第21話 ウスルの子供たち
申し訳ないですが今回も話を分割させてもらいます。
次回は出来るだけ早く更新出来ると思います。
第21話 ウスルの子供たち
「がう!」
ログインして最初に目にしたのはヘスティアがこっちに向かって飛び込んでくる姿だった。
「おっと!」
飛び込んできたヘスティアを俺は両手で抱きしめる。
「待たせたなヘスティア。 寂しかったのか? でも、いきなり飛び込んでくるのは危ないからやめような?」
「がう!」
危ないから一応注意したが分かってるのかね?
まぁ俺だけにやるならいいか。
「グルゥ(おかえり)」
ヘスティアを抱きしめて注意しているとアスラが近付いてきて「おかえり」と言ってくれた。
その言葉は何故だが俺の心にストンと入ってくる。
「ただいま。 アスラも待たせたな」
「グルゥ(待った。 だから撫でて)」
「ははは!」
アスラの可愛いおねだりについ笑ってしまう。
「グルゥ(ダメ?)」
「もちろん構わないさ。 ヘスティアちょっとごめんね」
「がう」
抱きしめているヘスティアを離して、嬉しそうに頭をこっちに近付けるアスラを両手で撫でてやる。
「グルゥ」
アスラは目を細めて気持ち良さそうに鳴く。
「がう!」
それを見て何故かヘスティアもその小さな手でアスラの頭を撫でる。
その光景は俺の心を暖かくしてくれた。
「さて、今はこれで終わりな」
「グルゥ(満足)」
「がうがう!」
どうやら2人とも満足してくれたようだ。
じゃあ早速俺はゲームのアップデート内容を確かめよう。
そうしてメニューからお知らせを開こうとして周囲から注目されていることに気が付いた。
「あー」
流石にこんな道のど真ん中に突っ立って確認するのは邪魔か。
どこかに移動するか。
うーん……何時ものウスルの外のフィールドでも良いんだけど、偶には街の中で確認したい。
この後、冒険者ギルドとゴラさんの店にも行きたいしな。
何処か良い場所は――
「あっ! そういえばウスルにも広場があったな」
「グルゥ(ある。 この間通った)」
アスラも覚えているらしい。
あそこなら座れそうだし、ゆっくりお知らせを確認出来るな。
「がう?」
ヘスティアは分からないのか首を傾げている。
可愛い。
「よし! 広場に行くぞ」
「グルゥ(分かった)」
「がう!」
俺たちは広場に向かってウスルの中を移動する。
「ここか」
広場には5分くらいで着いた。
若者や老人、走り回っている子供などの姿が見える。
意外と人が居るな。
広場の中央には木が一本植えてあって、その周囲をぐるりと綺麗に石が囲っている。
その石は座れそうで、現に老人が1人腰掛けていた。
「あそこに座ろう」
俺は広場のNPCたちに注目されるのを感じながら石に近付いて腰掛けた。
ちょっと硬いけど悪くない。
「じゃあ俺はお知らせを確認するから2人は……うん?」
アスラとヘスティアに適当に待っててと言おうとして、俺は近付いてくるNPCに気が付いた。
それは3人の子供。
小学生くらいの男の子が1人に同い年くらいの女の子が1人。
そしてその女の子よりも幼い女の子が1人、女の子同士で手を繋いでいる。
男の子と幼い女の子は目を輝かせているが、女の子は少し不安そうな顔をしていた。
一体何だろうか?
「ね、ねぇやめようよ」
「街の中に居るんだから大丈夫だよ!」
あー……なるほど。
多分、分かった。
男の子はアスラたちが気になるんだろう。
それで近付いて来ている。
まぁアスラたちはドラゴンだし気持ちは分かる。
俺だってドラゴンが居たら気になってしょうがないしな。
でも、女の子は危険そうだから反対しているけど、男の子が行くから仕方なく付いてきていると。
「なぁなぁ兄ちゃん!」
そう思っていると男の子が話しかけてきた。
いくら気になるからって、周りの大人は見ているだけなのに……この子度胸あるな。
「なんだ?」
「それってドラゴンだよな!」
男の子は目を輝かせ、アスラ指差して言った。
「そうだよ」
「うわぁ! やっぱり! すっげー!」
そう答えてあげると男の子は笑顔で更に目を輝かせてはしゃぐ。
その様子につい俺も笑ってしまう。
「ははは。 大きい方がアスラで小さい方がヘスティアっていうんだ」
「へぇー。 小さいのもドラゴンなのかあ」
「グルゥ(よろしく)」
「がう!」
「2人がよろしくだって」
ヘスティアは何て言っているか分からないけど、多分同じだろう。
「おお! よろしく! てか兄ちゃんドラゴンが言ってること分かるのか!?」
「まあな」
「すっげー! このドラゴンは兄ちゃんのペットか?」
ペットって。
「いや、大事な仲間だよ」
「へぇーなんか良いな、それ。 兄ちゃんって冒険者?」
俺って冒険者だよな?
