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Cat's World  作者: りょう
第1部
11/49

第10匹 光の玉と俺の記憶

第10匹 光の玉と俺の記憶


1

この世界に来て一ヶ月と少し経ちました。

あむ迷い猫の提案により、俺には他に三匹の家族が出来ました。

ああ、この世界に来て良かった…

「って、良い訳あるかぁぁ」

夜の草原に俺の声が響き渡る。ああ、もう一回叫んでやろうかな!

「やめなさいよ、恥ずかしいから」

チルに止められました。

「叫びたい気持ちは分かるけど、流石に近所迷惑になるわよ」

いや、お前の家の周り草原ですから!

近所がありませんから!

「い、いちいちうるさいわよ」

やっぱこいつ、俺の心を読んでやがる。

「てか、何でこんな時間まで起きてるんだよ」

理由は分かるが、あえて尋ねる。

「ちょっと調べ事をしてて、寝てなかったのよ」

「調べ事って、例の紙きれの事か?」

「うん」

最近色々あってすっかり忘れていたが、この世界に来て間もない頃、慌てん坊猫とぶつかって、例の紙を拾ったんだっけ。

「光の玉とか書いてあったけど、何か意味があるのか?」

「うん。まあちょっとね…」

「ちょっとねじゃねえよ。お前がここまで無理して調べるって事は、絶対何かあるんだろ?」

「私別に無理してないわよ」

「嘘つくなよ。お前が毎晩夜ふかししているの、俺は知ってるぞ」

「え? あんた寝てなかったの?」

「現に今起きてるんだから、気づけよ」

「あ…」

相変わらず寝つけずにいた俺は、こいつがどれだけ無理しているのかは分かっていた。毎晩部屋の明かりは付いてたし、それが朝まで消えていなかったのは知っている。だから俺はこうして聞いたんだ。

「ま、そんな訳だから少しぐらい話してくれたっていいんじゃねえのか?」

「まあ、そうだけど…」

チルは少しだけ考えた後、こう言った。

「分かったわ。話してあげる。その代わり…」

「その代わり?」

「あなたが取り戻し始めてるその記憶の事、話してくれない?」

「やっぱりそうなるか…」

「当たり前でしょ」

「ったく、いつから分かってた?」

「ムムが家に居候し始めた頃から」

「早いなおい」

「あなたの様子を見ればそんなの分かるわよ」

でも彼女の言っている事は事実だ。俺は最近人間だった頃の記憶を取り戻している。

「でもそれって、普通はあり得ないのよ。ムムを見れば分かるでしょ?」

チルが言うからには俺は特例らしい。でも正直、俺は記憶を取り戻したくなかった。あまりに残酷な人生を思い出したくなかった。

いつの間にか俺は、記憶を取り戻す事を恐れていたんだ。

「分かった、俺も話すよ」

俺とチルはこの晩、お互い隠していた事を話した。全てとは言えないが、一つ分かったことがある。

それは俺と例の光の玉には、何ならかの関係があるという事だった。

第11匹 チルの秘密 へ続く

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