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第20話 メンテ中の暇潰し

書ける時間が無く、遅くなりました。

元々遅筆ですので今後もこういったことがあると思いますが、よろしくお願いします。


次の話と合わせると1万字を超える可能性があるので分けます。

第20話 メンテ中の暇潰し




「はぁ……」


 リビングのソファーに座って時計を見る。

 短針はまだ2を指している。

 延長も無く予定通りRDWのメンテナンスが終わるのが17時。

 ……まだ先だな。

 普段なら3時間なんてすぐなのにアスラやヘスティアのことを考えると長く感じる。

 それだけ俺がRDWにハマっているってことか。


「あと3時間何してようか」


 特にやりたいことも無い。

 前まで趣味としていたマンガやラノベも最近は読みたい物も無いしなぁ。


「うーん……あ」


 そういえば今日はまだ昼食を食べていなかったな。

 今からでも遅くないし何か食べるか。

 とりあえず大城さんに連絡を。

 ソファーから立って内線に向かう。


「いや、やめよう」


 途中で考えを改めて立ち止まる。

 何時も大城さんに頼むのも悪いし今日は外に何か食べに行こう。

 ついでに暇潰しを兼ねて本屋にでも寄ろうかな。


「よし、そうしよう」


 そうと決まれば早速用意しよう。

 まず外用のシンプルなシャツとジーンズに着替える。

 そしてポケットに財布と鍵とスマホを突っ込む。

 準備完了だ。


「なんか随分簡単な感じだな」


 我ながら如何にもモテない独り身のおっさんって感じだ。

 まぁ別に今更モテたい訳でも無いしいいよな。

 俺は1年程履いているスニーカーを履いて玄関から出る。

 扉に鍵をかけてそのまま近くのエレベーターを呼んで乗り、1階のロビーに。

 ロビーの受付ではこのマンションのコンシェルジュさんが4人居た。

 大城さんは居ない。


「御出掛けですか?」


 コンシェルジュさんの1人が声を掛けてきた。


「はい。 食事と暇潰しも兼ねて外を回ってきます」

「そうですか。 いってらっしゃいませ」

「いってきます」


 なんか家族でもない人にいってらっしゃいなんて言われることがあまり無いから新鮮だ。

 そんなことを思いつつ俺はマンションの外へと出た。


「あー外だ」


 最近はずっと部屋に引きこもってたし外に出るのも久し振りだなぁ。

 日差しが眩しく感じる。


「さて、とりあえずは駅前かな?」


 ここから駅前までは近いし、駅前なら何か食べる所も本屋もある筈。

 時間はあるし、のんびり行こう。



 そんなこんなで自宅から10分もかからずに駅前に着いた訳だが……。


「人が多いな」


 都心だし、その上夏休みだからしょうがないとは思うが多くないか?

 大人と子供半々って感じだな。

 何かイベントでもあるのだろうか?

 まぁ俺には関係無いし、とっとと何処かの店に入ろう。

 何か食べたいものがないか、駅前の店の前を回る。


「牛丼屋にファミレス、ハンバーガーに蕎麦か」


 どれも今食べたいって感じがしないな。

 何か他にないだろうか。


「お? 何だこれ?」


 一軒のラーメン屋の前に【ネギ味噌わさびラーメン始めました】と書いた看板が出ている。

 ネギ味噌わさびラーメン?

 それって美味いのか?

 気になるなぁ。


「入ってみるか」


 ネギ味噌わさびラーメンが気になったので入ってみることにする。

 店の中は意外と広く客が多い。

 これは当たりか?


「いらっしゃいませ! お一人様でしょうか?」

「はい」

「ではこちらにどうぞ!」


 店員に2人がけの席に通されて座る。

 テーブルに置かれたメニューには大きくネギ味噌わさびラーメンと書かれている。

 写真には緑色のスープにネギと海苔とメンマが乗っている……辛そうだな。

 大丈夫なのか?

 だが、もう俺はネギ味噌わさびラーメンを食べる気分なので水を持ってきた店員に注文する。


「お待たせしました! ネギ味噌わさびラーメンです!」


 店には多くの客が居たが、すぐにネギ味噌わさびラーメンが運ばれてくる。

 もう少し時間がかかると思っていたけど、これは良いな。

 ネギ味噌わさびラーメンはメニューの写真と同じく緑色のスープにネギと海苔とメンマが乗っている。


「……では、早速一口」


 レンゲで緑色のスープを掬ってゆっくり飲む。

 んんっ!?

