34話 神託




 ワールド・ドラゴンを探して、か。

 だからヴェルディーネさんたちはあの山に来たのか……ヨエムに会いに。

 しかし、そこで気になってくるのはヴェルディーネさんは何故、ワールド・ドラゴンを探しているのかだ。

 見た感じ、悪意があるようにも思えないから悪事ではないだろう。

 というか、強大な力を持つワールド・ドラゴン相手に悪さなんてできないよな。

 そうなってくると……あとはワールド・ドラゴンに助けを求めてきた?

 うーん……考えてるだけじゃ分からない。


「気になりますよね?」

「え?」

「私たちがワールド・ドラゴンを探している理由です。ものすごく考えているようですから」

「あ、すいません」


 少し考えることに集中してしまった。


「いえいえ、いいのですよ。……でも、やはりドラゴンさんに話して正解ですね」

「それは、どういうことですか?」

「失礼ですが出会ってからずっとドラゴンさんのことを見ていました。アスラ君やヘスティアちゃんとの信頼関係、私たちとの会話の姿勢。色々です」

「……」

「それで確信しました。貴方は信用できる人物です」

「えっと……ありがとうございます?」

「更にあの山に居たと思われるワールド・ドラゴンと特別な関係である。そしてそれは悪いものではないと」

「なッ!?」

「なにッ!?」


 この短い時間でそこまで分かったというのか!?

 俺は驚きで固まってしまう。

 ラギルも同様だ。

 これでは……。


「やっぱりそうですか」


 また同じ失敗をしてしまった。

 ヴェルディーネさん相手だと厳しいな。


「そんな貴方だからこそ、私たちがワールド・ドラゴンを探している理由を話せます」

「……理由」


 一体どんな理由が?


「私たちはあることを調べています」

「あること?」

「はい。そしてそのあることを調べるのには……」

「ワールド・ドラゴンに聞くのが一番だと?」

「その通りです」


 ヴェルディーネさんは少し微笑んで頷いた。

 なるほど。

 確かに長く生き、この世界のことをよく知るワールド・ドラゴンならば分からないことなんてあまりないだろう。

 だがしかし……。


「つまりそれはワールド・ドラゴンでなければ知らない、答えられないこと……ということですよね?」


 そう、簡単に分かることならば伝説的な存在であるワールド・ドラゴンを探して危険を冒し大陸を渡ったりなどしない筈。


「そこまでして一体何を知りたいのです?」

「私たちが知りたいこと……それは“この世界に何が起きているか?”です」

「この世界に何が起きているか?」

「もっと言えば【夢追い人】についてです……ドラゴンさん、貴方のようなね」

「……」

「貴様が夢追い人だと?」


 3度目だからすごく驚くようなことはしなかったけど、否定するつもりはない。

 隠すようなことでもないしな。

 しかし、ヴェルディーネさんは一体どこまで見えているんだ?


「今度は驚かないんですね?」

「十分驚いてはいますよ。どこで気が付いたんです?」

「ドラゴンを使役しているのを見て、もしや? とは思っていましたが、確信したのはドラゴンさんが空間魔法を使用した時です」

「あの時……」


 俺がドロップアイテムを仕舞う時か。


「空間魔法を使用できる人物は通常国に仕えています。もちろん冒険者などに居ない訳ではありませんが、ドラゴンさんレベルの腕だと国が放っておかないでしょう」

「だからあの時、空間魔法を使った俺をシュツル王国に仕えている人間だと思って警戒した」

「ええ。でも、ドラゴンさんは空間魔法を簡単に人前で使用しますし、それがどういうことかも理解しているようではありませんでした」


 確かにそうだ。

 ゴラさんやアラさんたちに言われていたのにな。


「普通にこの世界で生活していれば理解していることを理解していなかった。それは貴方がこの世界にあまり詳しくない、この世界に来たばかりの夢追い人だから……と考えた訳です」

「なるほど」

「先程言ったように信用できる、そして夢追い人であるからドラゴンさんにこうしてお話しているのです」

「そうか……ヴェルディーネ様はこいつが無知でバカで愚かなあの夢追い人だから大丈夫だと判断したのですね」

「ラギル……黙って聞いていてください」


 俺がこの世界に来て間もない夢追い人だからシュツル王国に仕えている可能性が低いと考えたのか。

 なるほどな。

 ……それとラギル。


「ラギルもバカだろ」

「は?」

「何も言ってないぞ」

「貴様……!」

「ラギル?」


 ヴェルディーネさんに名前を呼ばれただけでラギルは直立不動になった。


「ラギルで遊ぶのは後でお願いします」

「すいません、つい」

「ヴェルディーネ様ぁ……」


 ラギルがすごい悲しい顔をしている。

 ちょっと悪いことしたかも。


「くっ!?」


 めっちゃこっち睨んでる。

 っと、ラギルよりも今はヴェルディーネさんの話だ。


「はじまりは今から約一年前のことでした」

「一年前……」

「はい。突然、すべての世界で声が聞こえたのです」

「声?」

「それはどの場所のどの人間にも聞こえる声でした」


 それってもしかして……。


「私たちが調べたところ、それは【神託】と呼ばれるものだと判明しました。神託はこの世界に生きている者すべてに世界の重要な出来事を伝えるもの……らしいです」


 やっぱり、それってワールドアナウンスだよな?


「神託が最後に起きたのは、およそ1000年前だといわれています。当然、人々は突然の声に混乱しました……そして更にその内容に驚きます」

「一体なんと?」

「声は言っていました《今から数日後、この世界とは別の世界からやって来た特別な者たちが現れる。その者たちとどう付き合っていくかはお前たちの自由だ》と」


 その内容だと……。


「ドラゴンさんの考えている通りだと思います。その声の言う通りに数日後、シュツル王国とエルガオム帝国の首都に見知らぬ人々が現れました」

「それが」

「ええ。私たちが言う貴方のような夢追い人です」


 ……なるほど。

 そのワールドアナウンスは俺たちプレイヤーがこの世界にやってくることを知らせる為に運営が流したものだったということなのか。

 そして、やって来たプレイヤーがおそらくβテストのプレイヤーだったんだろう。


「私たちはこの世界に現れた夢追い人を調べました。そしていくつかの驚くべきことが分かったんです」

「驚くべきこと?」

「夢追い人の方々は知識もなければ、個人の強さも一般人レベルです。しかし、成長率が異常でした。私たちが何年もかけて習得することを彼らは数時間で、下手したら数分で習得するのです」

「それは……」

「そして更に夢追い人の方々にはレベルという存在があるというのではないですか。モンスターを倒したりするだけで簡単に強くなっていけるそれは……」


 ヴェルディーネさんは下を向いて悲しそうにそう言った。

 確かに何年もかけて強くなった自分たちに一般人レベルだったプレイヤーが数時間でレベルを上げて強くなって追いつくというのは……恐ろしい、か。


「……」


 そういえばヴェルディーネさんたちにはレベルは存在しないのか?

 ……いや、おそらく自分で確認できないだけでレベルはあるのだろう。

 元からこの世界に存在したモンスターにもレベルがあるのだから、NPCにないとは思えない。

 ただ、プレイヤーのように簡単には上がらないのではないかな。


「それだけではないッ!!」

「がう!?」


 突然、俺を睨み続けていたラギルが声を上げる。

 ヘスティアも俺も驚いた。

 なんだ?


「貴様ら夢追い人は……血を流さない! 我々人であれば必ず流れている筈の血を! だから、貴様らは我々と同じ人間ではないッ!!」


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