第22話 第1回運営イベント情報と課金
遅くなってすみません。
第22話 第1回運営イベント情報と課金
「……おっと、いつまでもアスラたちを眺めていてもしょうがない」
ここに来た目的を果たさないと。
俺はメニューからお知らせを開く。
お知らせには幾つもの情報が載っている。
「ふむ……」
上から順番に見ていこう。
まずは運営イベントの開催決定か。
ゲーム雑誌に書いてあった通りだな。
気になる内容は……【第1回 RDW闘技大会】。
「おお! 闘技大会か!」
最初のイベントが闘技大会とは……運営分かってるな!
VRMMO物の最初のイベントといえば昔から闘技大会と決まっている……多分。
少なくとも今まで俺が読んできたVRMMO小説や見てきたアニメではそうだった。
VRMMOに憧れてきた俺としては最高のイベントだ!
このイベントでカッコ良く活躍したり、優勝なんかしちゃったら……。
「考えるだけで、テンション上がってくるなぁ」
今の俺のレベルで更にアスラたちも居れば優勝も夢ではないだろう。
今のところ掲示板などで俺は有名ではないから、突然現れて優勝を掻っ攫って行ったら色々な所で話題になる筈。
そんでもって俺に二つ名とか付いちゃったりして……。
「ふふふ」
おっと、妄想で笑っている場合ではない。
闘技大会の詳細を確認しよう。
えーっと、イベント開催日は8月5日。
今日は……確か2日だったよな?
なんかRDWに居ると感覚が狂うな。
イベント開催場所はイベント専用サーバー内の闘技場。
闘技場へはイベント開催中にどこの街からでも移動出来るらしい。
闘技場でのイベント観戦は無料。
観戦チケットとかは要らないようだ。
ただ、オオプ商店で数量限定で販売される【VIPチケット】を購入すると闘技場のVIPルームでイベントが観戦出来る。
VIPルームは個室で1枚あればパーティーメンバーやフレンド、使役モンスターと使えるらしい。
ちなみに1枚100万円で10枚販売される。
高え!
「でも、アスラとヘスティアと一緒にイベントを観戦出来るのは良いな。 一般席では大きな使役モンスターは連れていけないみたいだし」
これは買いだな。
流石に100万円のチケット10枚がすぐに売り切れたりしないだろうし、お知らせを全部見てから買おう。
それで闘技大会の内容だが、ルールは簡単。
闘技場の舞台の上で対戦者と戦ってHPが0になったり、舞台の上から落ちたら負け。
イベント戦でHPが0になっても死なず、デスペナは無し。
そこら辺の心配はないようだ。
そして闘技大会には、どうやら3部門あるらしい。
【個人部門】に【パーティー部門】、それに【モンスター部門】。
個人部門は自分1人でのみ出場出来る。
使役モンスターも禁止。
「マジか。 個人部門、使役モンスター禁止なのか。 大丈夫かなぁ」
まぁなんとかなるか。
次にパーティー部門。
これは1PT同士で戦う部門で使役モンスターも大丈夫なようだ。
俺はRDWに知り合いも居ないし出るならアスラとヘスティアの3人でだな。
最後にモンスター部門。
モンスター部門はその名の通り、使役モンスター同士が戦う部門で、出れる使役モンスターはプレイヤー1人につき1体。
なるほど。
個人部門で出れない代わりにこのモンスター部門があるのか。
「これはアスラに出てもらおうかな。 ヘスティアよりアスラの方が体も大きいしインパクトはあるだろう。 それに今はアスラの方が強いしな」
それぞれの部門には予選があって、それを突破したものが本戦に進める。
参加者が多くなる予定なので予選はバトルロイヤル形式らしい。
ちなみに本戦に出場出来た場合は優勝しなくても限定称号を貰えるとか。
それは良いな。
各部門の予選に出場するにはオオプ商店で1枚500円で売っている各部門の【予選出場チケット】を買えばいいようだ。
「ふーん……500円か。 RDWにしては安い値段だな……あれ? まだ続きが書いてある。 なになに……オオプ商店には予選出場チケットの他に本戦から出場出来る【本戦出場チケット】を1枚100万円で各4枚のみ販売……だと……」
マジかよ。
予選に出場せずにいきなり本戦に出れるのか。
これは確実に売れるだろ。
どうなるか分からないバトルロイヤル形式の予選を飛ばして確実に本戦に出れる訳だし。
それに本戦まで自分の手の内を隠せる訳だ。
しかも、本戦出場の限定称号が絶対貰えるってことだろ。
うーん。
俺的には手の内を隠さなくても予選を突破して本戦に出場する自信はある。
……あるが、本戦に確実に出れるなら是非欲しい。
「っと、こうしちゃいられない! すぐにオオプ商店を確認しなくては!」
金ならある!