 すぐに箸で麺を啜る。

 ……やっぱり思ったより辛くない。

 というか――


「美味い」


 気が付けばテーブルの上には空の器。


「美味くて必死に食べてしまった」


 緑色のスープも全部飲み干した。

 これはマジで当たりだったな。

 ネギ味噌わさびラーメン、また食べに来よう。

 俺は満足感を感じつつ、まだ一口も飲んでない水を飲む。

 そうしていると店の中の客の声が耳に入ってくる。


「……RDWが……」


 うん?

 今、RDWって聞こえたな。

 行儀が悪いと思いながらも気になって声が聞こえた方をチラリと見る。

 そこには男性2人組の客が座っていた。

 どちらも俺より若い。

 高校生か?

 2人の会話に耳を傾ける。


「あー早くメンテ終わんねえかなー」

「まーた言ってんのかよ」

「だってよー」

「そんなにRDWは面白いのか?」

「面白いなんてもんじゃねえよ。 最高だわ。 今までのゲームがしょぼく感じる程にな」

「ふーん。 でも、よく金がかかるって聞くけど?」

「あーまぁガチでやろうとしたら金がかかるな。 でも、そこまでこだわらなければ金はかかんねえよ。 俺はまだ2万しか使ってないしな」

「2万か。 まぁ今時のゲームにしては随分安い」

「今時、ソシャゲでも月10万で微課金だもんなぁ」

「俺らが生まれる前は10万でも重課金だったらしいしな」

「まぁソシャゲなんてオワコンだけど」

「まぁな」


 2人の言う通りだ。

 時代が進むごとにゲームでの課金が進み、課金額が上がっていった。

 それに対して国は規制するどころか、年々緩くなっていっている。

 噂では議員ですらゲームで課金しまくっているらしいな。


「それでお前はRDWでどこまで進んでんの?」

「俺はゲームで知り合った人と初心者フィールド攻略中だ」

「何だよ。 まだ初心者フィールドなのか?」

「いや、初心者フィールドだって難しいんだよ」

「ふーん。 知り合った人ってのは?」

「冒険者ギルドってとこでパーティーメンバーを募集してたから入ったんだよ」

「へー」

「ちなみに女プレイヤー」

「ちょっおまっ!?」

「羨ましいだろ?」

「……どうせネカマだろ」

「残念だけどRDWは性別偽れないんだよなー」

「クソッ!」

「お前も早くRDW手に入れろよー」

「はぁ……次の抽選当たんねえかな」


 思春期の男って感じで懐かしいノリだな。

 どうやら片方の男は俺と同じでメンテナンスが終わるまで時間を潰しているっぽい。

 もしかしたら、この周辺そういう人が多いのかも。

 人の多さはそれが原因だったりしてな。


 これ以上は邪魔になるし、そろそろ店を出るか。

 俺はネギ味噌わさびラーメンの代金620円を払って店を出た。


「次は本屋だな」


 駅前のそれなりに大きな本屋に入る。

 とりあえずまずはコミックコーナーに行くか。

 コミックコーナーには20人程の客が居た。

 見事に男ばっかだが僅かに女性も居る。

 俺は適当に棚を流し見しつつ気になる物がないか探す。


「うーん」


 やっぱりそこまで気になる物は無いなぁ。

 一応持っているマンガの新刊が出ていたので手に取る。

 ……あれ?

 これって何巻まで買ってたっけ?

 まぁとりあえず買っとけば良いか。

 俺は新刊のマンガを数冊持って次にラノベコーナーに行く。

 ここもコミックコーナーと同じような客層。

 同じように棚を見て回る。

 ラノベは特に持ってるやつの新刊は無いか。


「あとは雑誌か?」


 とりあえずゲーム雑誌はチェックしておこう。

 雑誌コーナーに行ってゲーム雑誌を見る。


「おお?」


 どのゲーム雑誌も大きくRDWの文字が。

 RDWの情報でも載っているのか?

