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隣に立つ資格~2~

「ちょっと待ちなさい」


 お嬢様の声が、ぴたりと空気を止めた。


 夜姫は肩で息をしながら、

 床に落ちた木剣を見つめていた。

 しらゆきも身構えを解かず、鋭い視線を向けている。


 お嬢様はゆっくりと夜姫のもとへ歩み寄る。

 赤闇が燃え上がり、

 夜姫の瞳は金を飲み込むような赤に染まっていた。


 しかし――


「夜姫」


 お嬢様がそっと抱きしめる。


「……っ」


 夜姫の身体が、一瞬で硬直した。


 お嬢様は耳元へ唇を寄せる。


「奪うだけの愛は、愛ではなく呪縛よ」

「でもその闇は、間違いなく“私を想う気持ち”」


 その囁きは優しく、

 背筋が痺れるほど真っ直ぐだった。


「私は二人を愛するわ。

 永遠に――等しく」


 その言葉が、赤闇を貫いた。


 夜姫の身体がびくんと震える。


 赤い瞳に、

 かつての金色が、ゆっくりと戻り始める。


 闇が愛に馴染んでいく。


「お嬢様……」


 夜姫は息を震わせ、

 顎をお嬢様の肩に預ける。


「……愛しております」


 その声は、戦場で叫ぶものではなく、

 恋い焦がれる者の甘い吐息だった。



「再開するわよ」


 お嬢様がソファに腰掛け、

 優雅に手を叩く。


 第二ラウンド。


 夜姫は木剣を拾い上げ、

 しらゆきの前へ立つ。


(速さだけじゃない

 独占欲だけじゃない)


(愛を“守る力”に変えてみせる)


 夜姫は低く構え、

 瞳の奥に赤と金を同時に宿す。


「いきます、しらゆき」


「どうぞ、夜姫さん。

 全力で」



 激突。


 鋭い踏み込み。

 最小限の回避。

 情の乱れは、もうない。


 赤闇の速さと闘志が、

 金の冷静さと観測力と調和している。


(これが……夜姫さんの“完全形”)


 しらゆきは内心、驚嘆していた。



 最後の一撃――

 夜姫の剣先が、しらゆきの喉元寸前で止まる。


 二人の呼吸が、触れ合うほどの距離。


「……チェック」


「お見事です」


しらゆきの瞳にわずかな悔しさと、

 それ以上に輝く“認めざるを得ない光”が宿る。



 静寂の中、お嬢様の拍手だけが響く。


 夜姫は剣を降ろし、

 深く一礼した。


「これでようやく……

 堂々と隣に立てますわね」


 金と赤の瞳が、強く輝く。


 恋が闇を輝かせ、

 闇が恋に力を与える。


 夜姫は真の意味で、

 お嬢様の隣に立つ権利を手にした。

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