白銀列車は止まらない
王都の大聖堂は人で埋め尽くされ、
王国史に刻まれる一頁が、静かに閉じようとしていた。
棺は――魔導新幹線を模した白銀の意匠。
王家の紋章が誇らしげに輝く。
それは彼が遺した、未来そのもの。
◇
ふだん表に立つことのない“魔女”。
だが今日ばかりは違う。
お嬢様は黒の喪服に身を包み、
王国の未来を見据えるように、その場に立っていた。
隣に控える、第一婦人しらゆき。
第二婦人夜姫の眼差しは鋭く、強い。
民は震える。
畏敬と、深い感謝の狭間で。
◇
王妃が一歩、前へ。
涙は見せない。
国の母として、王の伴侶として。
「我らが王は、その生涯を国に捧げました。
魔導新幹線という未来を遺し……
この国を、前へと進めたのです」
声は揺れず。
だからこそ、胸に響く。
◇
レティシアは――泣かない。
まだ16歳。
しかしその背中には、すでに王冠が見える。
(私が泣けば、民も泣いてしまう。
今はまだ、倒れられない)
震える拳を、ただ固く握りしめた。
◇
沈黙。
遠く、線路で汽笛が鳴る。
初代魔導新幹線が、
国王の魂を未来へ送り出すように。
「黙祷」
声が止み、風だけが駆け抜ける。
◇
(陛下。貴方の国は……まだ始まったばかりですわ)
長く生き、
数えきれぬ別れを見送ってきた“魔女”が、
その未来を託した男のために――
静かに、涙を零した。




