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魔術師ギルド、誇りの岐路

 魔術師ギルド会議室。


 かつて「国の頭脳」と呼ばれた場所には

 重苦しい沈黙が垂れ込めていた。


「嘆かわしい……国中が剣と武勇に浮かれるとは」


「魔導こそが、文明の礎であるというのに……」


 落胆でも嫉妬でもない。

 存在意義が揺らぐ恐怖だった。


 その空気を裂くように、若き魔術師が立ち上がる。


「……でも。見たでしょう?」


 震える声。


「キールの走りを。

 精霊制御と魔導を統合し、

 未来を運んでいるあの姿を!」


 ざわめきが広がる。


「我々は……

 お嬢様という“異能”の影に怯えているだけなのか?」


 若者は歯を噛みしめた。


「ならば!

 魔術師として誇りを証明しなくては!

 ――魔導車を我ら自身の手で!」


 希望というには脆い炎が灯ったその時。


パシンッ。


 ギルド長の杖が床を打ち鳴らす。


「軽々しく言うな」


 静かだが、全員の胸を撃ち抜く声。


「キールは“兵器”ではない。

 人を運び、未来へ渡す橋だ」


 老魔術師たちの瞳が揺れる。



「我々が誇ってきた魔導は

 人を救うためにある。

 対抗心だけで作る道具は――いずれ人を滅ぼす」


 短い沈黙。


「だが、若者よ。

 その焦りは……誇りだ」


「研究部署を開設する。

 戦うためではなく――

 支えるために」


「王国を。

 そして……あのお嬢様の歩む未来を」


 若者は、強く頷いた。


 沈んでいた瞳が

 再び灯を取り戻す。


 ここは――

 まだ国の頭脳だ。

※魔術師ギルドとは


「魔導による民の豊穣と安寧」を掲げる、

世界規模の巨大魔導組織です。

どの国にも支部が存在し、情報と技術を共有することで

魔導を特定国家に独占させない仕組みを維持しています。


その権威は国家すら凌ぐもので、

ギルド支部は治外法権に近い自治権を持ち、

“領土なき国家”とも呼ばれる存在です。


かつては国の発展を支えた誇り高き守護者でしたが――

新たな技術や時代の変化によって、

いま再び自らの存在価値を問われています。

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