理科の実験
マイスター「今月は、実験をします。」
子供達「わーい、何の実験ですか?」
マイスター「微生物の培養実験です。培養用のグローブ(球状)培養地を用意しましたから、りっぱな国を作ってください」
アッラ・ヤハウ・アミタの三人は、仲良しです。培養地でできたグローブに、「テラ」という名前をつけて、可愛がりました。
3日後
アッラ「おーい、テラの様子はどうだい?」
ヤハウ「うーん。一回火であぶってから、水ぶっかけたら、周りに綿みたいなものができちゃってさぁ。」
アッラ「なんで、そんなことしたの?」
ヤハウ「うん、この参考書に書いてあったの。大気層作れば生物が発生するって。」
アッラ「んで、生き物はできたの?」
ヤハウ「いや、それがまだみたい。」
5日後
アミタ「どーう?生物できたぁ?」
アッラ「いや、まだ発生しないよ。」
アミタ「んじゃ、これかけてみるみる?」
アッラ「なんだい、それ?」
アミタ「給食のスープの残り。」
アッラ「そんなもの入れて、どうなるの?」
ヤハウ「あー、そういえば、マイスターが、原始スープから生物が発生するって言ってたなあ。」
アッラ「じゃあ、早速ぶっかけてみよう。」
7日後
アミタ「どーう?原始スープ、効いた?」
アッラ「いや、スープぶっかけただけじゃ、だめみたいね。」
アミタ「んじゃ、これ入れてみる。」
アッラ「なんだい、それ?」
アミタ「マイスターにもらったんだけど。ホム・サピっていう微生物の素。きっとテラが活性化するって言ってたよ。」
アッラ「そう。じゃもーらった。」
9日後
アッラ「おーい、ホム・サピは、しっかり増殖してるかい?」
ヤハウ「それがねぇ。」アッラは、テラを覗き込んだ。
アッラ「なんか、こじんまりとコロニー作ってるだけだねぇ。」
ヤハウ「そうなんだよ。もっと、活発に増殖して、テラを活性化させてほしいんだけど。」
アッラ「じゃあ、これ使ってみよう。」
ヤハウ「何、それ?」
アッラ「インテールって言ってね、ホム・サピにちょっとした増殖能力を追加するんだよ。きっと、活性化するぞー。」
12日後
アッラ「おーい、例のテラは元気してるか?」
ヤハウ「うーん。元気は元気なんだけど、最近ちょっと微熱気味なんだぁ。」
アッラ「ホム・サピは、どうだい?」
ヤハウ「それが、増えるわ増えるわ。やたらと増殖するんだよ。たまには共食いもするんだけど・・・。」
アッラ「お利巧なのを残して、一回洗い流してみたら?」
ヤハウ「そうだね。」
ヤハウは、お利巧なホム・サピを選んで籠に入れ、テラを洗浄した。
14日後
アミタ「よーう。テラは元気?」
ヤハウ「それが、なかなかコントロールできなくってね。ホム・サピって想像できないような成長をするんだよぉ。」
アミタがシャーレを覗き込むと、ホム・サピのコロニーは、細長いアメーバの仮足のようなものを盛んに出したり引っ込めたりして、他の細菌の領土を荒らしているようだった。
アミタ「他の細菌が、随分迷惑そうじゃないか。」
ヤハウ「そうなんだよぉ。必要以上に、やけにちょっかいを出してね。」
アッラ「ちょっと焼いてみようか。」アッラは、貪欲に他の微生物を侵食しようとしているホムの仮足に、ライターの火を浴びせて、焼き切っていった。
18日後
アッラ「テラは平和かな?」
ヤハウ「やっぱり、ホム・サピがはびこって来てね。もう絶滅しちゃった細菌がけっこう出てきたよ。」
アッラ「そら、ちょっと警告したらなあかんかもな。」
ヤハウ「どうするの?」
アッラ「これこれ。」と言って、アッラは、試験管に入った白い粉をテラに吹きかけた。
アミタ「何だよ、それ。」
アッラ「ヒブっていう、ウィルスだよ。ホムの細胞に入り込んで狙い撃ち。」
ビープ ビープ
突然、理科室の警報機がけたたましく鳴り渡った。
マイスター「テラのホム・サピが、外部感染力を持ちました。危険ですから処置してください。」
ヤハウ「どうしたらいいんですかぁ?」
マイスター「全身洗浄するか、リスタートするしかないですね。」
ヤハウ「全身洗浄は、一度失敗してるからなぁ。」
ヤハウは迷ったが、最初からやり直したほうが楽だなと思った。ヤハウは「消去」のボタンを押した。
2023年3月31日
私たちの銀河系の中の私たちの太陽系の第三惑星が忽然と消滅した。