第26匹 守るべき命
第26匹 守るべき命
1
翌日、俺はチルに内緒である場所に向かった。
(竹刀じゃ勝てるはずがないよな。絶対…)
それはちょっとした護身用武器が置いてある店だった。ここならきっと…。
「こんな店に何の用かしらね? 私に黙ってまで来るのは、理由があるのかしら」
いざ入ろうとした瞬間、後ろから声がした。何でだ、バレないように出てきたはずだったのだが…。
「何でついて来たんだよ」
「家にあったお金が、あなたが外部出したと同時に少し減ってたから、おかしいと思ったからついて来ていたのよ。悪いかしら?」
「まあ悪いとは言わねえが、帰ってくれねえかなチル」
「それは無理な話よ。あなたには説明してもらわなきゃ」
「それは絶対に無理だ」
「どうしてよ」
「決まってるだろ! お前には知って欲しくないんだよ!」
命が狙われてるなんて、簡単に話せるはずがない。なのに、何でお前は…。
「知って欲しくないって…やっぱりそうなの。私なんか誰にも信じてもらえないのね」
「違う、俺はただ…」
「私達家族になれると思ってたのに、私の勘違いだったのかもしれないね」
「勘違いなんかじゃねえよ。俺達はもう立派な家族になれたよ」
「ごめんねミケ。私がバカだった!」
「チル!」
理解してくれないんだよ…。俺はお前を守りたいのに…。あの時何もできなかったんだから…。俺は守れなかったんだから…。
2
チルが居なくなった後、買い物する気もなかったので、帰宅する事に。だが…。
「帰ってない?」
「はい。ミケさんを追って出たはずなのに…。すれ違ったんでしょうか?」
「あの馬鹿」
「あ、ちょっとミケさん!」
俺は走り出していた。今の状況であいつを一人にしたら、確実に殺される。
(俺が悪いんだ…、俺が…)
あの時話せば良かったんだ。なのに話さなかったんだ俺は。馬鹿なのは俺なんだ。何にも分かっていないのは俺なんだ。
(ちくしょう…ちくしょう…)
もう目の前で誰かを失いたくない。もう一人にはなりたくない!
俺は少しずつ降り始めた雨の中で
、チルの姿を必死に探した。
そして…。
「チル!」
俺は彼女の姿を見つけた。シルバに襲われる直前の彼女を…。
「チルー!」
俺は叫びながら彼女へ走り、そして…。
「ぐふっ!」
「え? み…け? どうして?」
彼女を庇い、そしてシルバに刺された。
「ちっ、こんな所に来るとは…」
ナイフを引き抜くて、シルバはさっさと去ってしまった。
これで良かったんだよな。俺はチルを守れたんだから良かったんだよな。
「きゃーー!」
第27匹 果たせなかった事 へ続く




