表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

第32話 謎の二人

第32話 謎の二人




「それで、ドラゴンさんはどうしてこの山に?」

「えっと……」


 NPCであるヴェルディーネさんにレベル上げって言って伝わるのか?

 というか、ステータスって概念を知っているのかね?

 ヨエムは知っていたけど……ヨエムだからなぁ。

 とりあえず、普通に強くなる為って言っとけば良いか。


「ふんっ。どうせ言えない理由でもあるんだろ!」


 そうやって悩んでいるとラギルが復活した。


「ラ・ギ・ル?」

「……はい」


 そして再び沈むラギル。

 ラギル弱えぇ……。


「もしかして言いづらいことでもありましたか? ごめんなさい」


 申し訳なさそうにヴェルディーネさんが言う。


「いえいえ! そういう訳ではないんです!」


 慌てて否定する。

 ヴェルディーネさんにそんな顔をさせてしまって、こちらこそ申し訳ない。


「そうですか! よかったぁ!」

「ッ!」


 とても良い笑顔でヴェルディーネさんは喜んだ。

 ……その顔があまりにも美しく、俺は一瞬見惚れてしまう。

 ヤバイなぁ……反則だろ。

 後ろで何故かラギルがドヤ顔してるのがウザイけど。


「……俺たちはこの山に強くなる為に来たんです。あと金稼ぎも」

「なるほど。ロックリザードを倒してレベル上げをして、ついでにドロップアイテムを集めてお金稼ぎですか」

「まぁそんな感じです」


 どうやらNPCであるヴェルディーネさんはレベル上げを理解しているようだ。

 じゃあNPCは普通にステータスを知っているんだな。


「道中のロックリザードを倒して来てしまったので、ドラゴンさんの邪魔をしてしまいましたね」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


 もうしばらくしたらロックリザード湧くだろうしな。

 それを狩れば今日のノルマは達成出来るだろう。

 さて、今度はこっちが聞く番だ。


「ヴェルディーネさんは何故この山に?」

「私たちはこの山で目撃されたっていうドラゴン目当てで来たんです」

「目撃されたドラゴン……」


 そのドラゴンってヨエムのことだよな。

 ヴェルディーネさんはどうしてヨエムに会いに来たんだ?


「まぁそのドラゴンはどうやら既に立ち去ったあとのようでしたけど」

「へ、へぇー」


 ヨエムのことってあまり話さない方がいいと思う。

 だから知らないフリをしよう。

 そう思って答えたのだが、ヴェルディーネさんの優しそうな瞳が鋭くなる。


「なにか、知ってますよね?」

「えっと……」


 マジかよ!

 今の一瞬で気付かれたのか!?

 ヴェルディーネさんは俺から視線を外してアスラとヘスティアをチラリと見る。


「私たちはただそのドラゴンに会って話をしたかっただけです。別に何か悪いことをしに来た訳ではありません」


 これは話しても大丈夫か?

 もう俺が何か知っているのは気付かれているようだし。

 そう悩んでいる俺を見てヴェルディーネさんがポツリと呟いた。

 ――ワールド・ドラゴン……と。


「なっ!?」


 俺はヴェルディーネさんの口から出てくるとは思わなかったその言葉に驚いてしまった。


「当たり、ですか」


 ヴェルディーネさんは呟く。

 完全にバレた。

 

「貴様! 何を知っている! 全部話せ!」


 そこでラギルが俺に摑みかかろうとしてきた。

 その手をアスラが翼盾で防ごうとするが――


「ラギル、下がりなさい」


 ヴェルディーネさんがラギルの手をはたき落した。

 え?

 アスラと互角にやり合えるラギルの手を軽くはたき落としただと?

 やっぱりヴェルディーネさんは只者ではない。


「しかし!」

「下がりなさい」

「分かりました」


 渋々ラギルが後ろに下がる。


「ドラゴンさん。話せることだけでいいので話してくれませんか? もちろん謝礼もお支払いします」

「……」


 ヴェルディーネさんに話していいのだろうか?

