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Cat's World  作者: りょう
第2部
42/49

第41匹 それぞれの生きる道

第41匹 それぞれの生きる道


1

「どうしてですか? 今戻らなくてもいいじゃないですか?」

彼女の言うとおり、急ぐ必要はないのかもしれない。でも…。

「あのなムム。お前の気持ちは分かる。けどな」

「けどなんですか?」

「あっちで俺が戻ってくるのを待ってくれている人がいるんだ。それを放っておいて、俺はこの世界で生きていくにはいかないんだよ」

俺には俺の生きる道がある。猫としてではなく、人間として。まだ生きている者として。

「そんなの…分かっていますよ…

。ミケさんには…待ってくれている人が居るのを…それでも私は…ミケさんに居てほしいんですよ…

わがままなのは分かっていても私には…私には…ミケさんが必要なんです!」

「ムム…」

ここまで言われてしまうと、どうも彼女が可哀想になってしまう。それでも俺は心は折れない。

「お前の気持ちはすごく伝わってきた。でもな、さっきも言った通り俺やユキもまだ生きている。戻ってくるのを待っている人がいる。にゃんこワールドでの生活もいいかもしれない。でも俺は…」

ここで言葉を止めてしまう。これ以上何か言ったら、彼女を余計傷つけてしまう様で、怖かったから…。

「もう覆す事はないんですね?」

「ああ」

それを読み取ったのか、諦めた様にムムは言った。

「分かりました…。その代わり、一つ約束してください」

「約束?」

「またこの世界に戻ってくるって、約束してください」

「またこの世界にか…」

まあ、悪くない。可能なのかは分からないけど。

「分かった、約束する」

「絶対ですよ?」

「ああ」

俺達は小さく指きりをした。

2

ムムが寝床につき、俺が一人になった深夜。チルが自分の部屋から出てきた。

「あ、チル…」

声をかけるが無視をされる。その代わりに彼女は小さく呟いた。

「嘘つき」

「お、おい!」

彼女は俺を一切無視して、すぐに部屋に戻ってしまった。

(嘘つきって…)

確かに嘘はついてしまったけど、そんなに怒らなくてもいいのにどうして…。

(やっぱりあいつもムムと同じで…)

ムムは何とか納得してくれたけど、チルは駄目なのか…。

(ちゃんとお別れを言えそうにないな…)

こんな悲しい事なんてあるのだろうか?

長い間一緒だった彼女と、こんなあっさりさようならしていいのだろうか?

家族なのにこのままでいいのだろうか?

俺は…このままでいいのだろうか?

(何か俺が居た証でも残しておけば、少しでもあいつは楽になれるかな?)

俺がここに居た証を残す。

俺が彼女に出来る最初で最後のプレゼント。俺にはそれが出来るのだろうか?分からない。それでも…

(やるしかないな)

俺は眠い目を擦りながら、明日の為にとある作業に取り掛かる事にした。

(チル…)

第42匹 また会えるその日まで へ続く

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