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第33話 ヴェルディーネの話

【ドラゴン狂いの課金テイマーさん 1巻】10月18日発売です。

よろしくお願いします!

第33話 ヴェルディーネの話




「この辺りでいいですね」


 山から下りて、しばらく歩いた所でヴェルディーネさんがそう言った。

 どうやらここで話をするらしい。

 しかし……。


「ウスルまで帰らずに、こんな場所でいいんですか? 秘密にしたい話でしょう?」


 ヴェルディーネさんはゆっくりと首を横に振る。


「ここでいいんです。辺りには私たち以外の人は居ないようですし、それにアレも使いますから」

「アレ?」

「ラギル」

「はッ」


 ラギルは腰にあるおそらくマジックバッグだと思うバッグの中から三角形の何かを取り出してヴェルディーネさんに手渡した。

 あれは何だろうか?


「がう?」


 ヘスティアは興味深そうに三角形の何か見て首を傾げている。

 かわいい。


「うふふ。ドラゴンさんもヘスティアちゃんも気になっているようなので紹介しますね。これはマジックアイテムの一つで【静寂の三】といいます」

「静寂の三?」

「はい。効果はこのマジックアイテムを中心に一定の大きさの結界を張るというもので、この結界の中の音はすべて外に漏れないのです」

「なるほど。聞かれたくない話をするにはピッタリのマジックアイテムですね」

「ええ」


 相変わらずの優しい笑顔で頷くヴェルディーネさん。

 こういうマジックアイテムを常備しているということは、普段からそういう機会があるってことだよな。

 ほんと、一体何者なんだろう。

 まぁそれもこれから少し話してくれるんだろうけど。


「道の真ん中で話をするのもあれですので、あそこに移動しましょうか」


 そう言ってヴェルディーネさんは道から外れた場所を指差した。

 確かにそうだな。


「分かりました」


 俺たちとヴェルディーネさんたちは移動する。

 あ、シート使うか。

 でも、あれ狭いんだよなぁ

 俺とアスラが座るのには十分なんだけどね。


「立ち話もなんですから俺が持ってるシートを敷きますね」

「あらまぁ、ありがとうございます」


 俺はアイテムボックスからシートを取り出す。

 その時にヴェルディーネさんとラギルの視線を強く感じた。

 アイテムボックスを使う度にこうだな。

 ……とりあえずシートを敷くか。


「よっと」


 シートを地面に敷いてみたが、やっぱり狭い。

 うーん……しょうがない。

 アスラとヘスティアとヴェルディーネさんに座ってもらって俺とラギルは立ってるか。

 それか地べたに座るか。


「すいません。狭いんで俺は立ってますね」

「気を遣わせてしまって、ごめんなさい」

「いえいえ」

「ヴェルディーネ様、俺も」

「ラギル。貴方は立ってなさい」

「……はい」


 どうやらヴェルディーネさんはまだラギルに少し怒っているようだ……それともいつもこんな扱いなんだろうか。


「グルゥ(主人)」


 そんなことを思っているとアスラが俺を呼んでいた。


「アスラ、どうした?」

「グルゥ(主人は座って。僕は立ってる)」

「いや、でも」

「グルゥ(いいから)」

「……そっか。ありがとうな」


 アスラの頭を撫でてお礼を言う。

 やっぱりアスラは優しいなぁ。


「どうしたんですか?」

「いやぁ、アスラが自分の代わりに座っていいよって言ってくれたんですよ」

「まぁ! アスラ君は優しい子ですね!」

「そうなんですよ!」


 アスラがそう言われて嬉しいなぁ!


