第10話 アスラの怒り
すいません。
今日は時間を殆ど取れなくて書けず、遅くなってしまいました。
第10話 アスラの怒り
俺とアスラが……正確にはアスラが単騎でロックリザードを倒した後、30分程山を登っていると再びロックリザードが道を塞いでいた。
それも2体。
まずいなぁ。
1体であれば、今のアスラなら簡単に倒せると思う。
でも、複数相手となるとアースブレスなどの範囲攻撃があまり効果ないロックリザードはキツイ筈。
「どうする?」
「グルゥ!」
アスラはやる気満々のようだ。
確かに今までのアスラの強さを見れば、手間取りはしても苦戦はせず、大丈夫なような気もする。
でもなぁ……アスラに任せっきりでアスラが傷付けられるのを見ているだけなのは嫌なんだよ。
なら――
「アスラ、俺がロックリザードを1体引き付ける。 その間にアスラがもう1体のロックリザードを倒してくれ」
「グルゥ!?」
アスラが俺の作戦に反対なのか、首を横に振って否定と心配の感情が伝わってくる。
優しい奴だ。
「大丈夫だよ。 信じてくれ。 アスラがロックリザードを倒す時間くらい稼いでみせるさ」
「グルゥ」
「ははは。 そんなに心配なら早くロックリザードを倒して、こっちに来てくれ。 アスラなら……出来るだろ?」
「グルゥ……グルゥ!」
アスラは俺の言葉に少し悩んだ後、力強く鳴いてやる気を見せた。
頼もしい奴だよ、ほんと。
「じゃあ、行くぞ!」
「グルゥ!」
俺とアスラは背を向けているロックリザードに近付く。
覚悟を決めて、俺はアスラを見て頷きロックリザードに更に接近!
「龍化!」
俺の右手が変化して白い龍の腕になる。
そこで自分が失敗をしたのに気が付く。
ヤバイ!
もしもの時の為に腕輪を外すの忘れてた!
慌てて右手を見る。
腕輪はちゃんと変化した右手にピッタリと嵌っていた。
良かった。
ちゃんとサイズ自動調整が働いてくれたか。
安堵した俺は当初の目的通りにロックリザードの背中に右手を叩き込む!
ドッ!
「キュエ!」
ロックリザードのHPは1割も減っていないように見える。
マジかよ。
硬すぎる。
しょうがない、アスラ頼みだ。
俺は少しだけ距離を取る。
「おい! こっちだ!」
俺は声を上げてロックリザードを引き付けようとする。
俺の攻撃と声に反応してロックリザードがこちらを睨む。
それも2体。
2体共俺を睨んでいるが心配ない。
何故なら俺にはアスラが居るからだ。
「グルゥ!」
「キュエエ!?」
俺の思惑通りにアスラがロックリザードの1体に体当たりをして吹き飛ばして、それを追いかけていった。
それにもう1体のロックリザードが驚いてアスラを見ている。
「余所見している暇はないぞ!」
俺は再びロックリザードに接近して、今度は頭に右手を叩き込む!
「キュエエ!」
「ッ!?」
ロックリザードは攻撃された瞬間に前足を振るい、カウンターをしてきた。
そのカウンターに俺は掠ってしまう。
いってぇ……。
ロックリザードのHPを1割削ることが出来たが、代わりに俺のHPが300以上減っている。
「これじゃ割に合わないぞ。 やっぱり俺じゃキツイか」
俺がロックリザードを倒すことは無理だが、ロックリザードを引き付けることには成功した。
ロックリザードはアスラを無視し俺を睨んでいる。
MPが勿体無いので龍化を解除する。
残りMPは1000くらいか。
これなら無理してあと2発くらいは龍化して攻撃出来るかも。
……いや、無理をする必要はない。
今は時間を稼いでアスラを待つんだ。
俺とロックリザードは睨み合う。
どれ位の時間、睨み合っていたのか分からないが、動かない状態を嫌ったのか、ロックリザードが動く。
ロックリザードの突進だ。
見た目からは想像出来ないスピード。
だが、俺は動かずただ集中する。
イメージ。
絶対に壊れない強固な空間。
そして空間の固定。
今までよりも多くのMPを注ぎ込む。
「うおおぉおおぉ、スペースロォォォクッ!!」
俺は右手を伸ばし、新しい魔法を発動する!
