第17話 ドラゴンテイマーの試練
17話18話19話を足して細かいところを書き直しました。
流れも変えてます。
次の話からは完全新規です。
第17話 ドラゴンテイマーの試練
「え?」
「だからもう戦いは十分じゃ」
突然のヨエムのその言葉に俺は少し混乱する。
どうして突然そんなことを言うのか分からない。
戦いは十分とは、もう戦わないということか?
「訳が分からないといった顔をしておるな」
「そりゃ……」
「簡単な話じゃ。 儂は力を見せよと言った。 そしてお主たちは儂に力を見せた。 それだけじゃ」
「でも、俺たちはまだ……」
俺とアスラはヨエムに何のダメージも与えてはいない。
傷一つ付けていないのに力を見せたといえるのか?
「ほっほっほ。 よく見よ」
そう言ってヨエムは前脚の指で自分の首を指す。
そこはアスラが噛み付いていた場所だ。
「ここに小さな傷が付いておる」
「え?」
そうヨエムが言うが、俺には傷が付いているようには見えない。
本当に傷が付いているのか?
「お主の目では見えないじゃろう。 それ程小さな傷じゃ。 それでも傷は傷。 お主たちは儂に傷を付けた。 それで十分じゃろう」
「はぁ? じゃあもう攻撃してこないのか?」
「そうじゃ。 もう戦闘は終わり。 安心せい」
それで良いのか?
まぁヨエムが納得して戦闘が終わるのならそれで良い。
今のアスラにはこれ以上の戦闘は無理だからな。
「これで試練は終わった訳じゃ。 色々と話したいことはあるんじゃが、その前にそこの幼きドラゴンのことじゃな」
「アスラの?」
「そうじゃ。 儂との戦闘が終わったのじゃから、大量の経験を得たことだろう。 ……そろそろじゃ」
ヨエムがそう言った次の瞬間に俺の目の前に文字が表示される。
『アスラのレベルが上限に達しました。 進化が可能です』
「な!?」
レベル上限だと!?
モンスターにはそれぞれ個々にレベルの上限があって、上限に達すると進化が可能になり、進化することによってモンスターは様々姿になって強力になる。
そして進化するとレベルの上限が上がって、再び上限に達すると進化すると聞いていたが……。
アスラは山に登るまではまだレベル90にもなっていなかった筈。
もしかして100レベルがアスラの上限だったのか?
すぐにアスラのステータスを開く。
=================================
名前:アスラ
種族:アースドラゴン(ユニーク)Lv200MAX
主:ドラゴン
スキル:アースブレスLv67、土魔法Lv25、母なる大地
HP:2612/27130
MP:2198/19524
=================================
「えええ!?」
レベル200!?
嘘ぉ。
だって昨日までレベル90前だったんだぞ?
今日でもしかしたら90になっていたかもしれないけど……えぇ……。
「そこの幼きドラゴンは進化出来るようになったじゃろ?」
「それはそうだけど」
「なんじゃ? もしかして急な成長に驚いておるのか?」
「まぁ……」
「そんなことは後で説明してやる。 それよりも早く進化させてあげなさい。 進化すれば傷は癒える筈じゃ」
そうなのか!?
『アスラを進化させますか? y/n』
俺は慌ててyを選択する。
「グルゥ」
すると、アスラの姿が光に包まれて変化していく。
「これが進化……」
そして数秒すると光が弾ける。
「ガァァァァァ!」
アスラが新しい姿で現れる。
高さが3mくらいになって体が一回り大きくなり、4本の脚には盾のようなものが付いている。
頭の横にも小さな盾が。
なによりも1番の変化が――
「凄い!」
その背中だろう。
アスラの何もなかった背中には翼のように巨大な盾が2本生えている。
翼盾といった感じだ。
見た感じ飛べそうな翼ではないが、防御には最高のものだろう。
進化したアスラは新しい自分の体を確かめるように翼盾を動かす。
その可動域は広く前も横も後ろも守れるようだ。
「アスラ!」
俺はアスラに走り寄る。
すると、アスラが俺を見て嬉しそうな顔をするが、すぐにその表情は崩れる。
「どうした?」
「グルゥ(悲しい)」
「アスラ、お前言葉が」
アスラの言っていることが前よりもハッキリ分かる!
