表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方へ届くファンタジア  作者: 槙村まき
第五曲 五日目
39/55

(10) 精霊召喚・上

 電球に照らされているだけの、薄暗い部屋の中。

 電球に負けじと光を発しているパソコンを見ることなく、水練は目を瞑り、静かに呪文を紡いでいた。

「わたしに使える水の精霊、ウンディーネ。出てきて」

 ――ピチョン。

 水の落ちる音が響いた。

 同時に、水練の背後に誰かが立つ気配がする。

「お呼びでしょうか、お嬢様」

 少年気のある、男性の声が響いた。

 水練は目を開けると、振り返ることなくパソコンの横にある鏡の中を見る。

 そこには、侍のような恰好をした男性がいた。男性は、水練よりも透明な、一見すると透けてるようにも見える水の髪の毛を、ちょんまげの変わりにポニーテイルに結っていた。凛々しい顔には表情はなく、ただ淡々と職務を全うする機会のように、彼は一回一礼をする。

「別に、用はないよー。なんとなく、呼び出してみたくって」

「……私共精霊を、用なく呼び出すとは。さすがお嬢様です」

 恐らく皮肉ではないのだろう。ウンディーネは全く表情を変えることはない。ただ、自分を呼び出した主の背を、ジッと眺めているだけだった。

「では、私は戻ってもよろしいでしょうか?」

「駄目。もう少し、傍にいて欲しいの」

「……それは、あの方に言ってあげた方がよいのでは? 貴方がお慕いしている、あの方に」

 ウンディーネの言葉に、水練は一瞬眉をひそめる。

「それは、余計のお世話よ」

「これは失礼しました。で、お嬢様は三人と一緒に行かないので?」

「うーん。なんか今日は外に出る気分じゃなくって。だって、もう夜中よ。なんでこんな時間に外に出ないとならないんだか。というか、わたしたちの行動、あんた知ってるんだ」

「……ええ」

「やっぱり、気になるの?」

 その言葉に、ウンディーネは珍しく困惑の表情をした。

「ふーん。まあ、前の契約者だったら当然よね。白銀礼亜、だっけ? まあ、彼女が契約を解除したから、今わたしが契約できてるんだけどね」

 楽しそうに笑い、水練は鏡の中のウンディーネを見る。彼は、もう無表情に取り繕ってることはなく、悲しそうに顔を歪めていた。

 回転いすをぐるりと回し、水練は振り返ると、今にも泣きそうなウンディーネに言った。違う自分になるための、方言を交えて。

「ウンディーネ。今の主はあたしや。そこらへんの奴には負けん力を持っとるけど、体力はない。だから、いつまでもアンタに守って欲しい。お願いな」

 ウンディーネは真剣な顔をする。

「当たり前です。お嬢様。私は、貴方を守るためにいるのですから」

 満足そうな笑みを、水練は浮かべる。



    ◇◆◇



 琥珀の絶叫に、唄は眉を潜めた。

(うるさい)

 正直、目の前で繰り広げられていること――白銀礼亜という人物のことは、風羽がさっき話した、情報が消された、ということぐらいしかわかっていなかった。他にわかったことがあるらしいが、それを聞くよりも先に水鶏に言葉を挟まれ、そして今は琥珀が何故か怒りをあらわにしている。それも、敵であるはずの自分たちではなく、陽性や水鶏に向かって。

 悲しそうな表情をしている陽性は、隣にいる琥珀に声をかけようか迷っている素振りをしている。

 陽性を見ていた水鶏は、チラリと琥珀を見た後、ムスッとした顔で近くにいるヒカリを睨んでいる。

 睨まれているヒカリは、どうしていいのかわからないのか、視線を忙しなく動かして、風羽に助けをこいている。

 風羽は、そんなヒカリの視線を無視して、はぁ、と大きくため息をついた。

「話を聞きたいけど、向こうにも向こうの事情があるらしい。どうする、唄?」

「どうするって……」

「僕はどっちでもいいけど、君は詳しい話を知りたいんじゃないのかい? それとも、詳しいことは知らなくてもいいから、早いとこ『虹色のダイヤモンド』を奪うことにする?」

 唄は口をつぐんだ。

(どうって……)

 白銀礼亜という人物。それから、さっき琥珀がつぶやいた白亜という名前。

 風羽がヒカリの姉から聞いたことなど。

 詳しく知りたい。そう思うが、時刻はとっくに夜中だ。

 そろそろ眠気も限界に来ている。

 唄は決めて、口を開いた。

「早いとこ『虹色のダイヤモンド』を奪って帰りましょう」

「そうと決まったら、早く終わらせたいから精霊を使うね。彼女なら、『虹色のダイヤモンド』のある場所ぐらいわかると思うから」

 風羽はそう言い、少し微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