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未来を繋ぐ山車
王国経済の鼓動は、この部屋で決まる。
王国銀行の総取り帳が、静かにめくられた。
「……不味いわね」
お嬢様の指先が、赤字の項目で止まる。
伝統工芸を未来へ繋ぐ名門・木工工房。その経営が傾いていた。
「経営悪化でしょうか」
しらゆきが静かに問う。
「ええ。この会社を潰す訳にはいかない。伝統は利益より重いものよ」
「では、どうなさるのです」
お嬢様は迷いなく答えた。
「建国記念日。カールに引かせる山車を制作させるわ。注目される舞台を与える。世に示すの」
「素晴らしい一手です、お嬢様」
「……ただ、時間は一ヶ月。未来を繋ぐには、あまりに短い」
職人たちの汗と誇り。
伝統と革新を繋ぐ魔導車カール。
王国の未来を担う戦いは、すでに始まっている。




