第26話 空の宝珠(上級)の価値
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第26話 空の宝珠(上級)の価値
なんか2人ともファイアードラゴンの皮を見せた時よりも驚いていないか?
素材ガチャで虹演出だったから当たりだとは思っていたけど、そんなに空の宝珠(上級)って希少な物なのかね?
とりあえず、口を大きく開けたまま固まっている2人に声を掛けて正気に戻そう。
このままだとずっと固まってそうだ。
「あの、ゴラさんアラさん?」
「……はっ。 そ、それをよく見せてちょうだい!」
「え、ええ」
凄い勢いのアラさんに言われるがまま空の宝珠(上級)を差し出す。
すると、アラさんは空の宝珠(上級)を手に取り、様々な角度から観察する。
その目がやばい。
こんなアラさん初めて見たぞ。
「……お、おい。 どうなんだ?」
アラさんの後ろで気が付いたゴラさんがそわそわしながらそう声を掛ける。
数秒後、アラさんは「ふぅ」と息を吐くと真剣な表情で口を開く。
「間違いないわ。 これは上級の空の宝珠」
「本当かよ……」
「昔、一度だけ見た上級と同じ物よ」
そのアラさんの言葉にゴラさんは衝撃を受けたようだ。
てか、アラさんは空の宝珠(上級)を見たことがあるみたい。
でも、たった一度だけってことは上級がそれだけ希少だってことか。
「あの、上級ってそんなに希少な物なんですか?」
「はぁ……やっぱり知らないで持ってたのね」
「すいません……」
アラさんの呆れられたような言葉を受けて謝る。
「あのね、どうやってコレを手に入れたのか知らないし聞かないけど、物の価値を知らないで持っているってのは危険なことなのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。 ファイアードラゴンの皮は希少だって多少分かっていたようだから良いけれど、コレだって希少なのよ? いえ、人によってはファイアードラゴンの皮よりも空の宝珠(上級)の方が何倍も希少だと感じるでしょうね。 もし価値を知らずにドラゴンさんが外でコレを出したら大変なことになってたわ」
ええ!?
マジで?
ファイアードラゴンの皮よりも空の宝珠(上級)って希少なのか。
「コレの存在を力のある誰かに知られたら何がなんでも奪いにくるでしょうね……力尽くで」
「力のある誰かって」
「そうね……貴族……いえ、国によっては全力で兵を挙げて奪いにくるわ」
「そ、そんなまさか」
「残念ながら事実よ」
マジで国が奪いにくるレベルの物なのかよ。
全然知らなかった。
もしアラさんの言う通り外でコレを出してしまったら……。
確かに価値を知らずに持っているのは危険だった。
「どうすれば良いんでしょうか?」
唾を飲んでアラさんにどうすれば良いか聞く。
「簡単なことよ」
「え?」
しかし、アラさんは真剣な表情を崩して笑顔になる。
その変わりようについ間抜けな声をあげてしまう。
「コレを使っちゃえば良いの」
「使う?」
「ええ。 使っちゃえば殆どの人には上級が使われたって分からないし、分かったところで元には戻せないもの」
「なるほど!」
「まぁ使った装備の価値は上がるけど、どっちにしろ装備は貴重な物になるんだからしょうがないわ」
確かにアラさんの言う通りだ。
どうやって使うかはよく知らないけど、使ってしまえば無くなる訳だから手の出しようもない。
装備の価値が上がるのは、どっちにしろファイアードラゴンの皮を使うんだからしょうがないよな。
「じゃあコレは返しておくわね」
そう言って空の宝珠(上級)をアラさんは返してきた。
「あの、使うなら今すぐの方が良いのではないですか?」
「空の宝珠を使った効果の付与って装備が出来上がってからなのよ。 だから使う最後の時までドラゴンさんが持っていてちょうだい。 ドラゴンさんの時空間魔法なら安全に保管出来るでしょ」
「なるほど、確かにそうですね。 分かりました。 では、俺が持ってますね」
俺は空の宝珠(上級)を丁寧にアイテムボックスに仕舞った。
これで他の誰にもバレないし奪われないと思う……多分。
「話は終わったようだな」
「あ、はい」
そこで黙っていたゴラさんが声を掛けてきた。
「じゃあファイアードラゴンの皮を使ったローブの製作は俺に任せて良いんだな?」
「お願いします」
「そうかそうか!」
ゴラさんは嬉しそうに何度も頷く。
何で嬉しそうなんだろう?