ならば買うしかない!
俺はお知らせを閉じてオオプ商店を開く。
オオプ商店のトップにはデカデカとイベント限定アイテムの文字が表示されている。
その中には俺の知らない物も表示されているが、おそらくお知らせのまだ読んでないところに書いてあるんだろう。
そんなことよりも本戦チケットだ!
俺はトップのチケットを触る。
すると、画面が切り替わりいくつかのチケットが表示される。
【VIPチケット】残り9枚
【予選出場チケット:個人部門】
【予選出場チケット:パーティー部門】
【予選出場チケット:モンスター部門】
【本戦出場チケット:個人部門】残り2枚
【本戦出場チケット:パーティー部門】残り1枚
【本戦出場チケット:モンスター部門】残り4枚
すぐさまVIPチケットと各部門の本戦出場チケットを購入した。
目の前に4枚のチケットが出現する。
それを右手で掴み取った。
「ふぅ……」
危なかったな。
パーティー部門のチケットが残り1枚しかなかった。
やっぱりパーティー部門の方が1枚でPT全員が出場出来るし割り勘で買えるんだろう。
逆にモンスター部門はまだ4枚残っていたな。
まぁモンスターを使役しているプレイヤーは限られているし、こんなものか。
それにしても本戦出場チケットが売られていることに早く気が付いて良かったな。
絶対後で気が付いて後悔する奴出てくるだろ。
……そういえば他にもオオプ商店に限定アイテムがあったよな。
もしかしたら本戦出場チケットのように数量限定アイテムがあるかもしれないし、お知らせを早く確認しよう。
俺は右手のチケットをアイテムボックスに仕舞おうとする。
「あ!」
そこでアイテムボックスの中が一杯なのに気が付く。
マジックバッグの中も一杯だ。
「あー。 後で拡張しないとな」
時空間魔法のレベルが大幅に上がったし、今なら容量の大きなアイテムボックスを創れるだろう。
……あれ?
もしかして目標の一つだった異次元に使役モンスターを入れておける空間を創るっての出来るか?
やべえ、早く試してみたい。
……いや、今はお知らせだ。
時空間魔法は後で。
俺はチケットを服に挟んだ。
メニューから再びお知らせを開いてさっき読んだ所までスクロールする。
「えーっと……ここか」
イベントの賞品についてだな。
さっきも書いてあったが、本戦出場者には限定称号。
そしてイベント上位者には限定称号と特別なアイテム。
限定称号とアイテムの内容と性能はまだ秘密らしい。
……気になる。
よしっ絶対優勝してやる!
どうやら闘技大会の情報はここまでのようだ。
「闘技大会の情報はここまでか。 でも、まだ限定アイテムがあるよな?」
続きを読もう。
次は……運営イベント開催記念 素材ガチャ?
