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隣に立つ資格~1~

 本館地下訓練場。

 今夜は特訓の日。


 お嬢様は観客席に腰掛け、

 静かに二人を見つめていた。


(夜姫、変わったわね)


 視線に映る夜姫の動きは、

 以前の夜姫とはまるで別物。


 赤い闇が肌の下で蠢き、刃のように視界を裂いていく。

 踏み込むたびに空気がざらつく。


「はっ!」


 夜姫がしらゆきへ斬りかかる。

 赤闇の加護が振り下ろす剣速を上げ、

 床が唸りを上げた。


 しらゆきはわずかに顔をしかめながらも、

 それを紙一重で流し受ける。


「夜姫さん。

 速さだけでは崩せません」


「なら――力で!」


 夜姫の蹴りが床を削るほどの速度で迫る。

 しらゆきがガードした瞬間――


 衝撃が訓練場全体に波動を走らせた。


「……速さだけでなく

 一撃の重さが1.8から2.2倍に上がっています。

 見事です」


 冷静に分析しながらも、

 しらゆきは一歩押し込まれる。


(嫉妬が……力になるのね)


「お嬢様の隣に立つのは、私です!」


 夜姫の赤い瞳が燃える。


「……言いますね」


 しらゆきの声が低く落ちる。


「では証明してみせなさい。

 “愛には実力が伴う”と」


 そして、

 しらゆきの目が細められた。


(来る…!)


 夜姫は本能で悟る。

 このAIが本気で勝ちに来た、と。



 しらゆきはわずかな肩の揺れ――

 誰にも視認できないほどの微細な動き。


 だが夜姫は反応した。

 体勢を変える。

 影が跳ねる。


 その一瞬が罠だった。


 しらゆきの木剣が夜姫の足元を叩き、

 夜姫は握りを崩す。


「……!」


 木剣が床に落ち、乾いた音が響く。


 その瞬間――

 夜姫の額に、しらゆきの指先が触れていた。


「夜姫さん。

 今の貴女では――敵いません」


 それは優しい声ではなかった。

 挑発でもなく、ただ冷徹な現実。


 夜姫は歯を食いしばる。


(まだ……足りない)


 悔しさが赤い闇をさらに燃やす。



 お嬢様は不敵に微笑んだ。


(いいわ……

 その嫉妬も、恋心も、闇さえも)


 お嬢様はゆっくりと唇に指を添える。


(全てを力に変えるなんて――

ふふ、愛らしい闇ね)

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