第11話 成長するおっさんとアスラ
今回も3000字程です。
第11話 成長するおっさんとアスラ
俺とアスラは2人で相談した結果、一度登ってきた道を戻ることにした。
ただ、完全に山から出る訳ではなくて、1体で居るロックリザードを探して2人で倒し、強くなってから再び山の頂上を目指そうという作戦。
そんな訳で1体で居るロックリザードを探していると、早速発見する。
今までのロックリザードと変わらない大きさでユニークでもネームドでもなさそうだ。
「アスラ、俺がロックリザードの動きを少し止めるから、その間にアスラ・インパクトをアイツの頭に叩き込め」
「グルゥ」
俺の作戦にアスラは頷く。
よし、やるぞ!
「行け!」
「グルゥ!」
アスラがロックリザードに向かって飛び出して行くのに続いて俺も走り出す。
ロックリザードのHPバーとレベルが表示される。
レベルは93か。
いけるな。
「キュエ?」
ロックリザードが俺たちに気が付きこちらを見る。
今だ!
「スペースロック!」
俺は右手を伸ばし、イメージして魔力を込め魔法を発動する。
すると、ロックリザードの周囲だけ時間が止まったかのように停止。
そこへアスラが到達。
前足を上げて後ろ足で立つ。
「グルゥ!」
そして全体重をかけた両前足をロックリザードの頭に叩き込む。
アスラ・インパクトだ。
パリィン!
ドゴッ!
ロックリザードの固定されていた周囲の空間が破壊され、更にロックリザードの頭を踏み潰す!
完璧に決まった。
ロックリザードのHPは……半分くらい削れている。
おかしい。
俺の想像ではもっとロックリザードのHPが削れる筈。
……まさか俺のスペースロックが邪魔をした?
だけど、俺のスペースロックにアスラの攻撃を邪魔する程の耐久力はないと思うんだが……。
幸いにもロックリザードは頭が半分地面に埋まって動けずにいるのでチャンスだ。
「アスラもう一度だ!」
「グルゥ!」
再びアスラはロックリザードの頭にアスラ・インパクトを叩き込んだ!
そしてロックリザードのHPは消滅し、光となって消えた。
「やったな、アスラ」
俺はアスラに走り寄ってロックリザードのドロップアイテムをマジックバッグに仕舞ってから頭を撫でる。
「グルゥー」
気持ち良さそうに目を細め鳴くアスラ。
相変わらず可愛い。
それにしても何故アスラ・インパクトの威力が想像していたよりも少なかったのかだが、やっぱり原因は俺のスペースロックくらいしか思いつかない。
さっきのロックリザードが特別な個体には見えなかったしな。
だから、次はアスラの攻撃が当たる直前に上手くスペースロックを解除してみよう。
そう考えた俺はアスラと共に再びロックリザードを探して歩き回る。
すると、運良くまた1体で居るロックリザードに遭遇する。
「さっきと同じ作戦だ。 頼んだ、アスラ」
「グルゥ!」
「キュエエ!」
威嚇してくるロックリザードを気にせず、アスラが走る。
「スペースロック!」
さっきと同じようにイメージして魔力を込め魔法を発動する。
ロックリザードが威嚇した状態で固まった。
「グルゥ!」
そこでアスラが前足を上げてからロックリザードの頭めがけて叩き込む。
今だ!
俺はアスラの両前足がロックリザードの頭に叩き込まれる直前にスペースロックを解除。
ドゴッ!!
そして決まるアスラ・インパクト。
俺の魔法が破壊された音はしない。
ロックリザードのHPは……7割も削れている!
成功だ!