初の運営イベント開催を記念して武器や防具の素材になるアイテムが出る素材ガチャか。
1,000円ガチャ、10,000円ガチャ、100,000円ガチャの3つの内どれかを5回だけ回せる。
値段が高い方が良いアイテムが出やすいが、どのガチャからも確率が違うだけでどのアイテムも出ると。
ただし、まだゲームが始まったばかりなので、あり得ない程高レベルなアイテムはあまり出ないらしい。
なるほど。
限定アイテムじゃなくて限定ガチャだったか。
「うーん。 どうなんだろ」
金はあるし1番値段が高いガチャを5回回してもいいんだけど、高レベルなアイテムが出ないんじゃなぁ。
いや、一応はあまり出ないだけで何か知らないが良いのが出るのか。
ヨエムに貰ったファイアードラゴンの皮もあるし、ゴラさんの所で装備を作りたいから良い素材は欲しい。
……回すかぁ。
でも、まぁ後だな。
お知らせも続きがあるし、何よりマジックバッグとアイテムボックスに空きが無い。
回すのは冒険者ギルドにアイテムを売ってから……。
「いや、アイテムボックスは目立つような派手な魔法ではないし、ここで容量を拡張しても問題ないか」
ただ、アイテムが消えるとまずいから容量を拡張するにはアイテムボックスの中身を一度全部出さなくちゃいけないんだよなぁ。
面倒だけど、どうせ後で同じことをするんだしな。
お知らせを読んだらやるか。
えーっと、これでイベント関連のお知らせは終わりっぽい。
次はRDWの仕様変更のお知らせか。
まずはモンスターのドロップに関する変更。
今までモンスターから低確率でしかドロップしなかった食材アイテムのドロップ確率を上げたらしい。
確かに今まで食材っぽいアイテムは一つもドロップしなかった。
どんだけ確率低いんだよ。
そういえば、RDWは食事も出来たし【調理師】なんて職業もあったんだよな。
影薄いから忘れてたわ。
今のところ食事をする意味があまり無いから食べようとしなかった。
味覚も再現されているから美味いものは美味いんだろうけど。
「メリットはどれだけ食べても現実で太らないってことくらいか?」
お腹周りが少し気になるおっさんの俺からしたら良いかもだけど、どっちにしろ現実では食べなきゃいけないから変わらない。
食べることが好きな奴からしたら天国か。
次に行こう。
次の仕様変更は使役モンスター関連か。
今までプレイヤーがログアウトしている間、使役モンスターもRDWから消えていたが、今回からプレイヤーがログアウトしても使役モンスターはその場に残るだと?
マジか。
これって俺がログアウトしている間アスラたちをどうすれば――
「ああっ! なるほど。 そういうことか」
今まではアスラたちに気にせずログアウトしていたが、次からはアスラたちを何処かに預けなくてはいけない。
そこで出でくるのがおそらくモンスターギルドと宿屋だ。
確かモンスターギルドではモンスターを預けられるし、厩舎のある宿屋でもモンスターを入れておける筈。
時たま街を歩いていて宿屋を見かけていたが、ログアウトすれば良いんだし、なんで宿屋なんてあるんだろうと今まで思っていたが、こういうことか。
次からは宿のことも考えなきゃいけないんだな。
俺的にはモンスターはみんな連れて行きたいからモンスターギルドよりも宿屋だな。
どこか良い宿屋はないだろうか?
後で冒険者ギルドに行った時に聞いてみるか。
あとの仕様変更は俺には関係なさそうなものだな。
これでお知らせは終わりだ。
じゃあアイテムボックスの容量の拡張をしちゃうか……拡張というより創り直しだけども。
「そういや今の俺なら創り直しじゃなくて普通に拡張出来るかも」
……いや、失敗したら嫌だしもう少し時空間魔法に慣れてからにしよう。
俺は座っていた石から立ち上がって振り向く。
とりあえず、この石の上にアイテムボックスの中身を置いていくか。
HP下級回復薬10個にMP下級回復薬18個。
小瓶が2個でシートとマジックランタン。
「これで全部か」
「兄ちゃん何やってんの?」
「ん? ああ、アルマか」
何時の間にかアルマが1人で俺の背後から石の上に置いたアイテムを覗き込んでいた。
「もしかして、それって回復薬か!?」
アルマが回復薬を指差して言う。
「そうだ。 種類は違うけど全部回復薬だぞ」
「すっげー」
そんなに凄いか?
