王女レティシア 成人の儀
王都の大聖堂には、
王族、貴族、市井の代表まで――
国中の視線が集まっていた。
白と青のマントを纏い、
レティシアは毅然と壇上に歩み出る。
十五歳。
少女の面影はある。
しかし姿勢は揺るぎない。
(七年……あのときの私とは違う)
国王陛下――父。
残された時間は長くない。
それを理解しているからこそ、
彼女は未来を見据える。
◆
レティシアは胸に手を当て、深く息を吸う。
風の精霊が静かにその背に寄り添っていた。
「私は――レティシア=ルーベル。
この国の未来を担う者として、ここに誓います」
場内が静まり返る。
「大動脈新幹線は、国の血流です。
富を運び、人を繋ぎ、
知と文化を循環させる――新しい心臓です」
視線は一歩も揺るがない。
その言葉は、聴く者の胸を貫いた。
「父が選び、
“あの人”が支えた政策を、
決して途切れさせない」
お嬢様は席で静かに微笑む。
「私はその血管をさらに伸ばし、
王国全土に繁栄を届けます!」
風が、彼女のマントを大きく揺らす。
祝福するように。
「ここに宣言します。
この国は――必ず強くなる!」
堂々たる声が、世界を揺らす。
◆
民は拳を突き上げ、
貴族たちは思わず息を飲む。
(あの小さな子が……これほどまでに)
クレーロは胸の奥が熱くなるのを隠せなかった。
セバスは淡々と頷くが、
胸核はほんの少しだけ、
誇らしげに光っていた。
夜姫は、
壇上で誓いを終えたレティシアを見つめながら――
お嬢様に仕える誇りが深くなるのを感じていた。
◆
「素晴らしいわ、レティシア」
控え室で、お嬢様が静かに近づく。
「あなたの言葉は、もう“王”のそれよ」
「……ありがとうございます。
でも、まだまだお嬢様ほどには」
「私の背中ではなく――
あなたの道を歩きなさい。
未来は、あなたが立つべき場所よ」
レティシアはしっかりと頷いた。
(この国を――守る)
(お父さまを――安心させる)
(そして――お嬢様に誓った未来を叶える)
その決意は、炎のように燃え上がっていた。