これは嬉しい。
でも、今はアスラの言っていることだ。
「どうして悲しいんだ?」
「グルゥー(体が大きくなって悲しい)」
「うん?」
「グルゥ……(もっと主人とスリスリしたかった)」
「え? ははは!」
アスラの言いたいことが理解出来て笑ってしまう。
アスラは体が大きくなったことで俺に頭を擦り寄せられなくなったと思って悲しんでいたんだ。
進化した喜びよりもそれか。
アスラらしいな!
「大丈夫だよアスラ。 まだスリスリくらい出来るさ。 それにもし出来なくなっても俺とアスラの関係が変わる訳ではないだろう?」
「グルゥ? (本当?)」
「ああ! 来い!」
俺は両手を広げてアスラを待つ。
すると、アスラは恐る恐る頭を俺の身体に擦り寄せた。
俺はアスラの頭を撫でてやる。
「グルゥ! (本当だ!)」
アスラは嬉しそうに鳴いた。
「そろそろ良いかの?」
アスラと触れ合っているとヨエムはそう聞いてくる。
「あ、ああ。 アスラまた後でな」
「グルゥ(分かった)」
俺とアスラは身体を離す。
「ほっほっほ。 仲の良いことは良いことじゃ。 幼きドラゴン……いや、試練を乗り越えたのじゃ。 名前を教えてくれるかの?」
「グルゥ(アスラ)」
「そうか。 アスラ、お主はシールド系のドラゴンに進化した。 珍しい種族じゃ。 お主のその姿は今よりも主人を守りたいという強い想いが、数多の可能性の中から引き寄せたものじゃ。 誇りに思うが良い」
「グルゥ(はい)」
アスラが俺を守りたいと願った姿か。
その気持ちは嬉しいな。
そこでヨエムが俺を見る。
「それでお主の名前も聞こうかの」
「ドラゴン……です」
「ほっほっほ。 ストレートな良い名前じゃ。 それに今更儂に敬語など使わなくて良い。 儂のこともヨエムと呼ぶが良い」
「分かったヨエム」
なんか一気に気の良いおじいちゃんみたいになったな。
「ドラゴンよ。 進化したアスラのステータスを確認してみなさい」
俺はヨエムに言われて通りにアスラのステータスを開く。
=================================
名前:アスラ
種族:シールド・アースドラゴン(ユニーク)Lv200
主:ドラゴン
スキル:アースブレスLv72、土魔法Lv40、母なる大地、土耐性Lv20、盾術Lv20、鉄壁
HP:38130/38130
MP:22524/22524
=================================
種族はシールド・アースドラゴンか。
MAXの表示は無くなっている。
レベル上限は上がっているな。
スキルも3つ増えている。
土耐性はロックリザードと同じで土属性に対する耐性だろう。
盾術は盾を上手く扱えるようになるスキルだ。
今のアスラには大きな翼盾があるから必要だな。
鉄壁っていうスキルは知らない。
名前からして防御力が上がるスキルか?
それとHPが38000にもなっている。
もうすぐ4万だ。
上がり過ぎだろ。
やばいな。
「ステータスは確認出来たかの?」
「ああ」
「分からないスキルがあったら聞きなさい」
「えっと、じゃあ鉄壁っていうスキルが」
「鉄壁か。 鉄壁はHPと防御力を大幅に上げるスキルじゃ。 良いスキルじゃの」
おお!
