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小話~セバスの1日その1~
セバスの朝は早い。
というより、お嬢様が必要としない限り眠らない。
お嬢様が別館で正妻の誰かに抱きしめられ眠る頃、
本館執務室では静かに作業音が響いていた。
――カタカタカタ。
届いた政務書類を鮮やかにさばき、
署名が必要な案件だけを選び抜き整える。
(しらゆき様のお機嫌と
お嬢様の甘え具合を見て
適切な時にお持ちしましょう)
メイド長にも劣らぬ気遣い。
そして――
お嬢様が正妻たちといちゃついていたり、
時に修羅場を迎えている頃には。
「政務は、すべて整いました」
日課の報告は変わらない。
その後は館の巡回。
セバスはセキュリティの中枢でもある。
「侵入者反応。黒百合隊が三秒後に確保します」
防犯監視、結界調整、
生活魔導具の保守まで全て彼の仕事。
静かな廊下を歩きながら、
セバスは目を細める。
(お嬢様が、今日もどうか平穏に)
完璧執事の一日は、まだ始まったばかりだ。




