道は――作る
キールが黒煙の縁に停まると、
お嬢様はすぐに外へ飛び出した。
煙の匂いに、焦げた鉄の味が混じる。
「結界、展開――魔力流、安定化」
お嬢様が片手を掲げると、
暴走していた熱と魔力の波がたちまち鎮まり、
火柱の勢いが抑え込まれていく。
「全員、落ち着いて避難してください!
こちらへ!!」
しらゆきが避難者を誘導しながら、
瞬時に負傷者の状態をスキャン。
一方、夜姫は影の中を駆ける。
焦げと煙の向こう、
視界の白さに紛れた揺れがあった。
「……生体反応。火の中にまだ人が!」
夜姫は奥へと踏み出そうとするが――
「通路が崩落しています!
安全なルートは――存在しません!」
しらゆきの報告。
夜姫は歯噛みした。
そこへキールが前へ滑り出る。
「私に乗ってください。
道は――作ります」
「頼む!」
夜姫が飛び乗った瞬間、
キールの車体が青白く輝き浮上する。
金属壁が迫る。
「突破します」
キールの声は揺るがない。
衝撃――
しかし、キールは正確無比な角度で力を逃がし、壁だけを破砕し、
火の中へ自立運転で突入した。
「目標、目前!」
炎と煙の奥で男性が倒れていた。
夜姫が抱え上げる。
「意識あり! 火傷は軽度!」
「すぐに搬送します」
キールが再び炎の回廊を駆け抜ける。
脱出。
外気に触れた瞬間、男の息が深くなった。
「大丈夫。もう安全です」
しらゆきがすぐに治療魔術を施す。
救助は間に合った――
しかし。
お嬢様は奥の燻った炎を見つめる。
「……まだ終わってない」




