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光を裂く白

 静寂。


 引き金を引いた兵たちの視界には、

 夜姫の胸へ向かう弾丸が――確かにあった。


 だが。


 空気が、焼けた。


「ッ……!?」


 弾丸が次々と

 光の線に触れた瞬間――


 火花を散らして弾かれ、地へ落ちた。


 夜姫の頬を、かすった風だけが抜ける。


「……遅いです」


 いつの間にか夜姫の前に立っていた白い影。

 指先に薄く蒼光を宿した――しらゆき。


「しら……ゆき……?」


「お怪我はございますか、夜姫様」


 夜姫が言葉を飲み込んだその時。


 銃を構え直す兵たち――


 指先から、再び 蒼い光線が放たれた。


 弾丸、照準、引き金。

 すべてが「撃つ前」に切り落とされる。


 兵器はただの金属へと変わった。


「……武器に頼るから、そうなるのです」


 淡々と告げる低い声。

 けれど夜姫には、はっきり聞こえた。


(怒っている)



 しらゆきは夜姫を一度も振り返らず、

 前だけを見据えたまま言う。


「夜姫様」


 その声には、揺れがあった。


「お嬢様を――

 泣かせる気ですか」


 夜姫の胸が強く掴まれる。


「私は……」


「“愛しているから”ですか?」

 しらゆきの言葉は鋭利だった。


「それは結構。

 ですが――」


 蒼い瞳が、振り向いた。


「死んだら意味がありません。

 お嬢様はあなたを失えば、泣きます。

 ――私は、それが嫌なのです」


 夜姫は息を呑む。


「お嬢様が泣く事なんて、

 絶対に、私が許しません。」


「……分析に、感情が混ざってるわよ」


「混ざりました。

 あなたのせいです」


 しらゆきが初めて、

 夜姫へ嫉妬を隠さず向けた。



 残った兵たちは怯え、武器を投げ捨てた。


「な、なんだこいつら……っ!」


「敵意のない者には手を出しません。

 ──降伏を」


 その一言で、全員が膝をついた。


 夜姫は静かに立ち上がる。

 震える膝を押しとどめ、大きく息を吸う。


「……助かったわね」


「ええ。

 あなたが死にかけたので」


 しらゆきが夜姫へ手を差し出す。


「帰りましょう。

 お嬢様の所へ」


 夜姫はその手を迷いながら取る。


 その一瞬だけ――

 影の女は、光へ寄りかかった。


(負けない)

(けど、今だけは)


 胸の奥で、

 愛と嫉妬が赤く灯った。

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