夜明けまで、離さない
月が照らす寝室。
夜姫が静かに待っていた。
ドアが開き──お嬢様が姿を見せる。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
夜姫は迷わず近づき、その腰に手を添える。
自然に導くように、ベッドへ腰掛けさせた。
「今日も、よく頑張りましたね」
「ふふ……待っていたの?」
「もちろんです」
夜姫の腕が肩を抱き寄せる。
お嬢様の体温が、夜姫に預けられる。
「……あなたが隣にいる夜は、落ち着くわ」
それは本心。
夜姫は瞳を揺らす。
「励みになります」
夜姫はそのまま耳元へ顔を寄せ、
囁くように甘く甘く。
「全部、私に預けてください。
お嬢様の疲れも、想いも……眠気さえも」
囁きの一音一音が鼓膜を撫でる。
お嬢様の指先が夜姫の腕をそっと掴んだ。
「……いいわ。
あなたに預けてあげる」
「光栄です」
夜姫はもう片方の手でお嬢様の頬を優しく撫で──
お嬢様は、とろんとした瞳で彼女を見上げた。
「でも、ひとつ覚えておきなさい?」
「……はい、なんでしょう」
甘い夜を支配する声。
「今夜の私は、
あなたの腕の中で眠るの。
“あなたが離さない限り”ずっと」
夜姫の心が跳ねる。
闇より深い愛を宿した声で、夜姫は答えた。
「離すわけがありません。
夜が明けても──まだ、抱きしめています」
お嬢様の微笑みが、夜姫の世界を染めた。
「なら……おやすみのキスは?」
「……喜んで」
ふたりの影が重なり合い──
月は静かにその光を落とした。




