第2匹 敵対する二つの王国
第2匹 敵対する二つの王国
1
あまりの光景に驚愕する俺に対して、チルは補足する。
「確かにここだけ見ると、そう思えるわ。でも、この世界にはちゃんと二つの王国に分かれてるの」
「二つの王国?」
「ええ。私達が今いるのはニャンタ王国の領土。で、その王国の敵対国がブラックキャット王国って言うの」
「無茶苦茶な名前だな。この世界の国名は…」
何だよニャンタって…。にゃんこワールドもそうだけど。まだ、ブラックキャットの方が格好いいだろう。
「てか、なんで敵対してるんだよ。同じ世界に住む者同士、仲良くしろよ」
「それは人間の世界でも同じでしょ?」
「そりゃあそうだけど・・」
それは正論だ。同じ世界に住んでいるもの同士が、必ずしも仲良くなれるわけじゃない。だからといって、わざわざ転生した先まで争いを起こさなくても・・。
「てか、お前も元は人間なのか?」
「いいえ。私はこの世界で生まれたれっきとしたネコよ」
「じゃあ何でそんなに・・」
「人間に詳しいのかって?それは私にも分からないのよね」
「それはおかしいだろう。何で分からねえんだよ」
「だから知らないって言ってるでしょ!! 私の両親に関係あるんじゃないかしら!!」
急に声を張り上げるチル。な、何だ?
「な、何だよいきなり」
突然態度が変わった彼女に驚く俺。
「っ! ご、ごめんなさい…。怒るつもりはなかったんだけど…」
「あ、謝るなよ。俺が失礼な事言っただけなんだから」
そしてすぐに冷静になるチル。感情の変化が激しいんだな…。でもそれにしたって…。
「本当に…ごめんなさい」
あの怒りよう、彼女は何か両親とあったのだろうか?
(この世界で生まれたって事は、恐らくこいつの両親もこの世界に居るんだろうな…)
でも家には彼女以外誰もいなかった。どこかへ出かけたのだろうか?
(でもそんなんじゃ、あんなに怒らない…か)
まあ、そんな事は関係なさそうだな。
2
その日の晩、俺はチルから与えられた部屋(意外に綺麗な部屋)で、眠りにつこうとするが…。
(どうやって寝るんだ…)
布団などは ある訳がなく、地面で寝るのだがどう考えても寝る方法が思いつかない。さっきから何パターンも試しているのだが、何一ついい眠り方が思いつかない。
十分後
(体を横に倒して寝るのが一番いいか…)
何とかまともな寝方を見つけ、それを試しに行ってみる。お、中々いいかも…。
(これなら…眠れそうだな…)
目を閉じ、何も考えずひたすら寝る事に専念する。
(おやすみ…チル…)
こうして俺の一日は終わろうと…。
………
「って、こんな状態で普通に眠れるかーー!」
する訳がなく、俺はすぐに目を覚ます。
どうやらしばらくは、不眠症になりそうだ…。
第3匹 人間だったあの頃 へ続く