防御力だけじゃなくHPも上がるのか。
「ありがとう」
「なあに。 これくらい構わんよ」
ヨエムは満足そうな笑顔だ。
なんでそんな笑顔なんだよ。
「ドラゴン。 お主自身のステータスも確認しておきなさい」
「ああ」
=================================
名前:ドラゴン
種族:ドラゴニュートLv341
職業:ドラゴンテイマーLv276、時空間魔法使いLv142
スキル:龍化Lv40、テイムLv100MAX、時空間魔法Lv89
モンスター1/5:アスラ
称号:ドラゴン狂い、第1の試練を越えし者
HP:13821/17311
MP:22612/24782
=================================
いやぁ……えぇ?
種族レベル341?
なんで?
テイムスキルなんてMAXになってるし。
HPとMPも伸び過ぎ!
ドラゴニュートだからHPは良く伸びるし、ドラゴンテイマーと時空間魔法使いはMPが良く伸びるのは分かる。
でも、17000と24000って。
それになんか第1の試練を越えし者とかいう新しい称号手に入れてるし。
そういえば称号は詳細見れるんだったな。
見てみよう。
=================================
【第1の試練を越えし者】
第1のドラゴンの試練を乗り越えた者に与えられる。
第2のドラゴンの試練を受ける資格を得る。
=================================
この称号には能力ボーナスとかないみたいだが、なんか第2の試練が受けられるらしい。
なにそれ。
「ステータスの確認は出来たかの?」
「まぁ……」
「ほっほっほ。 どうやら急激なレベルアップに困惑しているようじゃの」
「上がり過ぎでは?」
「なら説明しておこうかの。 何故急激にレベルが上がったのか? それは儂との戦闘で生きて戦闘を終えたからじゃ」
そりゃ原因はヨエムとの戦闘だろうけども。
「よいか? 簡単な話じゃ。 儂はお主たちが想像出来ない程の高いレベルなのじゃ。 本来は生き残る可能性など少しもない。 ただ、今回は試練ということで儂は本気を出す気はなかった。 そして儂に小さくも傷を付けた。 その結果、あり得ない程の経験を得たということじゃな」
「はぁ?」
「それにはお主たちが受けた試練は本来もっとお主たちが成長してから受けるものじゃ。 それなのにお主たちは驚く程弱い。 しかし、試練を受ける資格を持っていたのでこうなったんじゃな」
つまりはここに来るのはもっとレベルが上がってからだし、来ても普通のプレイヤーはヨエムに殺される。
なのに俺とアスラは物凄い低レベルでヨエムの所に偶然来てしまって、しかも資格を持っていたからヨエムは手加減しアスラが傷を付け、戦闘で生き残り大量の経験値を得たと。
マジか。
「ほっほっほ。 だから儂はお主たちを弱き者、幼きドラゴンと呼んだのじゃ」
戦闘して生き残るだけでこんなにレベルが上がるって……ヨエムって一体どんだけレベルが高いんだよ。
「はぁ」
「儂と少しでもやり合ってHPを1でも削りたいのなら種族レベル1000でも足りないな」
そりゃレベル上がるわ。
ん?
「でも、アスラはヨエムに傷を付けたんだよな」
「そうじゃ。 儂も驚いたわ。 まさか儂に傷を付けるとはな。 驚くべき可能性じゃ」
「そりゃウチのアスラは強いからな!」
そう言われると、気分が良い。
アスラが誇らしいな。
「ほっほっほ。 そうじゃな。 しかし、儂の言っているのはアスラのことだけではない。 お主のこともじゃ」
「え?」
俺のこと?
「お主は儂の動きを一瞬でも止めた。 本来お主の力量じゃ無理じゃ。 それを出来たのはお主がアスラを強く想っていたからじゃろう」
「俺が」
「そうじゃ。 ドラゴンよ。 お主はアスラの良き主人じゃ。 誇って良い」
確かに今考えればヨエムの動きを止めるなんて俺には無理だろう。
無我夢中でやったから俺にはよく分からないけど、ヨエムがそう言うなら俺はアスラの為に頑張れたんだな。
それは嬉しい。
「そういえば、お主たちは何故ここに来たのじゃ? まさか本気で試練を受けに来た訳ではないじゃろう?」
「それは……えーっと、この山にドラゴンが居るって聞いたから」
「うん?」
「……ヨエムに会いに来たんだよ!」
「……ほっほっほ! やはりお主はドラゴンテイマーじゃのう!」
あれ?
