魔導新幹線・開通式
開通の日、王都は熱狂に包まれていた。
王宮前の大通りには、
新たな鉄路がまっすぐ未来へ伸びている。
「父上……ご覧ください」
レティシア王女は、国王の手をそっと握る。
王は椅子に腰かけ、少し痩せた体で力強く頷いた。
本来ならば、完成は二年先の未来だった。
しかし職人たちは誓った。
『陛下が生きているうちに』と。
国が、王を想って走り抜いた結果――
奇跡は現実となった。
◆
国王がハサミを持ち上げる。
その手は震えていたが、決意に満ちていた。
「王国の未来に――開通を!」
赤いテープが切れる。
――世界が歓声に変わった。
白い魔導蒸気。
初運行の車両が滑るように走り出す。
人々の笑顔。
涙。
拍手。
新幹線は、国全体の希望になった。
◆
一方その頃。
彼らは少し離れた丘で、その光景を眺めていた。
「間に合ったわね」
お嬢様が優しく微笑む。
「はい。王女様の才能もあってのことです」
しらゆきが誇らしげに答える。
「もちろん、あなたたち二人の努力もあってよ?」
お嬢様は、夜姫とクレーロへも視線を向けた。
「当然のことをしたまでです」
夜姫は淡々と、しかし胸を張って言う。
「俺の胃はいくつか溶けきったけどな……」
クレーロは笑いながら天を仰いだ。
その顔は、心底安堵していた。
◆
お嬢様は、風に髪を揺らしながら呟く。
「レティシア。
あなたの時代が、始まるのよ」
遠く。
王女がこちらを振り向き、
笑顔で深く一礼する。
その姿は――
すでに一国の王の風格を纏っていた。
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この瞬間、王国はひとつの未来を掴んだ。
その裏で、闇を払い続けた者たちがいたことを――
ほとんどの者は知らない。
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