表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cat's World  作者: りょう
第2部
29/49

第28匹 もう一度あの場所へ

第28匹 もう一度あの場所へ


1

「じゃあお前は、その世界で優紀に出会ったんだな?」

「ああ」

「それでもう一度行くのか?」

「ああ」

「どうやって行くんだよ?」

「それは…」

確かに今のままじゃあ行けない。でも何で優紀は行けたんだ?

「優紀はお前が意識不明になってから、ずっと様子が変だった。恋人であるお前に、ずっと呼びかけていたんだよ。戻ってきてって」

そうか、分かったぞ。

俺の側でずっと眠っている女性、つまり優紀はここで願っていたんだ。会いたいって。という事はもしかしたら…。

「もしかしたら優紀のその想いが、俺の居る世界に導いてくれたのかもしれない。彼女の意識体だけがこの世界に導かれ、猫として形になった」

「あり得ない話かもしれないが、もしかしたらそうなのかもな」

「じゃあ…」

俺はゆっくり瞼を閉じる。もう一度あの場所に行くなら、今のタイミングしかない。誰も俺が帰ってきた事に気づいていない今しか。

「優斗、お前まさか…」

「ああ。俺は優紀に会いたいって想ってみる。そうすればもう一度行けるかもしれない。現に俺の意識だけがあの世界に行けたんだからな」

「必ず帰ってこいよ」

「必ず帰ってくる。優紀も連れてな」

音が聞こえなくなる。拓也も黙ったのだろう。さて、行きますか。

俺は優紀やチルの事を想った。もう一度会いたい、もう一度あの場所に行きたいと。

頼む、行ってくれ…。

2

どの位経っただろうか?先ほどから草の揺れる音しか聞こえてこない。という事はまさか…。

俺はゆっくり瞼を開く。

(やっぱり…)

俺は戻ってきたんだ。にゃんこワールドに。

(身体はあの時のままか…)

俺はまた三毛猫だった。流石に刺された傷はない。

(駄目だ、身体が重い)

身体を動かせずにいると、近くから草を掻き分ける音が聞こえた。

(誰かくる)

とりあえず音も出さずに、空を眺めていると誰かがやって来た。そいつは…。

「う、嘘…。三毛猫?でもあり得ない」

俺が二ヶ月ほどお世話になった猫。

「チルか?」

「その声ってまさか…」

誰よりも大切だった人。

「ミケ? ミケなの!」

十五年前守れなかった人が猫になった姿。

「ああ」

「ミケ!!」

チルだった。

チルは俺だと分かるとすぐに抱きついてきた。こいつ、泣いてやがる…。

「ったく、泣いてんじゃねえよ」

「だって…だって…、あの時消えたから、本当に死んだんだと思って…」

「チル…」

そういうのは、本当にお前らしいよ。

「ただいま、チル」

「お帰りなさい、ミケ」

俺の言葉にチルは、涙を流しながらも精一杯の笑顔で答えた。

第29匹 Home へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