「がう!」


 突然、ヘスティアが俺の身体に頭をぶつけてくる。

 何だ? と一瞬思ったが、ヘスティアを見てすぐに理由が分かった。

 どうやら自分も頭を撫でて褒めろということらしい。

 かわいい。


「よしよし。ヘスティアも優しい良い子だぞ」

「がうがう」


 ヘスティアを撫でて褒めてあげると気持ち良さそうに鳴いた。


「あらあら」


 ヴェルディーネさんは頰に手を当てて、ヘスティアを優しい眼差しで見ていた。

 この人も優しいんだろうけど、それだけじゃないんだろうな。


「ふんッ! いつまでそうしているつもりだ? 早く座れ」

「あ、そうだな。すいません」

「いえいえ。ラギルも、もう少し余裕を持ちなさい」

「分かりました」


 本当に分かってんのかねぇ。

 そう思いつつ俺とヘスティアとヴェルディーネさんはシートに座る。

 ちなみにヘスティアは胡座をかいた俺の足の上だ。


「では、静寂の三を使用しますね」


 そう言ってヴェルディーネさんは静寂の三を右の手の平に乗せる。

 すると、三角形の中心が僅かに輝いた。

 おそらく静寂の三はマジックランタンと同じで、魔力を流して起動するんだろう。

 そうして起動した静寂の三をヴェルディーネさんはシートの上に置く。


「これで私たちの会話は外には漏れません」


 なんだか思ってたより地味だな。

 結界なんて言うから、もっと半透明な壁でも現れるのかと思ったわ。

 まぁ効果は発動しているらしいし、これでやっと話を聞ける。


「まずは私たちのことについて話させていただきます」


 ヴェルディーネさんは真剣な表情をしてそう口を開いた。

 どうやら先にヴェルディーネさんやラギルのことを教えてくれるようだ。


「私たちはこのシュツル王国の――この大陸の者ではありません」

「この大陸の者では……ない?」


 つまりそれって……。


「ええ。私たちはここから西の海を越えた遥か先の大陸にある国――【エルガオム帝国】の者です」

「なッ!?」


 エルガオム帝国の者だって!?

 ヴェルディーネさんとラギルが?


「がう?」


 ヘスティアはよく分かっていないようで、首を傾げている。

 かわいい。

 ……けど、今はそうじゃなくて!


「ヴェルディーネ様!」


 そこでラギルが声を上げる。

 今度は何だ?


「なんですか?」

「正体を明かすなど危険です! 一体コイツにどこまで話すつもりですか!?」

「ラギル、聞いてください。ドラゴンさんにお話をしていただく以上、こちらのこともある程度お話しするのが一番です。信用していただく為にもね。違いますか?」

「それは……」


 なるほど。

 ヴェルディーネさんはワールド・ドラゴンについて、とても知りたいらしいな。

 それに……。


「ある程度、ね」


 すべてを話すつもりはない、と。

 おそらくヴェルディーネさんは無意識ではなくわざとそう口にしたのだろう。

 頭がそんなに良くない俺にも分かるように。

 きっとヴェルディーネさんはすべてを話せないから俺がどこまで話すかもこっちに任せるということを伝えたかったんじゃないかな……なーんて。

 この考えはさっきの発言がわざとだった場合だ。

 違う可能性もある。

 ……ただ、ヴェルディーネさんは頭が良いと思うから無意識ではないと思うんだよなぁ。


「それに後で分かりますがドラゴンさんなら危険はありません」


 俺なら危険がない?

 どういうこと?


「……分かりました」

「ラギル、ありがとう」

「いえ、すべてはヴェルディーネ様の為です」


 どうやらラギルは納得したようだ。

 ……って、だからそうじゃなくて!

 今はエルガオム帝国の話だ。

 エルガオム帝国はプレイヤーが最初に選ぶ国の内の一つで、確かシュツル王国と同程度の規模の国だった筈。

 ただし、理由は分からないが、プレイヤーからはシュツル王国の方が人気だ。

 あとは……シュツル王国とは別の大陸に国があるから簡単には行き来ができない。

 それに――


「エルガオム帝国ってこの国とあまり仲が良くない……ですよね?」

「はい。あまり……というか関係は最悪ですね」

「最悪……」

「10年前までは戦争もしていました」


 なるほど。

 ラギルがあんなに危険だと言うのも、警戒しているのも分かった。

 しかし、何故?


「何故、こんな危険を冒してまでこの国に来たのです?」

「分かりませんか?」


 ヴェルディーネさんがこの国に来た理由……。


「ワールド・ドラゴン」

「その通りです。私たちはワールド・ドラゴンを探してこの国に来ました」

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