光を裂く白
静寂。
引き金を引いた兵たちの視界には、
夜姫の胸へ向かう弾丸が――確かにあった。
だが。
空気が、焼けた。
「ッ……!?」
弾丸が次々と
光の線に触れた瞬間――
火花を散らして弾かれ、地へ落ちた。
夜姫の頬を、かすった風だけが抜ける。
「……遅いです」
いつの間にか夜姫の前に立っていた白い影。
指先に薄く蒼光を宿した――しらゆき。
「しら……ゆき……?」
「お怪我はございますか、夜姫様」
夜姫が言葉を飲み込んだその時。
銃を構え直す兵たち――
指先から、再び 蒼い光線が放たれた。
弾丸、照準、引き金。
すべてが「撃つ前」に切り落とされる。
兵器はただの金属へと変わった。
「……武器に頼るから、そうなるのです」
淡々と告げる低い声。
けれど夜姫には、はっきり聞こえた。
(怒っている)
◇
しらゆきは夜姫を一度も振り返らず、
前だけを見据えたまま言う。
「夜姫様」
その声には、揺れがあった。
「お嬢様を――
泣かせる気ですか」
夜姫の胸が強く掴まれる。
「私は……」
「“愛しているから”ですか?」
しらゆきの言葉は鋭利だった。
「それは結構。
ですが――」
蒼い瞳が、振り向いた。
「死んだら意味がありません。
お嬢様はあなたを失えば、泣きます。
――私は、それが嫌なのです」
夜姫は息を呑む。
「お嬢様が泣く事なんて、
絶対に、私が許しません。」
「……分析に、感情が混ざってるわよ」
「混ざりました。
あなたのせいです」
しらゆきが初めて、
夜姫へ嫉妬を隠さず向けた。
◇
残った兵たちは怯え、武器を投げ捨てた。
「な、なんだこいつら……っ!」
「敵意のない者には手を出しません。
──降伏を」
その一言で、全員が膝をついた。
夜姫は静かに立ち上がる。
震える膝を押しとどめ、大きく息を吸う。
「……助かったわね」
「ええ。
あなたが死にかけたので」
しらゆきが夜姫へ手を差し出す。
「帰りましょう。
お嬢様の所へ」
夜姫はその手を迷いながら取る。
その一瞬だけ――
影の女は、光へ寄りかかった。
(負けない)
(けど、今だけは)
胸の奥で、
愛と嫉妬が赤く灯った。