 まだヴェルディーネさんが何者かも分かっていない。

 でも、ただの好奇心で知りたい訳ではないようだ。


「出会ったばかりで信用がないのは分かります。私たちのことについてもお話しさせていただきます。お願いします」


 そう言ってヴェルディーネさんは頭を下げた。

 はぁ……。


「アスラ、ヘスティア。俺はヴェルディーネさんに話してもいいと思うんだけど、2人はどうだ?」

「グルゥ(いいと思う)」

「がう!」


 2人とも頷いて答えた。

 じゃあいいか。


「ヴェルディーネさん、頭を上げてください」

「はい」

「俺に話せる範囲で話させてもらいます。それでいいですか?」

「ありがとうございます!!」


 ヴェルディーネさんは一瞬で俺の手を両手で持って笑顔でお礼を言った。

 マジでこの人何者だよ!?

 速すぎるだろ!

 アスラですら反応出来なかったようで、ポカーンとしているぞ。


「そうと決まったら、ここにはいられませんね。山を下りましょうか」


 ヴェルディーネさんは手を離してそう言った。

 確かにロックリザードも湧くだろうし、ここでは落ち着いて話が出来ないか。


「分かりました。ただ、道中のロックリザードは俺たちに任せてもらっていいですか?」


 レベル上げと金稼ぎをしないといけないからな。


「もちろんです。ドラゴンさんたちはレベル上げに来たんですからすべてお任せします」

「ありがとうございます」

「では、行きましょうか」


 俺たちは山を下り始めた。


 五分ほど山を下りていると、早速ロックリザードが三体姿を現した。


「ラギル、手出しは禁止ですよ」

「分かっています」

「では、ドラゴンさんお任せします」

「はい」


 ロックリザードは左側に二体で固まっていて、そこから少し離れて右に一体。

 ならば……。


「ヘスティア、左側のロックリザードにファイアーブレス! アスラは右の奴を叩け!」

「グルゥ! (分かった!)」

「がう!」


 俺の指示通りにアスラが右のロックリザードに向かっていき、ヘスティアが息をためて――


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 蒼いファイアーブレスでロックリザード二体を焼き払い、アスラが翼盾でロックリザードを叩き潰した。


「おー! アスラ君とヘスティアちゃんってやっぱりお強いですね!」

「そうでしょう! ……まぁヴェルディーネさん程ではないですけど」

「あらあら、私はそんなに強くないですよ?」

「はぁ」


 絶対そんなことない。

 俺の考えではラギルよりもヴェルディーネさんの方が強いと思っているし、そう感じてもいる。

 それにヴェルディーネさんはヘスティアの蒼いファイアーブレスに驚いていないしな。

 俺はドロップアイテムを運んできたヘスティアとアスラを撫でているヴェルディーネさんを見てそう思った。

 ……何故かラギルはドヤ顔だ。


「グルゥ(はい)」

「がう」

「ありがとう」


 アスラとヘスティアを撫でてからドロップアイテムを受け取ってアイテムボックスに仕舞う。


「まぁ!」

「ヴェルディーネ様!」


 そこで何故かヴェルディーネさんは驚きの声を上げ、ラギルがその前に立ち、大剣を構えて俺を睨んでいた。


「な、なんだよ」

「なんだもなにもないッ! 貴様、やはりどこかの刺客だろ!」

「はぁ!? 何を言っているんだ!」


 ラギルが再びそんなことを言い出した。

 アスラもヘスティアも臨戦態勢だ。

 そしてヴェルディーネさんも難しそうな表情をしている。


「ドラゴンさん。今の魔法って空間魔法……ですよね?」

「はい。アイテムボックスっている物を仕舞う空間魔法ですけど」

「そうですか」


 2人とも、どうしたんだ?

 原因はアイテムボックス?


「……ラギル。剣を下ろしなさい」


 しばらく考えていたヴェルディーネさんはそう言った。


「しかしッ!」

「ドラゴンさんは大丈夫です。どうやら彼はよく分かっていないようですから」

「……そのようですね」


 ラギルはジッと俺を見た後、剣を下ろした。

 そしてヴェルディーネさんは優しそうな表情に戻る。


「一体なにが?」

「ごめんなさいね、ドラゴンさん。でも、今のは貴方にも原因があるんですよ」

「え?」

「この辺りも後でお話ししましょうか」


 そう言ってヴェルディーネさんとラギルは歩き出した。

 どういうことなんだ?

 俺は悩みながらもアスラたちと歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