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心臓病

 王都と港町ルーベリアを結ぶ新幹線整備――

 それは単なる交通網の拡張ではなかった。


 物流は加速し、旅客は増える。

 庶民の収入は確実に上がり、国はさらに豊かになる。


 まさに、王国の未来を切り拓く国策。


 しかし――その裏で。

 思わぬ報せが館に届く。


「陛下が……倒れられた?」


 クレーロの声がわずかに震え、

 官僚たちの顔色が一瞬で青ざめる。


 王は重い心臓病を患っていた。

 お嬢様が詠唱を付け治癒を試みても、

 病の根は消せない。


「……寿命は十年。保つかどうか」


 セバスの言葉は、静かな刃となって空気を裂いた。


 王の寿命が短いと知れれば、

 世間は不安に揺れ、

 政敵は牙を研ぎ、

 闇は動き出す。


 新幹線計画には巨額の資金が動く。

 そこに――必ず魔が寄ってくる。


「陛下は……これを最後の置き土産にしたいのです」


 クレーロの手に握られた書類。

 震えながらも、そこには王直筆の承認印。


 しかし。


 その裏で既に、

 黒い影が蠢き始めていることを

 まだ誰も知らない。


 お嬢様は静かに目を細めた。


「……始まるわね」


 その声に――

 王国の未来が震えた。

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