失敗は未来の魔術
3年の歳月を経て、ついに試験車一号機が完成した。
本日は王都外縁の試験場にて、馬車客車を牽引しての走行テスト。
魔術師ギルドの研究員たちが固唾を飲んで見守る中――
車輪が土を蹴り、魔導車は力強く前進する。
加速、良好。
制御反応、問題なし。
最高速度、想定を大きく上回る。
「こ、これは……成功……!?」
誰もがそう確信しかけた、その刹那。
──バンッ!!!
接続金具が悲鳴を上げて破断。
客車が惰性で暴走し、悲鳴が響く。
「客車が!?」
「止めろ、誰か!!」
だが、
「――止まりなさい」
お嬢様が指をひとつ振る。
雷の閃光が走り、風が渦を巻く。
次の瞬間、客車は寸前でぴたりと停止した。
「お嬢様……! ご助力、痛み入ります!」
研究員たちが安堵と興奮で震える。
お嬢様は、柔らかく、しかし誇らしげに微笑んだ。
「叱られに来たわけではないでしょう?
これは“試験車一号”よ。
失敗は完成へ至る、最短の魔術。」
その言葉に、胸を張っていた者たちの瞳に炎が戻る。
「接続強度の再検証だ!」
「車体側のトルク調整も必要だな……」
「客車の耐久も強化して――!」
ひとり、またひとりと走り出す。
お嬢様はその背中を見送りながら、静かに呟いた。
「未来は、挑む者の上に芽吹くものよ」
雷精霊の文様を光らせる試験車を背に、
お嬢様は次の革新を見据えていた。