 気になるなぁ。

 ポケットから財布を出していくらあるか見る。


「12万か」


 余裕で買える。

 金はある訳だしRDWの文字があるゲーム雑誌は全部買っとこう。

 もしかしたら何か俺の知らない情報があるかもしれないし。

 まぁ無くても暇潰しにはなるだろ。

 俺はマンガ数冊とゲーム雑誌数冊を持ってレジに並ぶ。


「こちらにどうぞ」


 空いているレジに本を置く。


「これお願いします。 あ、カバーは要らないです」

「ありがとうございます」


 本の入った緑色の袋を持って店を出る。

 意外と重いな。

 空いている片手でポケットからスマホを出して時間を確認する。


「15時半前か……帰ろ」


 家に帰って本を読んでいれば、すぐに17時になるだろ。

 俺は帰路につく。



 少し早足なのもあってかマンションまで5分程で到着した。

 改めて見るとよくこんなデカイ立派なマンションに住んでるよな俺。

 そんなことを思いながらマンションに入る。

 ロビーには行きと同じコンシェルジュさんが居た。


「お帰りなさいませ」

「ただいまです」

「お荷物お持ちしましょうか?」

「あ、いや大丈夫です」


 なんか高級ホテルに居るみたいだな。

 ロビーを通ってエレベーターで俺の部屋のフロアに着く。

 鍵を取り出して玄関を開けて部屋に入る。


「ただいま」


 誰も居ないが一応言っておく。

 本の入った緑色の袋をリビングのテーブルの上に置いてから手洗いうがいをする。

 そしてソファーにどかっと座ってゲーム雑誌を取り出す。


「早速読むか」


 ゲーム雑誌のRDWの記事だけ読んで次のを読むのを繰り返す。


「こんなもんか」


 どのゲーム雑誌も書いてあることは大体同じで知っていることも多かった。

 例えばこの職業の使用感はどうだったとか、この間のガチャでこんな物が出たとか、そんな感じ。

 ただ、1つ気になる情報があった。

 それは近々行われるメンテナンスで運営イベントが告知されるということ。

 この近々行われるメンテナンスっていうのは、ちょうど今やっているメンテナンスのことだろう。

 ということは、このメンテナンスが終わればRDW最初の運営イベントの情報が解禁される筈。


「気になるな。 早くプレイしたい」


 今の時間は16時。

 買ってきたマンガでも読んでいれば、すぐに17時になるだろう。

 そう思って買ってきたマンガに手を伸ばし――


 ピンポーン


 インターホンが鳴った。

 誰だろう?

 玄関に行って扉を開ける。


「こんにちは」

「あれ?」


 そこには大城さんが立っていた。


「大城さんどうしたんですか?」

「お届け物です」


 よく見ると大城さんが手に箱を持っている。


「あ、わざわざすみません」

「いえ」


 大城さんから箱を受け取る。

 というかRDWがメンテナンスの時で良かったな。

 ログインしていたら気が付かなかっただろうし。


「またRDWですか」

「あはは……まぁ今はメンテナンス中です」

「知ってます」


 え?


「それよりもゲームばかりで食事を忘れたりしないでください」

「す、すみません」

「それでは失礼します」


 そう言って大城さんは去っていった。

 何だったんだろうか?

 不思議に思いながらも俺は箱を持ってリビングに行く。


「これは姉ちゃんからか」


 どうやら姉ちゃんから送られてきたらしい。

 何が入っているんだ?

 箱を開けると中には手紙とドライフルーツのマンゴーが入っていた。

 手紙を読んでみる。


「なになに……『この間のお金ありがとう。 そのお金で家族でバリに旅行してきました。 ドライフルーツはお土産です。 ちゃんとお礼も言いたいので今度家に来てください。 ウチの子たちも待ってます』……か」


 姉ちゃんは俺とは違って結婚して子供も2人居る。

 その姉ちゃんにこの間100万円ほどあげたんだが、そのお金で家族4人でどうやらバリに旅行してきたらしい。

 姉ちゃんの子供とはそれなりに仲が良い。

 上は高校生の男の子で下は中学生の女の子だ。

 待っているらしいし、今度お小遣いでもあげに姉ちゃんの所に行くか。


「でもお土産にドライフルーツってバリでは普通なのか?」


 ドライフルーツを開けて一口で食べてみる。

 悪くはないな。

 俺はそのドライフルーツを食べながらマンガを読んで時間を潰す。

 そうしていると時間は16時55分になる。


「やっとか」


 俺はテーブルの上にマンガとドライフルーツを置いてシャツとジーンズを脱いでスマホ片手に寝室に向かう。

 VR用ベッドに寝転がってVRゲーム機の端末をセット。


「あと3分」


 スマホで時間を確認しながら待つ。

 あと1分のところで端末のスイッチを入れる。

 そして17:00。


「RDW ログイン開始!」


 楽しみだなぁ。

 意識が薄れていく。

 こうして俺は再びRDWにログインした。

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