第29話 ロックリザードの肉
第29話 ロックリザードの肉
「がう!」
「グルゥ(到着ー……だって)」
山の入り口に着くとヘスティアが嬉しそうに声を上げた。
やっぱり俺たちと会うまで住んでいた山だから愛着があるのかな?
そんなことを思いつつ時間を確認。
今は……9時か。
結構ゆっくり歩いてきたから到着が少し遅くなったな。
まぁまだ焦るような時間ではないし大丈夫だろ。
とは言っても時間が勿体無いし早く山に入ろう。
「よし! じゃあ早速、山に入ってヘスティアのレベル上げとドロップアイテム稼ぎだ! いくぞー!」
いつもよりテンション高めで気合いを入れる。
「グルゥ! (おおー!)」
「がうがう!」
俺に続いて2人もそう声を上げる。
そして、そのままの勢いで俺たちは山に足を踏み入れた。
山に入ってすぐに俺とアスラにはおなじみのモンスターであるロックリザードが1体現れる。
「がう」
ロックリザードを見つけたヘスティアはアスラの頭から飛び立ち俺の前に移動した。
どうやらヘスティアはやる気満々なようだ。
試しに1人でやらしてみるか。
「ヘスティア、あいつにファイアーブレスだ!」
「がう」
ヘスティアは大きく息を吸い――
「がああああああああああ!!」
吐いた。
ヘスティアの口から蒼い火が吐き出され、その火がロックリザードを覆う。
蒼い火の中でロックリザードのHPが消し飛び、その姿が消える。
そして火が消えると、そこにはドロップアイテムだけが残った。
「がう!」
ヘスティアは嬉しそうに鳴くとキラキラした目で俺を見る。
……これは褒めて欲しいんだよな?
「よくやったぞ」
俺はそうヘスティアを褒めて頭を撫でてやる。
「がうがう」
すると、ヘスティアは嬉しそうに手足をバタバタさせてからアスラの頭の上に戻った。
やっぱりヘスティアの火力高え。
今のレベルでロックリザードが一撃だもんなぁ。
てか、俺のサポート要らないじゃん。
まぁいいけど。
ロックリザードも最初は強敵感があったのに今じゃもう慣れて完全にザコモンスターだ。
哀れロックリザード。
と、ヘスティアに消し飛ばされたロックリザードが立っていた場所を見ながらそう思った。
「……ん?」
よく見ると、あの残ったドロップアイテムは初めて見るな。
近付いてよく見る。
「これは……肉か?」
そこに落ちていたのは肉だった。
……ああ!
食材アイテムか!
そこで俺はアップデート内容を思い出す。
確か食材アイテムのドロップ率が上がったんだったよな。
なるほど。
早速その効果が出た訳か。
「グルゥ? (どうしたの?)」
ドロップアイテムの肉を見ているとアスラとヘスティアが近付いてくる。
そして地面に落ちている肉を見た。
「グルゥ? (肉?)」
「肉だなぁ」
まぁ肉なのはいいとして。
問題はこの肉の値段が高いのか低いのかどうかだ。
俺のこの山にきた目的の一つが金稼ぎ。
もしこのドロップした肉が他のロックリザードのドロップアイテムである鱗より値段が低いのであればまずい。
今までロックリザードからは鱗しかドロップしなかったから、それで計算して計画している。
しかし、値段が低い場合はその計画が崩れてしまう。
俺としてはこの肉が高く売れることを祈るばかりだ。
「でもなぁ……」
見た感じは普通の肉だし……なによりこの肉、地面に直置きである。
……売れそうにないな。
「はぁ……」
とりあえず、アイテムボックスに仕舞うか。
俺は肉を掴んでアイテムボックスに仕舞った。
その時の肉を掴んだ感触がべちょっとしていて少し気分が落ちた。
「一応、アイテム名を確認しとこうか」
アイテムボックスのリストを開いて今の肉のアイテム名を確認。
名前は【新鮮なロックリザードの肉】。
「新鮮な?」
地面に直置きの肉が新鮮?
いや、そうじゃなくて……RDWって鮮度があるの?
