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第28話 忘れていた時魔法

やっぱり4月は忙しいですね。

第28話 忘れていた時魔法




「……朝……か」


 厩舎の中に入ってくる暖かな日差しと何処からか聞こえてくる鳥の鳴き声を感じながら俺は目を覚ました。

 気持ちの良い目覚めだ。

 時間は……6時だな。

 ちゃんと昨日設定したアラーム通りの時間だ。


「がう……」

「うん?」


 時間を確認していると俺のお腹の上から可愛らしい声が聞こえてきた。

 そういえば、さっきからお腹の上に重さを感じる。

 その重さと可愛らしい声の正体に目を向ければ、そこにはヘスティアが寝息を立てて俺のお腹にくっ付いていた。


「ふふっ」


 その可愛らしいヘスティアの姿に口元が緩むのを感じながら落ちないように注意してゆっくりと身体を起こす。

 すると、隣で眠っていた筈のアスラが首をムクリと上げてこちらを見る。

 起こしてしまったか?


「グルゥ(主人おはよう)」

「おはようアスラ。 ごめん、起こしちゃったか?」

「グルゥ(ううん。 少し前から起きてた)」

「そっか……」


 そのアスラの言葉が本当のことなのか、俺を気遣ったのかは分からない。

 でも、アスラは見たところ眠そうではないし良かった。

 そこでアスラは未だ俺のお腹にくっ付いているヘスティアを見る。


「グルゥ? (起こす?)」

「そうだな。 そろそろ起こした方がいいんだけど」


 こうして気持ち良さそうに寝ているヘスティアを見ると起こすのが可哀想に思えてしまう。

 そうやって少しだけ起こすか迷っているとアスラが鼻先でヘスティアを突いた。


「がう……」


 すると、ヘスティアは俺のお腹から離れて今度はアスラの頭の上にくっ付いてた。


「ぷっ! ヘスティアは本当にそこが好きなんだな」

「グルゥ(ヘスティアまだ寝ているよ)」


 寝ていても自分の好きな場所が分かるんだな。

 さて、ヘスティアには悪いけど金を稼がなきゃいけないしヘスティア自身のレベルも上げたいから早く山に行こう。


「アスラ、悪いけどヘスティアを頼むな。 俺は鍵を宿の人に返してくるよ」

「グルゥ(分かった)」


 俺はアスラの返事を聞いてから厩舎の外に出た。


「ううーん!」


 外に出て暖かな日差しを全身で感じながら身体を伸ばす。

 気持ち良い。

 十分身体を伸ばした後、俺は昨日入ってきた道を戻って街の通りに出る。

 通りには朝にもかかわらず多くのNPCたちが行き交っていた。

 やっぱりNPC一人一人にちゃんとした役割――というか生活があるんだろうな。

 そんなことを思いながら俺は隣の宿の扉を開けて中に入る。

 宿の中では昨日と同じ青年がカウンターに立っていた。

 とりあえず挨拶だ。


「おはようございます」

「いらっしゃいませ……あれ?」


 青年は俺を見て不思議そうな顔をする。

 まぁそりゃ昨日部屋に泊まったと思っていた客が外から入って来たら変に思うよな。


「お客さん何で外から?」

「あー……実は昨日は厩舎でドラゴンたちと一緒に寝てしまいましてね」

「え? は、はぁ?」

「まぁそういう訳で部屋は使っていないので……あ、鍵を返しますね」


 未だによく分かっていなさそうな青年を放置して俺はカウンターの上に部屋の鍵を置く。


「じゃあまた泊まる時に来ます。 では」

「え? あ、はい!」


 青年の元気な声を聞きながら宿を出る。

 そしてそのまま厩舎の方に戻ると、厩舎の外にアスラが立っていた。

 もちろんヘスティアはアスラの頭の上だ。

 どうやらヘスティアはちゃんと起きている。


「がう!」

「おっと」


 俺に気が付いたヘスティアが飛び付いてきた。

 元気が良いな。

 ヘスティアは寝起きが良いらしい。


「がうがう!」

「お?」


 今、ヘスティアから微弱ながら感情を感じた。

 意識してみると俺とヘスティアに絆のような何かを昨日よりも強く感じる。

 どうやら一緒に寝たことで絆が深まったようだ。

 これは嬉しいぞ!


「ヘスティアと昨日よりも仲良くなったぞ!」

「がう? ……がう!」


 ヘスティアも俺との繋がりを強く感じて理解したらしい。


「グルゥ! (おめでとう!)」


 俺とヘスティアが喜んでいるとアスラも嬉しそうに俺たちを祝福してくれた。


「ありがとう!」

「がう!」

「よーしっ! この勢いのまま山に行くぞ! ロックリザードを倒して金とヘスティアの経験値稼ぎだ!」

「グルゥ! (おおー!)」

「がうがう!」


 俺たちは元気良く街の通りに出て、そのまま北門に向かう。

 そして特に問題も起きずに北門を抜けて街道に出た。

 それからしばらくの間北の山を目指して歩いていると、ふと街道脇に生えていた草が風に揺れているのが目に入る。


「……あ!」


 風に揺れている草を見て俺はチュートリアルの時のクロックアップを思い出した。

 そういえば、俺は時に関する魔法も使えるんだった!

 完全に忘れてたわ。

 今まで時空間魔法の空間魔法部分しか活用してなかったな。


「グルゥ? (どうしたの?)」

「がう?」


 声を上げて立ち止まった俺をアスラたちが不思議そうに見ている。


「あ、ちょっと待っててくれ」

「グルゥ(分かった)」


 うーん。

 やっぱり時関係の魔法も今出来ることを確認して練習した方が良いよな?

