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彼方へ届くファンタジア  作者: 槙村まき
第四曲 四日目
29/55

(7) 疑問

 今日の授業が全て終わったことを告げる、チャイムが鳴り響いた。

 二時間目からちゃんと授業を受けていた唄は、鞄を持って立ち上がる。

「今日は、これからどうするんだい?」

 振り向き、風羽が声をかけてきた。彼は用意を押し終わった鞄を机の上においたまま、見上げてくる。

「家でのんびりしておくつもりよ。――もう、明後日なんだから」

「そうだね。じゃあ、僕はこれから水練のところにあのことを伝えに行くよ」

「わかった。お願いするわね」

 短い会話を交わして、唄は風羽から視線を逸らすと、教室の入口に向かって行く。

 唄は廊下に出ようとして、立ち止まった。目線だけで、ある一角を見つめる。

 そこでは、ヒカリが男友達と談笑している。それを見て、唄は二時間目からのことを思い出していた――。



 二時間目の休み時間、唄が教室には言ってからのことだ。

 なんとなく気になったのでヒカリの方を見ると、彼は何かを考えているかのように物思いにふけっていた。

 ヒカリにしては珍しいことだったので訝しみはしたものの、唄はあまり気にしず自分の席に腰掛けた。

 どうでもいい、と。

 だが、二時間目の途中になんとなくヒカリを見ると、彼は授業など上の空でボーっと虚空を眺めていた。かと思うと、頭に手を当ててなにかを考えごとする。



 その物思いに耽っていたヒカリはどこへやら、彼は男友達と楽しそうに談笑している。

 それを唄がジッと見つめていると、不意にヒカリが此方を向いた。

 数秒、二人は見つめ合う。

 すぐにヒカリが目をそらしたので、唄はため息をつき視線を逸らす。

 そして、そのまま廊下に出て行った。



    ◇◆◇



「ふ~ん。へぇ~。ほぉ~。そううなんやねぇ~」

 適当に相槌を打ち、水練は呟いた、

 入口の近くで手紙のことを話し終えた風羽が、それを気にした素振りも見せず、囁いた。

「それで、君はどうするんだい? ニセモノを盗むために、君は手を貸してくれるのかい?」

「あたりまえや。一応、あたしはあんた等の仲間やからね。手を貸すぐらいは容易いことや」

 水練がやはり適当に返すと、風羽はゆっくりとため息をつく。

「そうなんだ」

「それよりも――あたしは、日曜日にどうするか、聞きたいんやけど……」

「どういう意味だい?」

「これはあたしの予想だけど……もしかしたら、闘えるんやないかなーと思ってなァ」

 ピクリと反応して、風羽が顔を上げた。

 水練は口元に愉快そうな笑みを浮かべると、足を組んで頬杖をつく。

「最近なァ……何も力使っとらんから、久々に自分の力の全てを使ってみたいんや。だから、もし日曜にあいつらんところに行くんなら、是非闘いたいなー手思ったんや」

 あははッ。と水練は笑い声を上げる。

 風羽は眉を潜めると、低い声を出した。

「僕は、そんなことごめんだね」

「相変わらず、平和主義者なんやねぇ」

「……悪いかい?」

「いや、べっつにぃ~? てゆーか、さっきの半分冗談やから、気にせんでええよ」

 水練は適当に、よくわからない方言でからかうように言う。だが、その半面心の中は覚めていた。

(――戦いたいのは、本気だけど)

 水練は髪の毛を掻きあげて、水練は意地の悪い笑みを浮かべると、瞳を煌かせて風羽を見る。

「なァ……どうして、〝風林火山〟の連中が、簡単に〝虹色のダイヤモンド〟を盗むことができたんだと思う?」

「え?」

「だって、不思議じゃない。|初代のメロディーが盗めなかった獲物《、、、、、、、、、、、、、、、、、》を、どうしてあいつらが盗めたんや?」

 目を見開き、風羽が息を飲む。瞳が揺れ動き、視線が徐々に下がっていく。

 水練は笑みを浮かべたまま話を続ける。

「唄の両親も異能者なんやろ? あいつらが盗めて、なんで唄の両親が盗めなかったんや?」

「……能力の相性、とか」

「かもしれんな。――けど、個人的に、何で初代メロディーが盗めなかったか、気になって気になって、しょーもないんや」

 珍しく動揺している風羽を水練は面白そうな笑みを浮かべて見る。

 少し視線をあたりに彷徨わせていた風羽は、顔を伏せた。そして再び顔を上げると、さっきの同様はどこへやら、表情が消えて無表情になっていた。ゆっくりと彼の口が開く。

「……僕は、もう帰るね」

「へぇ?」

 拍子抜けして水練は口を開けたまま固まる。

 風羽は返事など聞かず、すぐ扉を開けると出て行ってしまった。止める間もなかった。

 表情を消すと、水練はパソコンと向き合う。

「なんだ。つまらんなー」

最近更新が停滞気味ですみません……。リアルで忙しく、中々更新ができないのです。これからは、なるべく一ヶ月に一話は更新したいと思っています。余裕があれば、二話ぐらいも。

これからも読んでくださいますと、私は泣いて喜ぶので、どうか見捨てないでくださいますと嬉しいです!

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