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Cat's World  作者: りょう
第2部
38/49

第37匹 Change the World

第37匹 Change the World



「貴様、何故意識を取り戻せた?」

「そんなの決まってるだろう…」

刺された腹部が強烈に痛む。それでも俺は、立ち上がる。

「俺には守りたいやつがいる。そんな奴を放っておいて、元の世界に戻れれかよ」

「何を言っている? 元の世界だと? まさか貴様…」

「ああ。俺は人間としてまだ生きている。現に俺は、一度人間に戻った」

「馬鹿な! そんな話があるわけない」

「あるから言ってんだっよ!」

再び剣を握り、エルーシャに向かって剣を振りかざす。反応が遅れたエルーシャは避けきれず、剣がエルーシャの体に深い傷をつける。

「ぎゃぁぁ」

「俺は十五年前にできなったことを、この世界でしてみせる」

家族を失った俺は、絶望の淵にいた。こんな世界はいらないから、誰もが平和で暮らせる世界を望んだ。世界を変えたかったが、そんな事は出来やしなかったんだ。小さい存在でしかない俺なんかには…。

でも今は違う。俺は世界を変えられるチャンスをこの手に握っている。だから…。

「これでラストぉぉ!」

こんな所で諦めやしない!

俺は最後の力を振り絞って、一撃を拳でエルーシャにかます。

「うぉぉぉ」

俺はこの世界が好きだ。最初はふざけた世界だと思っていた。でもムム、クポ、チル、ユキ、その他沢山の猫と出会った。この出会いがなければ、ここまで俺を動かすことができなかった。この世界から憎しみや悲しみが無くなれば、皆が笑顔で暮らせる世界が出来上がる。完璧とまでは言えないけど、小さな誰かが望めば、きっと変えられるはず。今の俺のように動き出せばきっと。

「ぐうぁぁ」

俺の一撃を食らったエルーシャはそのまま吹っ飛び、壁に衝突。そしてそのまま、気を失っていた。

「はぁ、はぁ」

一瞬空気が静まった後、その場にいた誰かが高らかに宣言する。

「女王エルーシャが倒れたぞぉぉ」

すると、辺りが一斉に歓声に湧いた。

「ミケぇぇ」

そして、チルが抱きついてくる。

「うわ、馬鹿! そんか勢いよくきたら…」

彼女を支えられず倒れてしまう。

立ち上がる為にチルをどかそうとするが、どかない。俺に抱きついたまま、彼女は泣いていた…。

「馬鹿はどっちよ…。私どれだけ心配したかと思ってるのよ」

「チル…」

「私ほんの少しだけ思い出したのよ。人間だった頃の記憶」

「え?」

「私にはお兄ちゃんが居た。いつも優しくて、ずっと側に居てくれたお兄ちゃんが…」

「奈穂…」

思わず妹の名前を呼んでしまう。これは彼女、チルの人間だった頃の名前。

「お兄ちゃん…」

それに反応してチルがそう言う。ああ、この響き。十五年振りだな…。

「私の側にずっと居て…」

「ああ。俺はお前の側に出来る限り居るよ…」

「ありがとう…」

でもその願いを叶える事は出来ない。俺は…元の世界に帰らなければならない。もう一人の大切な人と一緒に…。

第38匹 残り少ない時間 へ続く

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