王念殿演説:未来宣言
王都の中心、王念殿――
歴代王の念を受け継ぐ、王都最大の儀式殿。
数千の民と貴族が、その場に息を潜めていた。
王座の前に立つのは――
16歳の少女ではない。
王そのもの。
レティシア=ルーベル。
第三十四代王にして、未来を繋ぐ者。
彼女は一歩、前に出る。
王冠が月の光を受け、鋼の輝きを放つ。
風精の紋章が冠に淡く灯る。
大地の息吹がレティシアの背を押した。
「我が父は、国に未来を遺した」
響き渡る声。
幼さは、もう欠片すらない。
「魔導新幹線――
それは、ただの列車ではない」
風が吹いた。
精霊が彼女の言葉に呼応する。
「それは 王国の血流である。
富を運び、知を巡らせ、
人々の夢を大地に届かせる“血管”である!」
聴衆が息を呑む。
「ならば我らは止まらぬ!
王都から全土へ――
さらに海の向こうへ!」
レティシアは高く手を掲げた。
「私は宣言する!」
「王国全土に鉄道網を張り巡らせる!」
風の魔力が渦を巻き、
レティシアのマントが大きく翻る。
「街と街、国と国、
人と人の間に“壁”はもういらない!」
「私は道を繋ぐ者となる!」
貴族たちの顔色が変わる。
民の瞳が燃え上がる。
「――この国は、走り続ける!」
「過去の栄光に縋らず、
恐れず、
立ち止まらず!」
「私が、すべてを前へ押し出す!
私は、この国の王だ!」
雷鳴のような拍手が王都を揺らした。
◇
壇上の片隅で。
黒装束の魔女が静かに手を叩く。
「いい声になったわね、レティシア」
その表情には、
ほんのわずかな誇りと寂しさが滲んでいた。
◇
この日――
王国は歩みを止めることなく、
新たな大地へと走り出した。
少女は王となり、
未来は鉄路を選んだ。