これは俺がスペースウォールが破られた時から考えていた魔法。
対象の周囲の空間を固定して動きを止めるという魔法だ。
四方を固めるので、スペースウォールよりもMPを消費するが、その分強力な筈。
スペースロックによってロックリザードは俺に届く前に止まっていた。
瞬きすら出来ずに時間が止まったように停止している。
本当は時間を止められれば良いんだけど、俺にはまだ無理そうだしな。
それでも成功した。
「やった……」
何とかロックリザードの動きを止められた。
これで後はアスラを待つだけだ。
グッ……グググ。
アスラの方を見ようとした時、嫌な音がロックリザードから聞こえてくる。
まさか……。
「くそっ!」
すぐにロックリザードから距離を取ろうとする。
その瞬間――
パリィィィン!
甲高い音と共に固定された空間が破壊されてロックリザードが飛び出してくる!
そこままロックリザードは俺に突進。
そのスピードは先程よりも速い。
「うおおおおお!」
全力で横に飛んでロックリザードの突進を避けようとする……が。
「ぐああああ!」
僅かにロックリザードの突進を受けてしまった。
いってぇぇぇぇ!
何処かに吹き飛ばされて地面に倒れているのは分かるが、痛くて起き上がれない。
何とかHPを見るが50しか残っていない。
まずいまずい。
回復しないと……。
だが、痛すぎて思うように動けない。
ゲームなのに、こんなに痛いのか。
「はぁはぁ……」
それでも何とか回復しようとすると、俺の顔に影が差す。
見上げるとロックリザードが俺を見下ろしていた。
「ははは……笑えない」
ロックリザードが俺にトドメを刺そうと前足を上げる。
ごめん、アスラ。
俺じゃ時間を稼げなかった。
ロックリザードの前足がゆっくりと迫ってくるのが分かる。
怖い。
恐怖を感じていた。
でも。俺は目を閉じずにしっかりと自分の最後を見ようとした。
きっと、これも俺に必要なことなんだ。
不思議とそう感じていた。
「アスラ……」
ロックリザードの前足が遂に俺の顔に――
「ガァァァァァァァァァァァ!!」
「キュエエ!?」
突然、俺の前からロックリザードが消えた。
一瞬だけアスラが見えた気がする。
「何が……」
俺は震える手でアイテムボックスを開いてHP下級回復薬を取り出して飲んだ。
HPが回復するとともに痛みが引いていく。
身体を起こして周囲を見渡す。
「アスラ!」
すると、アスラがロックリザードを岩に押し付けているのが見えた。
アスラが俺を助けてくれたのか!
立ち上がってアスラに近付く。
アスラの瞳が怒りに燃えている。
ロックリザードに激怒していた。
アスラは何度もロックリザードを岩に叩きつける。
初めて見たアスラの激しい怒り。
初めて感じたアスラの感情。
「アスラ……」
その怒りはロックリザードが消えてなくなるまで続いた。
♢
「グルゥ……」
ロックリザードを倒したアスラは頭を下げて俺に近付いてきた。
アスラから今まで以上に様々な感情を感じる。
俺に対しての心配、申し訳なさ。
自分に対しての怒り、不甲斐なさ。
そんなアスラを見て、俺は自分がアスラにこんな想いをさせてしまったのを後悔した。
後悔したが、今はただ後悔している訳にはいかない。
俺が出来ることは決まっている。
「アスラ」
俺は全身で優しくアスラを抱き締める。
アスラはビクッと震える。
「アスラ、ごめんな。 自分を責めることはない。 お前の所為じゃない。 俺の力不足と甘い考えの所為だ」
「グルゥ……」
「そう言ってもお前は納得しないよな」
分かってる。
アスラは優しく奴だからな。
「もう同じことを繰り返さないように……強くなろう。 俺と一緒に強くなろう、アスラ。 もうあんな奴らに苦戦しないように」
「グルゥ」
「あぁ大丈夫だ。 俺とお前なら強くなれる。 心配か?」
「グルゥー」
「なら、もう大丈夫だな」
俺はアスラから身体を離そうとする。
だが、アスラは自分から近付いてきて俺に頭を擦り寄せる。
ははっ甘えん坊だな。
「もう少し、こうしていようか」
「グルゥ」
俺は再びアスラを抱き締めた。
アスラが満足するまで。
沢山の感想、評価、ブクマ感謝です!
ちなみにアスラに任せていれば、ロックリザード2体は時間がかかりますが倒せます。