俺ってヨエムにドラゴンテイマーだってこと言ってないよな?
「どういうことだ?」
「ほっほっほ。 さて、そろそろ試練のことを話そうかの」
ヨエムは嬉しそうに笑う。
次の瞬間――
『特殊職業クエスト【選ばれし者・ドラゴンテイマー】が発生しました』
「え?」
そう表示されアナウンスが聞こえた。
特殊職業クエスト【選ばれし者・ドラゴンテイマー】?
一体なんだそれは?
聞いたことがない。
職業クエストっていうんだから、職業の探求? 探索とか……まぁゲームでは一般的なクエストの意味なんだろうけど。
ドラゴンテイマー専用の特別なクエストなのか?
「儂の考えている通りならお主にクエストが発生した筈じゃ」
「確かに特殊職業クエストっていうのが発生したけど」
どうしてヨエムが知っているんだ?
「それは良かった。 そのクエストがドラゴンテイマーであるお主の試練でもある」
何?
「待ってくれ。 さっきからヨエムが言っていた試練っていうのはドラゴンテイマーに関してのものなのか?」
「ほっほっほ。 他に何があるというのじゃ」
確かにそうだ。
ドラゴンに関係ある試練なんて俺関係じゃドラゴンテイマーかアスラのことしかない。
他にも聞きたいことがある。
ヨエムは何故俺がドラゴンテイマーだと知っているのか?
それにヨエムはまるでこのゲームの世界のシステムを知っているような感じだ。
「では、ヨエムは何故ドラゴンテイマーのことを知っている? それにクエストなどのこのゲームのシステムなどについてもだ」
「そう答えを急ぐな。 ちゃんと説明はしてやる」
説明されるならいいが、もどかしいな。
「まずは試練のことじゃな。 ドラゴンテイマーはある一定のレベルまで成長すると成長が止まる」
「成長が止まる?」
「そうじゃ。 お主にはレベル上限と言った方が分かりやすいかの」
なるほど。
ドラゴンテイマーのレベル上限か。
「そこから更に成長する為には試練という名のクエストを乗り越えなければならない。 クエストをクリアすればドラゴンテイマーは成長し、より強力な職業となるじゃろう。 それが試練じゃ」
そういうことか。
試練、つまりさっきの特殊職業クエストっていうのはドラゴンテイマーがランクアップする為のクエストなんだ。
でも、それならおかしくないか?
「それじゃ俺がその試練を受けるのはおかしくないか? だって俺はまだ上限まで成長していないぞ」
「ほっほっほ。 だから言ったじゃろ? お主たちは弱い。 本来は儂とやり合えるレベルになってからここに来るのじゃ」
はぁーなるほどな。
そりゃここに来るのは早すぎるはな。
俺なんてまだレベル80くらいだったし。
「まぁ今のお主たちでも受けられないことはないから今になったのじゃ。 クエストの発生条件は儂の試練を乗り越えて説明を少しでも受けることじゃからな。 他にも条件はあるのじゃが今はいいじゃろ」
「はぁ」
つまりヨエムが試練の説明を始めることが特殊職業クエストの発生条件だったということか。
「それで肝心の試練の内容じゃが、そう複雑なものではない」
「そうなのか?」
意外だ。
「だからと言って簡単ではないんじゃが」
なんだよ!
