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Cat's World  作者: りょう
第2部
37/49

第36匹 ミケvsエルーシャ

第36匹 ミケvsエルーシャ


1

何かこの場を打開できる方法は…。

俺は今の状況を冷静に分析した。今俺とチルは手足を縛られてるから使える事ができない。喉元には剣が突きつけられている。下手に動いたら殺されるだろう。

唯一使えるのが突きつけられている剣…。

(そうだ、一つだけ打開できる方法があった)

俺は一旦両腕を下に下げて、思いっきり上に上げた。

「なっ…!」

エルーシャが驚きの声をあげる。剣を利用して、うまく縛っている物を切り離す事に成功したのだ。

「ミケ!」

チルも声を上げる。

両手が自由になった俺は、近くに落ちていた剣を握り、立ち上がった。

「貴様、私に適うとでも思っているのか」

「そんなのは分からねえ。ただ俺は、大切な者を守るために今剣を握った。ただそれだけだ」

剣を構え、エルーシャと対峙する。勝てる自身があるとは言えない。ただ俺は、チルの為、家族の為に戦う。この先にどんな結末が待ち構えていようと!

「行くぞ!」

2

剣を両手に握りしめ、エルーシャの所へかけて行き、まずは一振り。当然避けられる。

「私はブラックキャット王国の女王よ。あなたみたいな普通の三毛猫が適うはずがないわ」

横薙ぎがきたのでしゃがんで避け、後転をして一旦距離を取る。

「あんたが女王なのは知っている。俺が普通の三毛猫だって事も知っている。だが、俺には仲間がいる。たとえそれが力とならなくても、仲間の想いは俺に伝わってくるんだよ!」

再び剣を振るが、今度は受け止められつばぜり合いになる。

「そんな馬鹿馬鹿しい力で、この私に傷一つつけられないわよ!」

つばぜり合いに負け弾かれる。

しまった…。

「ミケ、危ない!」

チャンスとばかりにエルーシャは突きを放つ。弾かれた反動で何もできない俺は、それを防御できずに剣が腹部に刺さる。

「ぐはっ」

「あら、早くも決着かしら」

「ミケー!」

今度はリック王の声が響く。

やっぱり駄目なのか俺は…。意識が遠のき始める。やっぱり俺は家族を、仲間も誰も守れないのか…。

(チル、ごめん…)

俺は意識を失った。

3

『なあチル、一つ聞いていいか?』

『何?』

この世界に来て少し経った頃、俺はチルにこんな事を聞いてみた。

『お前はこの世界が好きか?』

『何よいきなり』

『いや、俺はこの世界に来たばかりだからさ、いい所なのか気になってさ』

『ふーん』

チルは少し考えた後、こんな答えを出した。

『好きじゃないかな』

『え?』

その答えはあまりに予想外だったので、俺は思わず驚いてしまった。

『だってほぼ毎日のようにどこかで、争いが起こってるんでしょ?そんな世界好きになれるはずがないじゃない』

『確かにな…』

俺もそんな世界は嫌いだ。毎日のように争って、その度に誰かが命を落としている。そんな世界が好きになれるはずがない。

『でも争いがない世界は、私は好きかな』

『そうだな』

だれだって争いがないそんな世界を望んでいる。でもそんなのが叶うはずがない。争いなんて無くなるはずがないんだから…。

(それでもチルは、争いが無くなるのを望んでいる。だったら俺はそれを…)

手助けすればいいんじゃないか?今のこの状況は、世界を変えれるチャンスではないか。だったら諦めてる場合じゃない。

「うぐっ…」

「なっ! 意識を取り戻した?」

「ミケ!」

俺は残り少ない力で、何とか意識を取り戻す事に成功した。

第37匹 Change the World へ続く

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