第24話 寂しがり屋なアスラと変人受付嬢
今回短くて申し訳ない。
更新速度上げたい……。
第24話 寂しがり屋なアスラと変人受付嬢
「とりあえず、闘技大会について大体説明したけど分かったか?」
「グルゥ(分かった)」
「がう」
どうやらアスラは理解してくれたようだ。
ヘスティアは……どうだろう?
一応返事はしているが、理解出来ているのか?
「ヘスティアは本当に分かっているのか?」
「がうがう!」
ヘスティアがアスラの頭の上で首を縦に振って鳴く。
心配だが、まぁ本人が頷いているからいいか。
そう思っていると冒険者ギルドが見えてくる。
「っと、着いたな」
「グルゥ(到着)」
冒険者ギルドの前にたどり着く。
これでウスルの冒険者ギルドに来るのも3度目だな。
「がう?」
ヘスティアが不思議そうな顔で冒険者ギルドの建物を見ている。
そういえばヘスティアは冒険者ギルドに来るのが初めてだったな。
冒険者ギルドの建物は他の建物よりも少し立派だから不思議に思ったのかね?
「ヘスティア。 ここが冒険者ギルドだ」
「がう」
背中の翼をパタパタと羽ばたかせてヘスティアがアスラの頭の上から飛び立ち、扉の前に移動した。
どうやら興味津々らしい。
じゃあ早速、中に入るか。
そこで扉を見てあることに気が付く。
「あれ? これって――」
もしかして、アスラってこの扉をくぐれないじゃないか?
冒険者ギルドの扉はそれなりに大きいので前は普通に中に入ることが出来た。
しかし、今のアスラは進化して体が大きくなり翼盾まで生えている。
いくら扉が大きくても無理なのでは?
俺はアスラと扉を見比べる。
……うん、無理だな。
「……アスラ」
「グルゥ? (なに?)」
「扉、くぐれないよな?」
「グルゥ(あっ)」
どうやらアスラも気が付いたようだ。
アスラの表情が寂しそうなものに変わる。
その表情を見て胸が痛くなる。
冒険者ギルドなんて放っておきたくなるが、そうはいかない。
ドロップアイテムを売らなくてはならないし、宿屋の情報も欲しい。
……それにゴラさんの店では外で待ってもらう予定だったし、これからもそういうことがあるだろう。
だから、ここで躊躇ってはいられない。
乗り越えなくてはならない。
「アスラ、ここで待っていてくれるか?」
「グルゥ……(うん……)」
「良い子だ」
アスラの頭を撫でると寂しさが和らいだのか表情が変わった。
「よし、行くぞヘスティア」
「がう!」
ヘスティアは変わらず冒険者ギルドに興味津々みたいで、アスラの変化に気が付いていないっぽい。
アスラは寂しがりなところがあるけど、ヘスティアは……マイペースか?
そんなことを思いながらドアノブに手を掛ける。
「出来るだけ早く戻ってくるからな」
「グルゥ(待ってる)」
その声を背に受けて俺とヘスティアは冒険者ギルドに入った。
相変わらず冒険者から視線が集まるが気にせずに受付に進む。
だが、今日は受付には何人かの冒険者が並んでいた。
初めて冒険者が受付に並んでいるのを見たな。
てっきり今日もすぐに用事を済ませられると思った。
これは少し時間がかかりそうだな……すまんアスラ。
「がう?」
「ほら、落ち着け」
周りを興味深そうに見ていて、どこかに行きそうなヘスティアを抱き寄せて列の最後尾に並ぶ。
それから3分程並んでいると列が進んだ。
これならあと10分もしないで俺の番がくるか。
「がう」
「もう少しだ」
その考えの通りに10分もしないで俺の番がきた。
受付に居たのはいつもの受付嬢だ。
他の受付嬢は居ないのか?
「あ、今他の受付嬢は居ないのかって思いましたね?」
「……いや、思ってないです」
何故バレた?
この受付嬢、勘が鋭いのか?
