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カール
数百の失敗と改良を重ね、
ついに──全ての試験項目が緑に灯った。
研究員たちが歓声を上げる中、
お嬢様は静かに試作一号機へ歩み寄る。
「よく、頑張ったわね。
名前をつけてあげましょう」
優しくボンネットに触れると、
淡い電光が鼓動のように走り、
機体が生き物のように微かに唸った。
「キールの兄弟だから──
“カール”でどうかしら?」
その一言に、研究員たちの胸が震えた。
歓声が爆ぜる。
その瞬間、魔導車は初めて
王国に“名前を持つ存在”として刻まれた。
「お披露目は……ちょうど良い日があるわ。
建国記念日、あの日にしましょう」
「き、記念日の……!?」
「く、国を揺らす大舞台だ!」
魔術師ギルド本部は、史上最高の熱狂に包まれた。
誇りと、大興奮と、焦りが入り混じる渦。
──お嬢様から託された期待が
彼らの背を押し続けていた。