結局難しいのか。
「内容は儂以外の特別なドラゴンに会って試練を受けることじゃ」
「特別なドラゴン?」
なんだそのドキドキワクワクするワードは。
メチャクチャ気になる。
「この世界にはワールド・ドラゴンと呼ばれるドラゴンが15体存在する」
「ワールド・ドラゴン……」
これまた初めて聞く名だ。
名前からして特別って感じだな。
「ワールド・ドラゴンはそれぞれが世界を破壊出来る程の力を持つドラゴンたちじゃ」
「世界を破壊出来る……一体どんなドラゴンが?」
「ほっほっほ。 あまり教えてもいけないんじゃが、そうじゃな……儂の何倍も大きな体を持つドラゴンがおるな」
「ヨエムの何倍も」
おいおい。
ヨエムの何倍も大きいって一体どんなドラゴンなんだよ。
気になる。
会ってみたい。
「ワールド・ドラゴンは何処にいるんだ?」
「世界中の何処かに居るワールド・ドラゴンを見つけて試練を受けるのが、お主の試練じゃ」
そういう感じか。
自分で見つけなくちゃいけないんだな。
「そうか……会ってみたかったんだけどな」
「何を言っておる。 ワールド・ドラゴンなら目の前に1体おるじゃろ?」
「え?」
それってもしかして!
「ヨエムが?」
「ほっほっほ。 そうじゃ。 儂がワールド・ドラゴンの1体。 エルダー・ファイアードラゴンのヨエムじゃ」
「マジ?」
「マジじゃ」
はぁー。
まさか目の前に居るとはなぁ。
「じゃあヨエムは世界を破壊出来るのか」
「もちろんやろうと思えば出来るが、そんなことはせんよ。 理由がないからの」
「確かに」
俺もRDWが破壊されたら困る。
「それに儂にとってこの世界は大事な場所じゃ」
そう言ったヨエムは何かを懐かしんでいるような感じだった。
「まぁ試練というかクエストは分かった。 俺が世界中を回ってワールド・ドラゴンを探し出して試練を受ければいいんだな?」
「そうじゃ。 でも、今のお主は急ぐ必要もないじゃろ。 まだ成長途中なんじゃし」
確かにそうだな。
それに試練を乗り越えるにも力が足りないだろう。
「しかし、何でドラゴンテイマーにこんなクエストがあるんだ?」
「それはワールド・ジョブに関係しているからじゃ」
「ワールド・ジョブ?」
またワールド系か。
多いな。
「お主何も知らんのじゃな」
「まだゲーム始めたばかりだからしょうがないだろ」
「そういえば、そうじゃったな」
これで伝わるヨエムがおかしいよな。
「ワールド・ジョブというのはこの世界の創造に関わったとされる5つの職業のことじゃ。 そのワールド・ジョブの1つがドラゴンテイマーの上位職なんじゃよ」
「なるほど」
だから特別なクエストが用意されているんだな。
でも、それって――
「もしかして他の職業にも特殊職業クエストが存在する?」
「そうじゃ。 5つのワールド・ジョブに少しでも関係する職業にはクエストが発生する。 ただし、1つのワールド・ジョブになれるのは1人だけじゃ」
「ドラゴンテイマーが特別な訳ではないのか」
「いや、ドラゴンテイマーは職業の中でもかなり特別な職業、ユニーク職業じゃ」
どういうこと?
「ドラゴンテイマーというのは儂らドラゴンにとって特別な意味を持つ。 ドラゴンテイマーというだけでドラゴンから一目置かれるじゃろう。 そんな職業が特別でない訳がない。 ドラゴンテイマーはお主1人じゃろう」
全く知らないんだけど。
ドラゴンテイマーってそんなに重要な感じなのか?
ドラゴンにとって特別なのは嬉しいけども。
「ドラゴンテイマーというのはなろうと思ってなれる職業ではない。 世界に選ばれて初めてドラゴンテイマーとなるのじゃ」
「いや、でも俺はキャラメイクで何度もやり直して引き当てただけだぞ?」
「ほっほっほ。 お主がそう思っているだけじゃ。 お主が選んだのではなく、選ばれたのじゃ」
よく分からない。
そういう設定ってことなのかね?