「ちなみに他にも受付嬢は居ます」
「はぁ?」
別に聞いていないんだが。
そこで受付嬢は俺の腕の中のヘスティアを見る。
「……新しいドラゴンですか?」
「はい。 ヘスティアです」
「がう!」
ヘスティアが鳴くが受付嬢は動じない。
相変わらず、この受付嬢はドラゴンに驚かないな。
なんで空間魔法には驚いたんだろうか。
「もしかして山で目撃されたドラゴンですか?」
「いえ、関係はありますけど別のドラゴンです」
「そうですか。 相変わらず物好きな人です」
「ドラゴンが好きなんで」
「はぁ」
受付嬢は溜め息を吐いた。
なんか呆れられてる?
「それで今日はどんなご用でしょうか? まさかそのドラゴンを見せに来たのではないでしょうね?」
「違いますよ。 ドロップアイテムの売却です」
ヘスティアを見せにくる為に冒険者ギルドに来ないだろ。
「いつものですね。 では、カウンターに出してください」
「はい。 ヘスティア、ちょっと離すけど何処かに勝手に行くなよ?」
「がう!」
俺はヘスティアを離してアイテムボックスからロックリザードの鱗を全部カウンターに出す。
あと使用した回復薬の小瓶も出して置く。
ガチャで出た素材はゴラさんの所に持っていって調べてもらえばいいし出さなくていいだろ。
「またロックリザードですか」
「駄目ですか?」
「いえ、そんなことはないですよ」
そう言いながら受付嬢がロックリザードの鱗の数を数える。
そういえば、大量に売って値段が下がったりするのかね?
聞いてみるか。
「ロックリザードの鱗を売りすぎて値段が下がったりします?」
「もちろん下がります。 ですが、このくらいの数なら問題ありません。 値段が下がるのは短期間に何千何万という数を売った時ですね。 なので、値下がりについては考えなくていいです」
「そうなんですか」
それならこれからもロックリザードを狩って金稼ぎ出来るな。
「はい、ロックリザードの鱗36個売却で900,000R、小瓶2個200R、合計900,200Rですね。 少々お待ちください」
受付嬢がロックリザードの鱗と小瓶を奥に運んでから金をカウンターに運んでくる。
俺はその金を受け取る。
これで所持金は1,020,300Rだ。
これだけあればファイアードラゴンの皮を使った装備の製作費は足りるだろう……多分。
「これでご用は全てですか?」
あ、宿屋のことを聞かなくては。
「あと宿屋のことについて聞きたいんですけど」
「宿屋ですか?」
受付嬢が不思議そうな顔で聞き返してくる。
「はい。 ドラゴンたちが泊まれる厩舎がある所を紹介して欲しいんです」
「今まではどうしていたんですか?」
「今までは……野宿的な?」
「はぁ?」
受付嬢がジト目で俺を見る。
そりゃ変に思うか。
俺だってそんなこと言われたら、なんだこいつって思うわ。
「……まぁいいですけど」
いいのか!?
「事情は人それぞれありますでしょうしね」
「ありがとうございます」
この人ちょっと変だけど良い人だよな。
まぁ変さは俺も人のこと言えないけど。
「モンスターが泊まれる宿でおすすめですと……止まり木亭ですね。 場所は以前紹介したゴラの武具よりも先になります」
止まり木亭な。
ゴラさんの所に行った後に行くか。
「分かりました。 後で行ってみます。 ありがとうございました」
「はい。 またのお越しをお待ちしております」
受付嬢はそう言って綺麗にお辞儀した。
「ヘスティア。 行くぞ」
「がう!」
ヘスティアを呼んで腕に抱いてから冒険者ギルドを後にする。
「グルゥ! (おかえり!)」
冒険者ギルドを出るとすぐにアスラが近寄ってくる。
なんだか、その姿が大きな犬みたいに見えて笑いそうになってしまうのを我慢して片手で頭を撫でてやる。
「ただいま。 大丈夫だったか?」
「グルゥ(大丈夫)」
「そうか」
アスラの頭を撫で終わるとヘスティアが飛び立って定位置に戻る。
「がう!」
「お前は本当にアスラの頭の上が好きだな」
「がうがう!」
「グルゥ(好きだって)」
まぁアスラが良いならいいさ。
「よし、次はゴラさんの所に行くぞ」
俺たちは歩き出した。




