青空の火災
青空の下、白煙が立ち昇る。
工業地区一帯を、焦げた鉄の匂いが覆っていた。
お嬢様が現場の中心へ歩み出る。
「……暴れすぎよ。そろそろ落ち着きなさい」
太陽の下、鮮烈な存在感。
周囲の魔力の乱れを、
お嬢様の歩みが静かに整えていく。
そして、詠唱。
「風よ、焦げた息を洗い
水よ、焼かれた大地を抱き
雷よ、混乱を鎮め
――清き精霊たちよ、安らぎを与えなさい」
次の瞬間。
風向きが変わり、
消火水がまるで意思を持つように踊り、
火花の残滓が雷光に巻かれ、煙へと変わる。
そして精霊魔術の光を浴びて――炎は静かに消えた。
熱気が嘘のように引いていく。
ただ、工場跡に陽が差し込むだけだった。
「……これでいいわ」
ちょうどそこへ、消防隊が遅れて駆けつける。
「魔女様!後はこちらにお任せください!」
「原因究明とけが人の対応、急ぎます!」
「お願いするわ」
お嬢様は軽く一礼する。
キールのドアが滑らかに開いた。
「お帰りの準備はよろしいですか?」
キールの声。
「ええ、帰りましょう」
お嬢様が振り返り、昼の青空を仰ぐ。
「間に合いましたね。……お見事です、お嬢様」
しらゆきがお嬢様の手を取った。
雷精霊の文様が光を反射し、
キールは滑るように走り出した。
災禍の痕跡を後にして。