「ほっほっほ。 まぁ分からなくても良い。 頭の片隅にでも入れておくと良い」
「はぁ」
ヨエムがそう言うならそうしとくか。
「それで儂が何故お主がドラゴンテイマーだと知っていたかじゃが……理由は簡単じゃ。 知っていたのではなく気が付いたのじゃ。 お主とアスラを見てな」
「俺とアスラを?」
俺はアスラは見る。
「グルゥ? (何?)」
今まで黙っていたアスラが首を傾げてそう言う。
可愛い。
「ほっほっほ。 仲の良いパートナーじゃ。 それでこそドラゴンテイマー。 だからこそ儂は気が付いたのじゃ」
「俺とアスラの仲の良さで?」
「一目見て分かるわ。 儂もかつてはドラゴンテイマーの使役するドラゴンじゃったからの」
「え?」
ヨエムがドラゴンテイマーの使役するモンスターだった?
「まぁ少し違う。 正確にいうとドラゴンテイマーの上位職のワールド・ジョブだった者のドラゴンじゃったな」
ヨエムが使役モンスターだった?
これ程強力な力を持つヨエムが?
信じられないな。
それに疑問もある。
「ちょっと待ってくれ。 それは何時の話だ?」
「さぁて、もう何千年以上昔の話じゃったかな」
「それはおかしくないか? だって、このゲームは始まったばかりだぞ」
「ほっほっほ。 お主はこの世界がゲーム開始の少し前に急に出来たと思っておるのか?」
流石に急に出来たとは思ってないが、それでも2、3年前くらいだと思うんだけど。
「先程も言ったが、この世界の創造に関わったワールド・ジョブの者たち。 その者たちが居たのが1万年前じゃ。 つまりこの世界は1万年以上続いておる」
「そんな馬鹿な。 それはそういう設定なんだろ?」
「ほっほっほ。 それはどうじゃろうな?」
ヨエムは笑ってそう言う。
「まぁいずれお主にも分かるじゃろ」
どうやらこの事についてこれ以上は話す気はないようだ。
しょうがない。
じゃあ他のことを聞こう。
「でも、ヨエムは何故ゲームについてそんなに詳しいんだ?」
「それは儂がワールド・ドラゴンだからじゃな」
ワールド・ドラゴン。
15体の世界を破壊できる程の強大な力を持つドラゴンたち。
「ワールド・ドラゴンには世界の均衡を保つという役目がある」
「世界の均衡」
「その役目の所為か分からんが儂らには世界の大まかな動きを把握することが出来る」
「世界の動き?」
「そうじゃ。 例えば世界のシステムが変わった時やプレイヤーがこの世界に現れたとかな。 まぁ流石に人1人の動きは分からんが」
なるほど。
それで色々詳しいのか。
「じゃあ運営がワールド・ドラゴンをそう設定したのか」
「いや、そうではない」
どういうことだ?
「儂らワールド・ドラゴンはかつての主人に命じられて動いておる」
「ヨエムの主人ってことはドラゴンテイマーの上位職の」
「そうじゃ。 儂らはずっと主人の命令を守っておる」
うん?
さっきから気になっていたけど、儂らってことは……。
「もしかして、ワールド・ドラゴンって全員がその主人のドラゴンだったのか?」
「そういうことじゃ。 儂らワールド・ドラゴンは同じ主人の下におった者たちじゃ」
ドラゴンテイマーの上位職凄いな。
ヨエムみたいなドラゴンだけで驚きなのに、強大な力を持つドラゴンを他に14体も従えていたなんて。
俺なんてまだ5体しか連れて歩けないのに。
「昔は儂らワールド・ドラゴンは皆兄妹みたいなものじゃった」
「兄妹?」
「そうじゃ。 儂らは主人の下で力を合わせ敵を蹴散らしたりすれば、逆に喧嘩もした。 仲が悪かったり良かったりと本当の兄妹のように過ごした」
「そうなのか」
「目を閉じれば今でも思い出せる。 地を海を空を駆け世界中を主人と兄妹たちと回ったあの陽だまりのような日々」
ヨエムは目を閉じて上を向く。
「大切だったんだ」
「……そうじゃ。 大切な日々じゃった。 儂らは今でこそ強大な力を持つが元はただの弱く幼いドラゴン。 主人の下に集まり長く生活を共にした結果こうなった。 強くなるまでは兄妹で身を寄せ合って震えたり、主人に守られ後ろで戦いを見ていたりしたんじゃ。 最初は様々なことが怖かったが、主人を守る為、兄妹を守る為に努力した。 出来るならばまた……」
ヨエムの目尻から水滴が流れて地面に落ちる。
ヨエムが泣いている?