やっぱり俺のスペースロックが邪魔をしていたのか。
そんなに威力が減るとは思わなかったな。
っと、今はロックリザードだ。
「アスラ、トドメだ!」
「グルゥ!」
頭が埋まって動けないロックリザードに再びアスラがアスラ・インパクトを決めてロックリザードは光になって消えた。
アスラがドロップアイテムを咥えて来てくれる。
「ありがとう」
ドロップアイテムを受け取って仕舞い、アスラを撫でる。
「この調子でどんどんいくぞ」
「グルゥ」
この作戦ならロックリザード1体に負ける気がしない。
ただ、スペースロック1回でMPが100程減るのでMP管理には注意しないとな。
♢
それから俺とアスラはロックリザードを探して倒し続けた。
ロックリザードが2体以上の時は避けて1体を倒す。
そうしている内にアスラはメキメキと強くなり、俺は時空間魔法の腕がどんどん上がっていく。
今のアスラはロックリザードをアスラ・インパクトで一撃で倒せるし、俺はわざわざ腕を伸ばしてポーズをとったりしないで、あまり集中せずにスペースロックを発動してロックリザードを止めることが出来るようになっている。
凄い成長だ。
やっぱり90レベル以上のモンスターを倒し続けるっていうのは経験値的に最高だと思う。
ちなみに今の俺とアスラのステータスはこんな感じ。
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名前:ドラゴン
種族:ドラゴニュートLv85
職業:ドラゴンテイマーLv71、時空間魔法使いLv30
スキル:龍化Lv5、テイムLv46、時空間魔法Lv21
モンスター1/2:アスラ
称号:ドラゴン狂い
HP:1392/3370
MP:1290/3821
=================================
名前:アスラ
種族:アースドラゴン(ユニーク)Lv82
主:ドラゴン
スキル:アースブレスLv19、土魔法Lv25、母なる大地
HP:5725/5725
MP:3580/3580
=================================
とうとう俺もアスラもレベルが80を超えた。
ていうか、アスラのHPの伸びがヤバイ。
5000を超えちゃっているし、母なる大地の効果で完全に回復もしている。
俺なんてちょくちょくMP下級回復薬を飲んでいないと間に合わないのに。
アースブレスと土魔法が使っていないからレベルが上がっていないのがちょっと残念ではあるがまぁ十分だろう。
時間は1:00。
ゲーム内時間は16:00だ。
もういい時間だし、そろそろログアウトして寝た方が良いかな。
ゲーム内でもあと1時間くらいで暗くなってくるし。
ただ、RDWをログアウトするには街やセーフティエリアに居なければ出来ない。
セーフティエリアはここら辺にあるのか、俺は知らないのでログアウトするにはウスルの街に戻らなければならない。
今からウスルに戻るとなると、途中で辺りが暗くなってしまうがしょうがないか。
それにMP下級回復薬も残り1個しかないし、初心者回復薬でもいいから街で補給したい。
もしかしてウスルなら下級回復薬も売っているかもな。
「アスラ、ウスルに戻ろうか」
「グルゥ」
そうして俺とアスラは山を出てウスルへの道を歩き始めた。
ゲーム内時間で17時を過ぎた辺りで周囲が暗くなってきた。
なので、アイテムボックスからマジックランタンを取り出して光を点けて周囲を明るくしながら歩く。
道中は行きと同じくモンスターが出てこない。
やっぱり山に入るまではモンスターが出ないんだろう。
楽だから良かった。
暗闇の中での戦闘は大変そうだしな。
そんなことを思いながら2時間以上道を歩いていると街の明かりが見えてきた。
「やっとウスルだ」
「グルゥ」
俺とアスラは足早にウスルに近付いていく。
すると、門の脇に立っていた兵士っぽいNPCが俺とアスラを見てビクッと震える。
マジックランタンを点けているから俺たちに気が付いていたと思うんだけどな。
とりあえず声を掛けよう。
「お疲れ様です」
そう言って会釈する。
「えっあっはい」
えっあっはいって何だよ。
変な返事をするNPCの姿に少し笑いそうになるが、堪えて門をアスラと抜ける。
特に止められなかった。
「ふぅー街に着いたな」
「グルゥ」
「じゃあ俺はログアウトするよ」
「グルゥー」
「また明日な」
「グルゥ」
「ちゃんと来るからさ」
「グルゥ!」
「あぁ絶対な。 ログアウト」
俺は少し寂しそうにするアスラを撫でてからログアウトした。
♢
「戻ってきた」
VRゲーム機のスイッチを切る。
「はぁ」
ゲームの中にもっと居たいが俺も生きている人間なので睡眠も食事も必要だ。
面倒だが、しょうがない。
でも、出来るだけアスラに早く会いたいし、アスラも待っていてくれるだろうから6時に起きよう……もう2時になるけど。
俺はスマホのアラームを6:00にセットして、そのまま目を閉じた。
「おやすみ、アスラ……」
意識がすぐに薄れていった。
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