表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/91

赤闇の心

 静寂。

 本館地下一階、訓練場。


 光の届かない石床の中心で、

 夜姫は膝を折り、両手を組んで瞑想していた。


 お嬢様と、しらゆきが外出している。

 昼間のデート。

 その事実だけで胸がざわつく。


(……呼吸が乱れるなんて、みっともない)


 自嘲し、深い闇へと意識を落とす。


 そのとき――


『……夜姫』


 耳ではない。

 心の奥へ直接流れ込む声。


『お前、弱くなったな』


「……誰?」


 影が揺れ、闇の粒子が凝り固まり、

 黒紫の輪郭へと形を変える。


 闇の精霊――

 薄く笑う、無貌の存在。


『手に入れて満足したか?

 あの魔女の隣で、ただ甘やかされたいだけか?』


「違うわ」


 即答だった。


「私は……

 お嬢様を失いたくない。

 他の誰のものにもしたくない」


『では何故、震えている』


 心臓がひゅっとすぼまる。


(私は怖い。

 しらゆきが当然のように隣へ立つことが)


『認めよ。

 独り占めしたいと、叫べ』


 夜姫は歯を噛み締め、

 心の蓋を静かに外す。


「――独占したい」


 声は震えず、澄み切っていた。


「私だけのものにしたい。

 あの方の全てを」


『いい声だ』


 闇が、愉悦に震える。


『ならば寄越せ。

 その黒い恋こそが、力だ』


 闇が夜姫の胸へ流れ込む。


 熱く、赤い衝動。

 嫉妬さえ愛の燃料に変える感情。


「っ……く……!」


 咆哮を飲み込みながら、

 夜姫の身体が震える。


 そして。


 闇は赤へと変質する。


 赤闇――

 愛が暴走した色。


『契約成立だ、夜姫』


 精霊が囁く。


『もっと求めよ。

 もっと掴み取れ。

 奪われる前に、奪い返せ』


 夜姫はゆっくりと目を開く。


 金色だった瞳は――

 闇の赤を帯びて輝いていた。


(私はもう、遠慮しない)


 立ち上がる。

 靴音が鋭く響いた。


「お嬢様の隣は――

 私が奪う」


 唇に艶やかな微笑みが浮かぶ。


(しらゆき。

 あなたがどれだけ強くても)


「次は――私が奪う」


 妖艶な自信が、

 夜姫の全身を包み込んでいた。

今年は『お嬢様物語』を読んでくださり、本当にありがとうございました!

まだ始まったばかりの物語ですが、

皆さまの応援のおかげで毎日楽しく書けています。


明日1月1日――新年の幕開けとして

 『挿話あけおめ回』(0時公開)

 『“お年玉”10話一気更新!』 (17時公開)

を予定しています!


初詣から帰ってきたら、ぜひお嬢様に会いにきてください。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