第13話 再びゴラの武具
10万字までは一気に書きたいところ。
第13話 再びゴラの武具
冒険者ギルドを出た俺とアスラはそのままゴラの武具へと向かう。
ゴラの武具は近いのですぐに着いた。
「アスラ、じゃあ待っててくれ」
「グルゥ」
やっぱりアスラは店に中には入れないので、外で待っててもらうことになる。
もう外で待っているのも3回目だ。
俺はアスラを残してゴラの武具へと扉を開けて入った。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ。 あら! ドラゴンさんじゃないですか」
店の中ではカウンターにこの前と同じようにアラさんが居た。
「金が出来たので装備を買いに来ました」
「流石はドラゴンさんね。 こんなに早くまた来ていただけるなんて」
「いやー、本当は金を貯めておいた方がいいんでしょうけど、俺は使っちゃうですよね」
実際もう冒険者ギルドで50万R使っているし、今から新しい装備を買おうとしているのだから金が貯まらない。
まぁこういうのも冒険者っぽいイメージで俺は嫌いじゃない。
「冒険者さんって稼げるのにお金が中々貯められないって聞きますもの」
「やっぱりそうなんですね」
「今日は防具ですか?」
うーん。
何か良い物があれば防具以外でも良いんだけど、1番はやっぱり防具かなぁ。
「防具以外に俺に合う物ってありますか?」
「そうねぇ……今はあまり無いかしらね。 ごめんなさいね」
アラさんは少し考えてからそう言った。
どうやら今は無いらしい。
じゃあやっぱり防具か。
「いえ、では防具を買いますね」
「それが良いですね。 でも、悪いんだけど今ちょうど主人が裏で作業しちゃっているんです。 もう少しで終わると思うから待っててもらえますか?」
「分かりました」
ゴラさんはどうやら作業中らしい。
少しぐらいなら待った方が良いよな。
それにしても、何だかアラさんは敬語が言いにくそうに感じる。
時々素が出そうになるよな。
もしかして苦手なのかな?
「もしかしてアラさんって敬語とか苦手です?」
「分かっちゃいました? 主人と同じで本当はこういう喋り方苦手なんです」
やっぱりそうだったか。
「じゃあ無理して敬語使わなくていいですよ。 俺もそっちの方が聞きやすいと思うますし」
「そう? 悪いわね。 じゃあこれでいかせてもらうわ」
こっちの方が良いね。
アラさんが自然っぽい。
「それで、ドラゴンさんは何処に行ってたの?」
「北の山に行ってました」
「北の山に。 あそこはロックリザードの生息地だったわよね?」
「はい。 最初は少し苦労しましたよ」
一回死にかけたしな。
「ロックリザードって硬くて面倒なモンスターらしいわね。 ドロップアイテムがウチで使えないからあまり縁が無いんだけど」
「そうみたいですね。 俺はドロップアイテムの使い道を聞くまで防具とかに使えると思ってました」
ロックリザードの鱗は錬金術の素材だもんな。
そりゃここでは使わないか。
「よくロックリザードを倒せたわね」
「殆ど俺の相棒のお陰ですよ。 俺なんて援護くらいしかしてません」
「ドラゴンさんの相棒っていうと、この間言っていたドラゴンかしら?」
「はい。 アスラっていってカッコ良くて可愛くて優しくて強いドラゴンなんです!」
「へぇーそうなの。 ドラゴンさんってよっぽどアスラっていう子が好きなのね」
アラさんは優しい笑顔でそう言った。
俺は迷わず頷く。
アスラが俺の最初のモンスターで本当に良かった。
もし他のドラゴンが出ても俺は大事に接しただろう。
でも、今は最初のドラゴンはアスラ以外ありえない。
もう特別なのだ。
「アスラっていう子もドラゴンさんが主人で幸せね」
そうなのかな。
そういえば、アスラが俺を本気でどう思っているのか、しっかり考えたことがなかった。
アスラは優しい。
よく俺を気遣ってくれるし、助けてくれる。
かと思えば甘えてきたり、触れ合ったりもする。
アスラが俺と居て嬉しいのは分かる。
だから、アスラも俺と居て幸せだと、俺が特別だと思ってくれていれば良いなぁ。
「ふふ。 テイマーやサマナーとモンスターの関係っていうのは色々な形があるけど、私は一緒に居て幸せそうな関係が1番好きだわ」
確かにアラさんの言う通り、お互いが信頼し合って幸せそうな関係が1番良いかな。
でも、色々な形ってなんだろ?