不思議に思っているとアラさんが笑う。
「この人、今までにない大仕事が出来て嬉しいのよ。 あ、もちろん私もよ」
「へぇー」
「楽しみだわ! これが製作出来れば間違いなく今までで最高の装備が完成するわ!」
はぁー。
やっぱり凄い装備が出来るんだ。
俺も楽しみ。
「ま、そういうこった。 おめぇは俺に任せてドーンと待っていろ」
「はい!」
頼もしい。
やっぱりゴラさんたちに任せて正解だな。
「……それで製作費なんだがな」
頼もしい感じから一転して言いづらそうにゴラさんが口を開く。
製作費?
そういえば忘れてた。
凄い装備を製作するんだし結構かかりそうだな。
今の所持金は約100万R。
足りるかな……足りるよな?
いや、でも腕輪があの値段だったからなぁ。
どうなんだ?
「いくら……ですか?」
「……全部ひっくるめて1000万Rってとこだな」
「えぇ!?」
い、1000万R!?
マジかよ……今の所持金の10倍か。
「払えそうか? なんならローンでも良いが」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
えっと、北の山のロックリザードで稼ぐとして、ロックリザードのドロップアイテムが一つ25,000Rだから……400個で1000万Rか。
それで100万R分の40個引いて360個。
10日余裕があるとして1日36個。
36個なら集められそうだな。
「大丈夫だと思います」
「そうか。 おめぇがそう言うなら大丈夫なんだろ」
「はい。 任せてください」
「じゃあ俺は早速動き出す」
「お願いします」
そこで出したままだったファイアードラゴンの皮を思い出す。
コレも希少だし俺がアイテムボックスに仕舞っておいた方が良いのか?
「コレも俺が持っていた方が良いですかね?」
「確かにコレも希少だがなきゃ作業ができん。 コレは責任を持って俺が持っておく」
「分かりました」
「おう! おめぇはとっとと稼いできな!」
「ははは。 分かりましたよ。 では、ゴラさんアラさん、お二人とも改めてお願いしますね」
「おう!」
「任せてちょうだい」
俺は2人に見送られて店を出た。
「グルゥ! (主人!)」
店を出るとすぐにアスラが気が付いて近付いてくる。
その姿が相変わらず可愛くて自然と笑ってしまう。
「ただいま」
「グルゥ(おかえり)」
「ヘスティア、良い子にしてたか?」
「がう!」
アスラの頭の上でヘスティアは元気良く頷く。
どうやら2人とも大丈夫だったみたいだな。
「お?」
そう思っているとアスラがいつもの頭スリスリをやってこようとする。
しかし、頭の上に乗っていたヘスティアが落ちそうになって抗議の声を上げる。
「がうがう!」
「グルゥ(ごめん)」
「ははは。 ヘスティア、アスラを許してやってくれ」
「がう」
ヘスティアはしょうがないなといった感じに首を振った。
「グルゥ(ありがとう)」
それにしても2人で居たからアスラが寂しくないと思ったんだが、それでも頭スリスリはやりたいんだな。
それとも寂しかったのか?
「寂しかったか?」
「グルゥ(平気)」
「がう」
2人とも寂しくはなかったようだ。
それなら良かった。
「そうか。 じゃあ次に行こう」
「グルゥ(分かった)」
「がうがう!」
とりあえず、次は冒険者ギルドで聞いた宿屋だな。
確か名前は止まり木亭だったか。
そこで1日だけ部屋を取って泊まってみよう。
居心地が良ければ継続かな。
まぁしばらくは北の山との往復で野宿することもあるだろう。
そう考えながら俺は宿屋に向けて歩き出す。




