蜜と刃のモーニング
朝食のテーブル。
窓から差す陽光が、お嬢様の髪を金に染める。
「お嬢様、こちらのパンをどうぞ」
しらゆきが皿を差し出す。
「ありがとう、しらゆき。あ、これも食べさせて?」
「あーん」する気満々の声。
しらゆきは一拍置いて、
にっこり完璧な妻の笑み。
「もちろんです♪」
距離は、近い。
声は、甘い。
そして、視線は――
夜姫の方向に鋭く斜め。
夜姫は止めていた紅茶をそっと置いた。
(……朝から、飛ばしてくるわね)
しかし、今日の夜姫は違う。
昨日、夜中に考え続けて出した答えがある。
「お嬢様、こちらもお口に合うはずです」
夜姫は、ナイフとフォークを扱う動きそのものが艶。
切り分けたばかりのベーコンエッグを差し出した。
「ん……美味しいわ」
お嬢様の声が弾む。
その満足げな表情を見た瞬間――
影の女の瞳に――金の光が宿った。
(しらゆきと同じ土俵では勝てない。
だったら私は――“夜姫流の甘さ”で行く)
夜姫は静かに椅子を立つ。
「失礼。お嬢様、こちらへ」
お嬢様の背後へ回り――
細くしなやかな腕で、そっと肩に触れた。
太陽のような甘さに、
夜の蜜の香りが混じる。
「今日も一日、美しくありますように……」
囁く声が耳に甘く絡む。
お嬢様の肩がぴくりと震えた。
しらゆきの手が一瞬止まる。
火花が散る視線戦。
しかし笑顔は崩さない。
「……張り合うのは悪くないわね」
お嬢様は上機嫌。
二人の愛と嫉妬を、可愛い玩具のように楽しんでいる。