「そうですね。 俺も同じだと思います。 他には考えられないですよ。 でも、色々な形って他に何かあるんですか?」
俺の言葉を聞いたアラさんの表情が曇る。
まずい。
何か言ってはいけないことだったか。
「悲しいことにね……テイマーやサマナーの中には自分のモンスターを道具だと考えて使役している人が居るの」
「それってどういう……」
「おう! おめぇ来てたのか」
そこで奥からゴラさんが現れて声をかけてきた。
その時にはもうアラさんはいつもの優しい表情に戻っていた。
「あら貴方。 作業は終わったの?」
「おう。 バッチリだ。 それでおめぇはまた防具を買いに来たのか?」
「え、ああはい。 そうです」
さっきのアラさんの話は気になるけど、今は防具のことだな。
「今回の予算はいくらだ?」
「今回も500,000Rでお願いします」
手元には7万R残るし、50万R使ってもいいだろう。
「じゃあ今日は脚防具だな。 500,000Rあれば結構良い脚防具が買えるぞ」
「では俺に合う何か良い脚防具あります?」
「ちょっと待ってろ」
ゴラさんは壁の棚に行って黒い脚防具を1着持ってくる。
「500,000Rで買えておめぇに合いそうなのはこれだな」
俺はゴラさんから黒い脚防具を手渡される。
「これは?」
「そいつはシャドウタイガーの革を使って作った脚防具だ。 防御力はただの鉄防具よりも上だし、影属性に耐性もある。 もちろんサイズ自動調整も付いてるぞ」
シャドウタイガーも影属性ってのも初めて聞いたが、見た目も効果も中々良い防具じゃないだろうか。
「値段は451,000Rだ。 どうだ、買うか?」
ゴラさんが選んでくれたんだし、外れってことはないだろう。
買おう。
「買います」
俺はカウンターに45万千Rを置いた。
「買うのは良いが一回着てみろ。 サイズ自動調整があるから合わないってことはないだろうがな」
「はい」
俺は今履いている脚防具に手をかけて……止まる。
「どうした?」
動かない俺にゴラさんが不思議そうな顔で聞いてくる。
「いや、あのーアラさん?」
「なあに?」
アラさんはニコニコ笑顔で俺を見ている。
「ゴラさんは良いんですけど、アラさんに見られてたら着替えられないんですが」
「なんだおめぇ。 ウチのカミさんのことを気にしてるのか」
「慣れてるから気にしなくて良いのよ」
いや、慣れてるとかそういうことじゃなくて。
「流石におっさんのパンツ姿を見せる訳には」
「いいから早く着替えろ」
結局、俺はゴラさんとアラさんの前で着替えた。
着替えている間もアラさんはいつもの笑顔だった。
「おう、悪くねぇな」
「そうですね……」
履き心地は良い。
サイズ自動調整のお陰でピッタリだ。
「その脚防具はどうすんだ? もう要らねぇならこっちで処分するが」
ゴラさんが俺の履いていた初期装備のズボンを見て言う。
要らないし、処分してもらおうか。
「じゃあお願いします」
「おう」
初期装備の脚防具をゴラさんに手渡す。
「もう金はねぇんだろ?」
「あと少しだけ」
残金は120,100Rだ。
何か買えなくもないだろうが、もう少し貯めてから良い物を買った方が良いだろう。
「ならまた稼いできな!」
「はい、また来ますね」
「待ってるわ」
「ではまた」
俺は2人に見送られて店を出た。
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