第30匹 優紀とユキ
第30匹 優紀とユキ
1
俺はユキさんを部屋に呼び、ある物を彼女に渡した。
「な、何であなたがこれを?」
それは勿論星型のペンダント。俺が貰ったあのペンダントだ。人間に戻った時にもそれは身につけていて、今もこうして手元にある。つまりこのペンダントはどちらの世界にも共通するアイテム。
「やっぱり知っているんですよね。あなた自身も持っていたのですから」
「どうして私がこれを持っているのを知っているんですかあなたは?」
「クポを引き取りに来た日、あなたはそれを身につけていた。これを身につけていれば、自分が探しているある人物を見つけられるから。今日身につけていなかったのは、必要ないと分かったからでしょ? チルは何の反応も示さないと分かっていたから」
「そこまで分かるのはおかしくないかしら?第一ペンダントを持っているのは、私以外にあと二人だけよ。私はその人物を知っているわ」
「でもその内の一人は事件に遭い、意識をずっと目を覚まさず心配した。彼と幼馴染であり、恋人であるあなたは彼に、会いたいと願った。だからこの世界にあなたは呼ばれたんですよ」
「だからどうしてそこまで私の事を分かるの? この話を知っているのは優斗君と、拓也君だけなの…あっ」
どうやらようやく気づいてもらえたらしい。ペンダント持ってる時点で分かるだろ普通。
「まさかお前が、この世界に来ているとは思っていなかったよ優紀」
その言葉は決して猫の彼女に向けた言葉ではない。優紀という一人の人間に向けられた言葉。
「優斗君なの?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ」
「本当…なんだよね。優斗君なんだよね?」
「だから何度も言ってるだろ?」
「ゆ…優斗君!!」
「馬鹿、そんな勢いで来たら、たおれ…」
ユキは感極まったのか、俺に飛びついて来た。俺は彼女を支える事が出来ずに倒れてしまう。
「馬鹿なのはそっちよ。勝手に意識不明になんかになって。でも…会えてよかった…」
「優紀…」
やっぱり優紀だったんだ。俺達は二ヶ月の時を経て、再会できた。今は猫の姿かもしれないけど、これでいいんだ。あとは、全てを済ませて…。
2
ミケとユキが部屋に入って少しした後の、ミケの部屋の前にて。
「チルさん、盗み聞きなんてずるいじゃないですか?」
「いいのよ。ミケが何か隠しているか分かるんだから。そういうあんたも聞いてるじゃない」
「まあ、そうですけど…」
「どうしたの?」
「私何か嫌な予感がするんですよね」
この後、その嫌な予感が的中するとは彼女達は思ってもいなかった。
第31匹 いつまでも隠せない事 へ続く