 闘技大会はまだ先だしレベルも高いとはいえ、何が起きるか分からないし手札は多い方が良い。

 よしっ。

 まだ時間もあるし、ここで確認と練習をしちゃうか!


「ちょっと悪いんだけど、ここで魔法の練習をしてもいいか?」

「グルゥ(うん)」

「がう」


 2人とも了承してくれた。

 じゃあやっちまおう。

 とりあえず、やるのならやっぱりクロックアップかな?

 でも、クロックアップって自分じゃどのくらい速く動いているのか分かりづらいんだよなぁ。

 うーむ。

 アスラに尻尾でも動かしてもらってそれで判断するか。


「アスラ、頼みがあるんだけどいいかな?」

「グルゥ(いいよ)」

「ありがとう。 尻尾を一定の速さで左右に振ってくれるか?」

「グルゥ(分かった)」


 アスラは早速尻尾を左右に振りだした。

 うん、これなら大丈夫そう。


「グルゥ? (どう?)」

「そのまま頼む」

「グルゥ(うん)」


 よし、まずはチュートリアルでやった時と同じ感じでクロックアップをやってみよう。

 あの時は確か1.2倍だったよな。

 MPを確認しながらあの時と同じイメージをして――

 

「クロックアップ!」


 次の瞬間、振られていたアスラの尻尾の動きが遅くなる。

 知覚速度も問題ない。

 よし、成功だ!

 試しに身体を動かしてみる。

 ……自分じゃ分からないな。

 MPは……減ってはいるが、今の俺のMP量なら十分。

 とりあえず、これくらいでいいだろう。

 俺は魔法を解除した。

 すると、アスラの尻尾の速度が元に戻る。


「どう? 俺は少し速く動けてたか?」

「グルゥ(うーん、分からない)」


 あ、そういえば比較する為の元の速さを見せてないし分からないよな。


「悪い。 じゃあ今さっきの速さを覚えていてくれるか?」

「グルゥ(分かった)」


 よし、次は思い切って2倍の速さで行くぞ!

 ちゃんとイメージすれば出来る筈だ。

 イメージ……2倍の速度……いく――


「クロックアップ!」


 再び周囲の速度が変わる。

 アスラの尻尾はさっきよりもかなり遅くなっているな。

 さっきと同じ速さで少し動いてからMP確認。

 MPは……さっきよりもかなり早く消費しているが、これなら問題ない。

 クロックアップを解除する。


「アスラ、どうだった?」

「グルゥ(さっきよりも速く動けてたよ)」

「そうか!」


 どうやら周囲から見ても速く動けているようだ。

 多分、2倍の速さは成功だな。

 よし、このまま更に倍の4倍にチャレンジするか!

 さっきよりもしっかりとイメージをして……魔力を込め、4倍――


「クロックアップ!」


 世界が変わった。

 周囲の物の速度がまるで止まったように感じる……とは言い過ぎか。

 アスラの尻尾は確かに動いているが、その動きは遅い。

 その場で2倍の時と同じ動きをしてからMPを確認。

 MP消費はどのぐらいだろう……げっ。

 やっぱり4倍はMPの消費が早いな。

 でも、これなら数分は持ちそうだ。

 クロックアップ解除。


「どうだった?」

「グルゥ! (すっごい速く動けてたよ! すごいね!)」

「がうがう!」

「よし!」


 4倍は成功だな!

 これ以上の速度は今は必要ないと思うしクロックアップは終わりだ。

 ……まぁちょっと試してみたいが。

 それよりも次は周囲の速度を変える魔法を試してみよう。

 チュートリアルの時はチュートリアルAIに難しいと言われてやってないんだよな。

 でも、今なら出来る筈。

 とりあえず、今も動いているアスラの尻尾に時間を遅くする魔法を使ってみようか。


「アスラ、今から尻尾に動きを遅くする魔法を使ってみるから抵抗しないでくれるか?」

「グルゥ(うん)」


 えーっと、周囲の動きを遅くする魔法だから名前はタイムスロウでいいか。

 ……我ながら適当な名前だな。

 ま、まぁイメージ出来ればなんでもいいんだし!

 じゃあいくぞ!

 尻尾の時間を遅く……イメージして魔力を込めて……2倍くらい――


「タイムスロウ!」


 魔法を発動した次の瞬間からアスラの尻尾の動きが目に見えて遅くなる。


「おお! 成功だ!」

「グルゥ! (すごい!)」

「がう?」


 ヘスティアはよく分かってなさそう。

 MP消費は……4倍のクロックアップ程ではないけど、結構消費するな。


「アスラ、試しに尻尾を速く動かそうとしたりして抵抗しようとしてくれるか?」

「グルゥ(分かった)」


 アスラが了承した次の瞬間――


 パキン!


 音を立てて魔法が強制的に解除された。

 やっぱり抵抗しようとしたアスラには効かないか。


「グルゥ……(ごめん……)」


 しゅんとしてしまうアスラ。


「あ、いや。 これで良かったんだ。 落ち込むことはないぞ?」

「グルゥ? (本当?)」

「ああ」

「グルゥ(良かった)」


 これで時関係の魔法の確認と練習は終わりでいいかな。


「よし、じゃあ山に行こうか」

「グルゥ(うん)」

「がう!」


 今の時間は7時くらいか。

 8時過ぎには着けそうだ。

 俺たちは再び山に向かって歩き出した。

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