ロックリザードの鱗にはなかったから食材アイテムだけなんだろうけど、鮮度があるのか。
知らなかったな。
てことは他のゲームのように時間経過で鮮度が落ちるはず……多分。
新鮮な方が値段はそりゃ高くなるだろうし、早く持って帰った方が良い。
なら今日中にウスルに帰るか。
……本当はアイテムボックスが一杯になるまで街に帰るつもりはなかったんだけどなぁ。
どんどん俺の計画が……。
こうなったら出来るだけロックリザードを狩ってやる!
山の上の方ではロックリザードが多く出てくるから目指すは上!
「アスラ、ヘスティア! いくぞ!」
「グルゥ(主人、なんか張り切ってるね)」
「がう?」
俺は走り出した。
しばらくしてバテたので結局歩く。
「ハァ……ハァ……くそぅ……疲労感リアル過ぎるだろ」
まぁ現実じゃ登りの山道を数分も走ってられないだろうし、まだましか。
「グルゥ? (主人、大丈夫?)」
「がう?」
2人に心配そうに声を掛けられた。
「大丈夫大丈夫」
こんなことで心配させたくないんだけどなぁ。
「グルゥ(よかった)」
「がう」
まぁでも2人の安心した顔を見るだけで疲れなんて吹き飛ぶわ。
「キュエエ!」
そんなことをしているとロックリザードが威嚇をしながら現れる。
「やれ、ヘスティア」
「がう! がああああああああ!」
ロックリザードはヘスティアのファイアーブレスによって手早く倒される。
そして再び現る地面に直置きの肉。
「また肉かよ!」
「グルゥ(肉だね)」
掴んでアイテムボックスに突っ込む。
鮮度のある訳だし、アイテム名も確認しておこうか。
リストから確認。
名前は【ロックリザードの肉】。
あれ?
新鮮じゃないぞ?
倒してドロップしたばかりなのに新鮮じゃない。
「普通の肉もドロップするのか」
ただでさえ値段の分からない新鮮なロックリザードの肉なのに、それよりも間違いなく安い普通の肉は勘弁してくれ。
これが高かったら問題ないんだけど……はぁ。
不安だ。
「まぁ今は出来るだけロックリザードを倒してドロップアイテムを集めるしかないか」
それから山の上を目指しながら現れるロックリザードを時にはアスラが翼盾で粉砕し、時にはヘスティアがファイアーブレスで燃やして進む。
ちなみにドロップしたアイテムは普通のロックリザードの肉とロックリザードの鱗。
新鮮なロックリザードの肉は最初に出たもののみ。
ドロップ率悪くない?
俺の運がないだけか?
そうして俺たちは同時に複数のロックリザードが現れる高さまでやってきた。
やってきたのだが……。
「……おかしい」
「グルゥ(確かに)」
「がう?」
ここで経験を積んだ俺とアスラは分かるがヘスティアは分かっていないみたいだ。
「いくらなんでもロックリザードの数が少な過ぎる」
「グルゥ(うん。 前はもっと出てきたよね)」
そう。
山の上の方に来てから前と比べてロックリザードの数が明らかに減っている。
ここまできて複数体のロックリザードと2度しか戦闘をしていない。
前までなら何十回も戦っていたのに。
広い場所に出てもロックリザードは居ない。
何が起こっている?
「嫌な予感がする。 2人とも注意しろ」
「グルゥ(うん)」
「がう」
一瞬、山を下りた方がいい気がしたが、目的もある。
下で1体ずつ狩ってたら時間がかかり過ぎる。
それに原因も気になるので、俺は進むことに決めた。
警戒しながら俺たちは山道を進む。
「あれは……」
道の先に複数のロックリザードをやっと発見した。
しかし、そのロックリザードたちの様子がおかしい。
ロックリザードたちは俺たちが居る場所とは反対の道の先を見ている。
何を見ているんだ?
ここからじゃ岩壁に隠れて先が見えない。
気になった俺は慎重に頭を出してロックリザードたちが見ている道の先を見た。
そこには1人の男が立っていた。
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