ただの回復薬なんだけど。
「やっぱり冒険者っていったら回復薬だよな! 兄ちゃん流石だな!」
「そうか?」
「そうだよ! だって俺の父ちゃんが良い冒険者は回復薬を忘れないって言ってたし」
「へー」
アルマの父ちゃん……それは合ってるのか?
「父ちゃんは冒険者なのか?」
「ううん。 父ちゃんは冒険者ギルドの職員だ。 でも、昔はB級冒険者だったんだぜ! すげーだろ?」
「あ、ああ」
B級冒険者?
冒険者にランクなんてあったのか……。
依頼も全然受けないし、そういえば冒険者ギルドの詳しい説明も聞いてなかったな。
「そんで兄ちゃんは回復薬を並べて何してんの?」
「あー、物を仕舞う魔法を使おうとしてるんだよ」
「物を仕舞う魔法?」
アルマは首を傾げる。
まぁアルマは知らないか。
「魔法っていうのは火とか水を出したりするんだろ? 物を仕舞う魔法なんてあるのか?」
「あるんだよ。 まぁ見てろ」
「うん」
まずはアイテムボックスの破壊だ。
この間と同じようにアイテムボックスを破壊するイメージで魔法を使えばいけるだろ。
集中してイメージし、魔力を込める。
「アイテムボックス破壊!」
目の前に黒い穴が現れてビビが入って砕けて消える。
成功だ。
レベルが上がったお陰か以前より簡単に時空間魔法が使える気がする。
これならアイテムボックス作成も簡単に出来るかもな。
「うわっ!」
横でアルマが驚いているが、ちゃっちゃと次に行こう。
今の俺のMPは約24000。
後で異次元の実験をしたいからMPは残しておきたい……が、どうせなら容量の大きなアイテムボックスを創りたい。
MPは半分くらいで、足りなければ後で回復薬を使えばいいか。
「ふぅー」
集中、集中……。
感覚を研ぎ澄ませイメージ。
異空間に自分の魔力で創れるだけの領域を創り、そこにアクセス。
マジックバッグのように入れた物のリスト。
アイテムボックス。
魔力を半分くらい込めて――
「アイテムボックス!」
目の前に黒い点が現れて、やがて穴になる。
よし、成功。
黒い穴に手を突っ込んで、容量は……。
「マジか」
新しいアイテムボックスの容量はなんと200。
残りMPは約12000。
ちゃんと半分か。
時空間魔法のレベルが上がってMP12000使うとこんなに容量の大きいアイテムボックスが創れるんだな。
驚いたわ。
ここから更に破壊せず少しずつ拡張していけば、とんでもなく大きなアイテムボックスが創れそうだ。
期待が高まる。
「な、なぁ兄ちゃん!」
「ん? なんだアルマ?」
「それがアイテムを仕舞う魔法なのか!?」
アルマ、完全に驚いているな。
……ふふ、もっと驚かせてやろう。
「見てろ」
俺は石の上にあるアイテムを次々とアイテムボックスに突っ込んでいく。
更にマジックバッグの中のロックリザードのドロップアイテムも出してはアイテムボックスの中に突っ込む。
その光景をアルマは目を見開き、口を開けて見ていた。
「どうだ?」
全部アイテムボックスに突っ込んだ後、俺はドヤ顔でアルマに声を掛けた。
「……すっげー……すっげー! すっげーよ兄ちゃん!」
「ふふふ」
全身で驚きを表すアルマのリアクションに俺は満足だ。




