表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/90

未来を運ぶもの

 開通式の夜。

 王宮は祝宴の灯りと、静かな高揚に包まれていた。


 食卓には、港町から運ばれたばかりの鮮魚が並ぶ。

 透き通るような刺身が、氷の上できらめく。


「生の魚を、こうして味わえる時代が来るとはな……」


 国王は目を細め、ゆっくり箸を取った。

 料理長は胸を張る。


「魔導冷蔵線のおかげでございます。

 鮮度は保証いたします、陛下」


 王妃がほほ笑む。

 王女レティシアは嬉しそうに頬を染める。


「陛下。これはあなたが切り開いた未来ですよ」


 お嬢様が静かに声をかけると、

 国王は照れたように肩をすくめた。


「私は……道を示しただけだ。

 歩むのは、次の時代だよ」


 レティシアは言葉を受け止め、真っすぐ父を見つめる。


「お父さま。

 わたし、必ずこの国を強くします」


 国王は、深く、深く頷いた。

 嬉しそうに、どこまでも穏やかに。


 ――それが最後の晩餐となった。



 翌朝。

 朝日が王宮の窓を照らす頃。


「……陛下が……」


 侍医の震える声が、静寂に吸い込まれた。


 国王は眠るように逝っていた。

 苦しみの跡はなく、安らかな顔のまま。


 お嬢様はそっと瞼を閉じる。


「……約束を果たしたのね。

 未来を、ちゃんと見届けて」


 レティシアは涙をこらえて立ち上がり、

 拳を強く握る。


「ありがとう……お父さま。

 ここからは――私が」



 その日、王宮の旗は半旗となり、

 人々は胸に手を当て祈りを捧げた。


 歴史書はこう記す。


『第三十三代国王、ここに眠る。

 魔導新幹線の父として――

 王国に未来を遺した者』


 この日を境に、風が吹き変わった。

 少女は王へと踏み出し、

 国は新しい時代へ走り始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