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後継を導く

 国王が倒れた翌日。

 お嬢様は王宮の一室に呼ばれていた。


 部屋の中央には、ひとりの少女。


 王女レティシア。八歳。

 まだ幼さを残した金髪が、光を反射して揺れている。


 国王の最愛の娘であり――

 次代の王国そのもの。


「……パパは、死んじゃうの?」


 小さな声が震える。


 お嬢様は少女の前に膝をつき、目線を合わせた。


「死なないわ。

 ただ、この国の舵を誰かが握らなければならない」


 レティシアの瞳に、

 ほんのわずかに覚悟の色が宿る。


「わたし……が?」


「ええ。あなたに教えるために来たの」


 お嬢様は掌を上に向ける。

 その手の上に、風の精霊がふわりと姿を現した。


「国を動かすとはね――

 風と同じ。力任せにねじ伏せても、必ず歪む」


 精霊を優しく撫でる。

 掌に小さなつむじ風が生まれ、光を帯びた精霊の姿へと変わった。


「大事なのは、民の“流れ”を読むこと。

 流れに沿って風を送り、時に逆風を遮る」


 少女は真剣に頷いた。


「わたし……できますか?」


「できるとも。あなたには血がある。

 英雄の、そして賢王たちの血が」


 お嬢様は微笑みながら、

 けれど言葉には迷いがなかった。


「私と筆頭メイドが、あなたを育てるわ。

 政治も、魔術も、世界の理も。

 あとは――あなたの勇気だけ」


 少女は唇を噛み、

 両手をぎゅっと握りしめた。


「がんばります。

 わたし……お父さまの国を守ります!」


「いい子ね、レティシア」


 お嬢様はそっと、彼女の頭に手を置いた。


 その瞬間、歴史の歯車が音を立てる。


 まだ八歳の王女が、未来を担う。

 そして――病床の国王は安堵の息をついた。


「頼んだぞ……魔女よ」


 その微かな声に応えるように、お嬢様は振り返らず言った。


「任せなさい。

 私の愛するこの国の明日を、曇らせはしない」


 そう言って、少女の手を引き歩き出した。

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