第7匹 二匹の居候猫
第7匹 二匹の居候猫
1
「という訳で、今日からここでお世話になる事になったムムです。よろしくお願いします」
「よろしくじゃねえよ!」
あの後屋根をどうするか話し合った結果、しばらく俺の寝る場所はリビング(みたいな)場所になり、ついでにこの空飛ぶ猫(?)が、弁償するまで家に居候する事になった。
今サラッと説明したが、結構ただ事じゃないよな。てか、こいつ何者だよ。
「ムムですよ」
「いや、それは分かってるからな」
名前聞いてねえから。
「でもあなたも居候しているんでしょ?」
「そ、それは…」
否定できないですね、はい。
「二人とも静かにしてよね。もう夜なんだから」
「「はい」」
まあ、この家の主には逆らえないけど。
2
「ミケさん、起きてますか?」
夜。寝床が変わったせいでまた寝付けないでいると、ムムが話しかけてきた。てか、何であいつはソファで寝てるのに、俺は床で寝てるんだよ…。
「起きてるけどどうかしたか? トイレに行けないのか?」
「私子供じゃないですからね。…せっかくだからお話でもしようかと」
「何じゃそりゃ」
まあ、寝つけなくて暇なので彼女の話に付き合う事にした。
「ミケさんは元は人間だだったりするのですか?」
「まあな。てか、お前もなのか?」
「はい」
ムムは静かに答えた。そうか、彼女も元は人間なのか…。
「じゃあお前も…その、死んだのか?」
「はい。ただ、原因とか家族とか思い出せないですけどね」
「俺と同じか…」
いや、もしかしたら元が人間だったやつは、みんな同じ可能性がある。思い出そうにも思い出せない人間だった頃の記憶。ただ一つ分かるのは、元は人間で死んだという事実だけ。それがどれだけ悲しい事なのか…。
「ちなみにお前はいつ頃からこの世界に?」
「丁度一年前ぐらいです」
「その翼は?」
「この世界で目を覚ました時から既に…」
「生えてたのか…」
全く不思議なやつだなこいつ。でも俺と同じように、元は人間。こいつと俺は似ているんだ。というよりは、元は人間だと考えると、同じか…。
「お前はこの世界に最初やって来た時はどう思った?」
「流石にショックでしたよ。いきなりこの世界で目を覚まして、死んでいると知って、最初は全然理解出来ませんでしたよ」
「だよな…」
未だに俺は理解できてねぇけど。結局あの紙の事も分かってねぇし。でもこいつの話を聞いて、一つ分かった。
「やっぱ似てるんだな…」
「何がですか?」
「いや何でも…」
それは、この世界で俺は決して一人じゃねえってこと。他にも沢山俺やこいつと同じく不安を抱えてるやつが居るって事。
第8匹 サクラとサクヤと迷い猫 へ続く