プレイヤーは特に冒険者ギルドで登録とかしないからよく分からないけど、多分最初から冒険者なんだろう。
「ああ、そうだよ」
「やっぱり! 俺さ、大きくなったら冒険者になるんだ! そんでもっていつかドラゴンを倒して世界一の冒険者になる!」
ドラゴン倒しちゃうのかよ!
ま、まぁ確かにドラゴン倒せれば冒険者として名を上げられるだろうけど。
てかNPCって凄いな。
ちゃんと夢とかあるんだもんなぁ。
「なぁ兄ちゃん。 アスラを触ってみてもいいか?」
「それはアスラに聞いてみな」
「え? あっうん。 アスラ、触ってみてもいいか?」
男の子の言葉にアスラは頷く。
すると、男の子はより一層目を輝かせてアスラに近付いて体を触った。
「うわぁー。 なんか気持ち良い」
ふふん!
そうだろう、そうだろう。
アスラは触り心地抜群だ!
「おい、ジャンヌー。 全然危なくないからこっち来いよー」
アスラに触っていた男の子は少し離れていた女の子に声を掛ける。
どうやら女の子はジャンヌというらしい。
女の子は幼い女の子の手を引いて恐る恐る近付いてきた。
「そういえばまだ自己紹介していなかったな。 俺はドラゴン。 よろしくな」
「え? 兄ちゃん名前がドラゴンっていうの?」
「カッコイイだろ?」
「えーどうかなー」
なんだよ!
別にいいだろ。
「俺はアルマ。 よろしく! ほら、ジャンヌもこっち来て自己紹介しろよ」
「あっうん。 私はジャンヌっていいます。 よろしくお願いします。 この子はシャオです」
「しゃお」
「アルマ君にジャンヌちゃんにシャオちゃんな。 3人ともよろしく」
俺は座りながら3人の頭を撫でてやる。
「兄ちゃん俺を子供扱いすんなよー」
「ははは、ごめん」
現実だったら確実に事案だな。
「俺たちは呼び捨てていいぜ! な?」
「うん」
「分かったよアルマ」
「ああ!」
そこでシャオが目を輝かせてヘスティアをじーっと見ていることに気が付く。
「えっと、どうしたんだシャオ?」
「おにいちゃん」
「ん?」
「あのどらごんさん、さわってもいい?」
「ああ、ヘスティアか」
「へすてあ」
なるほど。
シャオはヘスティアが気になってたんだな。
「シャオ、兄ちゃんに聞くんじゃなくてヘスティアに聞くんだぞ」
俺がアルマに言ったことをアルマはシャオに言ってる。
微笑ましい。
「へすてあ、さわっていい?」
「がう?」
ヘスティアは俺を見る。
俺は頷く。
「がう!」
ヘスティアはシャオに近付いてくっ付いた。
それをシャオは両手で抱きしめる。
「わあ!」
どうやらシャオのお気に召したようだ。
「ね、ねぇ私も触っていい?」
少し引いていたジャンヌもシャオとヘスティアを見て気になったみたいで、ヘスティアにそう聞く。
「がう!」
それにヘスティアは頷き、ジャンヌは恐る恐る手を伸ばしてヘスティアに触れた。
「うわぁすごい」
ジャンヌも堕ちたな。
ドラゴンの魅力には逆らえないのだ。
「俺はアスラの方が良いと思いぞ! なあ?」
「グルゥ(ありがとう)」
みんな仲良くなれたみたいだな。
……良いこと思い付いた。
「なぁ頼みごとがあるんだけど聞いてくれないか?」
「なんだ兄ちゃん?」
「俺はここで少しやることがあるからアスラたちとこの広場で遊んでいてほしいんだ。 どうだ?」
俺の言葉に子供たちは嬉しそうな表情を浮かべる。
「任せろ!」
「やります」
「あそぶ」
「そうか! じゃあ頼むな」
「おう! 行こうぜ!」
そう言ってアルマは走り出した。
「あ、ちょっと待ってよ!」
アルマの後ろをジャンヌとヘスティアを抱きしめたシャオが付いていく。
俺は残ったアスラを見る。
「頼んだぞ」
「グルゥ(任せて)」
アスラはそう答えると子供たちを追いかけていった。
「何して遊ぶ?」
「うーん」
「じゃあ冒険者ごっこしようぜ!」
「えー」
楽しそうで良し。
問題は無さそうだ。
偶にはアスラに戦闘じゃなく遊ばせるのも必要だな。
楽しそうなアスラたちを見て俺はそう思った。