「少し思い出すとこれじゃ。 年を取ると涙脆くなってかなわんのぉ」
そこまで大切な思い出。
良いなぁ、そういうの。
俺もアスラやこれから仲間になってくれるドラゴンと世界中を回って笑い合いたい。
そして思い返して泣ける。
そんな思い出を作りたいな。
「今は他のワールド・ドラゴンとは会ってないのか?」
「主人が儂らに最後の命令をして亡くなってからは、皆命令を守る為に別れたのじゃ。 儂らの力は強過ぎる為に1箇所に集まるのは危険じゃからな」
「そうなのか……その最後の命令っていうのが世界の均衡を保つことか」
「それもそうじゃが、それだけではない」
何?
他にもあるのか?
「命令はあと2つあった。 それは主人の後継者になれる可能性のある者に試練を与えろというものじゃ」
なるほど。
それで俺に試練なんてものを受けさせたのか。
「もう1つはまだお主には話せない」
「何故?」
「まだ早い。 話せる時はお主が強力なドラゴンを従えた時じゃろう」
よく分からないが、ヨエムがまだ話せないと判断するならしょうがないか。
アスラは強いと思うが、ヨエムに比べればまだまだだしな。
「まぁそういう訳で儂が他のワールド・ドラゴンと会うことは滅多に無い」
「そうなのか」
「じゃが、中には何も考えずに動く馬鹿な奴もおる」
ワールド・ドラゴンなのに馬鹿なドラゴンもいるのか。
「お主も他のワールド・ドラゴンに会う時は注意することじゃな。 儂のように優しい者や理解がある者は少ないからの」
「そ、そうか」
ヨエムだって結構厳しい試練を与えてきたと思うんだけど。
まぁ手加減はしてくれたようだが。
「さて、これで儂の話はだいたい終わりじゃ。 他に何か聞きたいことでもあるかの?」
何かあるかな?
大体聞けたと思うしいいか。
「いや、大丈夫だ。 結局、俺はアスラと共に他のワールド・ドラゴンを探せということだろ」
「そうじゃが、試練を受けるのはお主がもっと強くなってからじゃぞ?」
「分かってる。 今の俺とアスラじゃヨエムに傷を付けることも出来ないしな」
「ほっほっほ。 じゃから小さい傷が付いていると言っておるじゃろ」
見えない程小さいものを傷と言っていいのか?
「まぁアスラとなら強くなれるさ」
「グルゥ! (その通り)」
アスラが俺を見て力強く頷いてくれる。
頼もしいな。
「じゃあそろそろ俺たちは行くよ」
「ほっほっほ。 まぁ待ちなさい」
「え?」
帰ろうとすると何故かそこでヨエムが俺たちを止めた。
key【ドラゴンテイマーであるプレイヤーがワールド・ドラゴン ヨエムの元にたどり着き、試練を乗り越える】
以前貰ったアイデアを幾つか使ってワールド・ドラゴンなどを設定してます。
一応まだドラゴンのアイデア募集中です。
それとは別にドラゴニュート以外のドラゴン系初期プレイヤー種族も募集します。
ドラゴニュート以外のドラゴン系初期プレイヤー種族で悩んでいるので。
ただ、アイデアを貰っても確実に採用する訳ではないのでご了承ください。